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素人だから言えることもある

PASMOとSuicaが描くソニーの戦略

 ソニーの次の手「Sony TV 」 で、ソニーが Playstation Home の戦略について語ったが、これはバーチャルワールド(仮想世界)の話である。実はリアルワールド ( 現実世界 ) で着々とソニーが足場を固めている。というのは、 3 月 18 日から始まる PASMO のことである。首都圏の JR ・地下鉄・市電・バス、それぞれ別々のカードを使わなければならなかった乗車券が一枚のカードで済んでしまうことだ。今までの、 Suica でバスや地下鉄に乗れるし、新たに発売される PASMO も同様だ。どちらも同じソニーの Felica というカード様式を使っているのである。

 なぜ、今まで使われていたパスネットバス共通カードではだめなのか。それは、パスネットのような磁気カードでは、自動改札機を通るたびにローラーやベルトが磨耗する、さらに磁気カードが詰まったりして駅員が修理する姿を見ない日はなかった。そこで登場したのが非接触型の Suica である。タッチ&ゴーというように、自動改札機にカードをくぐらせる必要はないし、パスケースから出すこともない。それは、カードにアンテナが張り巡らされており、改札機とと 0.1 秒の速さで電波を交信させる。そうじゃなければ 1 分間に 50 人とも言われる通勤時のピークを乗り越えられないのだ。名前は PASMO といってデザインが違うが、使う駅が共通なのだから当然 Suica と共通部分も多い。 ( 詳しくは JR 東日本PASMOFelicaしいしせねっと参照 )。

 ところで、ソニーが Suica を開発した理由だが、最初は 88 年の宅配便に使う IC タグの開発から始まった。 ( 岩田昭男著「電子マネー戦争Suica一人勝ちの秘密」中経出版) によれば、

 そんなある日、開発スタッフの一人が、鉄道総研で IC カードによる定期券の開発が行われていることを新聞記事で知った。

「定期券に使うなら IC タグが向いているかもしれない。これはビジネスになる」と考え、当時、ソニーの名誉会長であり、たまたま鉄道総研の理事長だった井深大 ( いぶかまさる ) を介して、開発中の IC 読取装置を鉄道総研にみせた。鉄道総研側は、その IC タグに関心を示して共同開発を申し出たのだった。

それがフェリカ誕生の経緯である。そのときから、実をいえば、ソニーと鉄道総研との関係は生まれ、それ以後、3 回の実験を通してもカードと装置の開発を行っていた。このため、入札でも、ソニーは早くから研究開発に取り組んでおり、その分有利だったともいえるだろう。

 この JR 東日本の共同入札は 97 年、その年の 4 月すでにソニーは香港の地下鉄のカードオクトパスのサービスが始まっている。 2001 年 11 月 18 日には Suica の運用が始まり、同じように関西の ICOCAPiTaPa など非接触タイプのカードが始まっている。いずれもやはりソニーの Felica タイプを使用しているので、いくいくは Suica と相互利用を考えているという。さらに、 Felica タイプにはもう一つの種類があり、これが Edy である ( SuicaEdyに互換性はない。SuicaEdyの違いについては、Felicaしいしせねっとが詳しい ) 。

  FeliCa( フェリカ ) って何なのさ?鉄道・交通 IC カードのデファクト・スタンダード「 FeliCa (フェリカ)」 というページにはソニーの野望としてこんなことが書かれていた。

[ 多くの人が持ち歩く鉄道乗車券や携帯電話に FeliCa を搭載し、普及を図るとともに採用実績を作る ]

    ↓

[ 電子マネーやクレジットカード、入退室管理、社員証など、 FeliCa の用途を広げる ]

    ↓
[FeliCa のカードやリーダ / ライタを売って儲ける ]

[ 電子マネーEdy 」、クレジットカード「 eLIO 」などの関連ビジネスを自ら展開して儲ける ]

Suica はすでに 700 万枚 (Wiki によると 2007 年 2 月 28 日現在すでに 1,911 万枚、 PASMO は未発行 ) 普及しました。 ICOCAEdy なども含めて FeliCa の普及枚数を仮に 1000 万枚として、 1 枚あたり 500 円だとすれば、カードの売り上げそのものは高々 50 億円ということになります。しかし、鉄道会社や小売店などにリーダ / ライタの販売できること、自ら FeliCa を使ったビジネスを展開できることを考えれば、ソニーにとってかなり大きなビジネスになることは間違いありません。

 マイクロソフトは Windows がパソコン用 OS( 基本ソフト ) のデファクトスタンダード ( 事実上の標準 ) の座を獲得し、高収益を上げています。ソニーも、 FeliCaデファクトスタンダードに育てられれば、独占を背景に高い利益を得ることになりそうです。

 先にあげた「電子マネー戦争 Suica 一人勝ちの秘密」によれば、電子マネー業界ではクレジットカードよりも SuicaEdy がカードの主役になり、クレジットカードはその SuicaEdy の中に付帯していくというパラダイム変換が起こるだろうと結んでいる。ともかく、クレジットカードやキャッシュカードを何枚も持つ時代は終わり、電子マネーを握ったソニーが重要なポストを握ることになるのは間違いない。
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