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久夛良木氏がSCEの社長退任でPS3はどうなる?

 任天堂が一兆円企業として凱歌を上げたのに対して、SCEの社長を久夛良木氏が退任して名誉会長に引いたのは、一見するとゲーム業界の中の戦いの勝負が決したようにも見える。単純にそれでよいのだろうか。

 久夛良木氏の退任発表のときの発言で気になった言葉がある。

今後はこの経験を生かして、SCEを離れて、さらなるチャレンジを、さらに広いネットワークで加速していきたいと思います
 「SCEを離れて、さらなるチャレンジを」という言葉だ。真相を調べていくとやめざるを得なかったというわけではないらしい。ストリンガー会長も突然知らされたという格好だ。

 これについては久夛良木氏本人の意向で決めたという話が真相らしい。そこに至るまでの経緯については、PS3不振の責任を取ったという人と、久夛良木氏のまわりが冷たくなってきたのではないかという人がいる。そのことでブログなどでどういう意見があるか調べてみた。

PC Watch連載の「本田雅一の週刊モバイル通信」にはこんなことが書かれている。

 以前、ソニーのある商品開発者が「ソニーには経営陣に至るまで、AVやホームエンターテイメントの本質について理解できる人がいる。そのことが変な製品が生まれてくることを防ぎ、良い製品のためにコストや製造現場での作りやすさなどを無視したような製品を投入できる最大の要因になっている」と話していたが、その時代は実はずっと以前に失われている。

 そんな中、ソニー社内の技術評価の場で、突っ込んで画質や音質、製品のビジョンや将来の発展性、応用分野などについて、数多く質問し、的確な指摘を語る役員は、近年において久夛良木氏だけだったという。ソニーでAV機器を担当していた時期には、賛否さまざまな評価が外部からなされたが、実際に現場の人間に聞くと、技術の将来性を見る目に関してはすこぶる評判が良かった。そして、実に他に同様のセンスをもって質問をしてくる人物はいないというのである

 ソニーに限らず、現在の日本の各企業では、かつてよりも自分のことにきゅうきゅうとなり、視野を広げて物事の本質を捉えようという人間が減っているのは事実である。この本田氏のコラムに対してNiftyのトピックイットにこんなコメントがあった。
 思えば、久夛良木氏は多くのソニーの先輩に守られてきた。例えば、大賀典雄元社長は、久夛良木氏が任天堂より契約を反故にされたとき、大賀社長に詰め寄ってソニー独自のゲーム機のプレイステーションを作るきっかけとなったし、mF247主宰の丸山茂雄氏は、久夛良木氏がソニー本体にいられなくなったとき、当時SMEの社長でありよき相談役であった。また、出井伸之前会長も任天堂と折衝に当たったという。久夛良木氏はかつてソニーの三悪人とまで言われたが、彼の能力を見極めた人がいたからこそプレイステーションが生まれたのだ。そしてこの三人は、現在、ソニーにはいない。
 物を作ることは、結局人を見極めることである。なぜなら、ものづくりとは集団作業であるからだ。自分のことにしか関心のない人間には物を作れない。その人の能力を見極め、その人をどのように配置すれば、ものづくりができるかという設計図を描けてこそ、ものづくりに成功するのである。ソニーには、才能のある人間はたくさんいたはずだ。だが、その人間がどんな能力を持ち、どこに配置できるかを見極めた人間はどこにもいなかった。結局、そういうことではないだろうか。そしてこれこそが「宝の持ち腐れ」というのである。
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