夢幻∞大のドリーミングメディア

素人だから言えることもある

「消費者は天国、労働者は地獄」、格差社会とインターネット

 パラサイトシングルや格差社会などの言葉で有名な山田昌弘東京学芸大学教授の講演「格差社会」の生みの親が解決策提案?現代は消費者は天国 労働者は地獄が載っていた。

 社会構造の変化に「消費者の欲求充足の変化」をあげる。近年から消費者の消費の仕方や欲求が変わり、購入する商品に、より“個性”を求めるようになったことを踏まえ、同時に起きる問題として、新たな発想が必要とされる労働者と、機械にはできない単純作業に従事する労働者とに分かれる「仕事の二極化」が発生するという。

 そのことから、同氏は現代を「消費者にとっては天国、労働者にとっては地獄」と評し、「消費者としての我々の声が大きすぎる」と話した。

 この社会構造の変化とは何を意味するか。今まで成り立っていた収益モデルが大きく変化したためだ。

 僕は「ネット社会は脳と身体を分断する」でこんなことを書いた。

 ネット社会は消費主義経済を変貌させる。たとえばテレビCMを見てもそうだ。かつてのテレビCMは、どうやってテレビの前にいる視聴者を玄関から外に送り出して、店の前に立たせるかに心を尽くした。外に出て店員と会話を交わすことで、同時に街の商店街を活性化させ、その地域社会のコミュニティを担うことができた。しかし、ネット社会になって価格サイトでより安い商品を捜すことが簡単にできるようになった。地域の商店にとってそれは大きな障害となった。町内の店とではなく、全国の商店、ひいては全世界の商店を相手に戦わなくてはならないからだ。
 それならインターネットで儲かっている企業はあるか。インターネットの大半のサービスは無料である。どこかが有料のサービスを始めても、他の企業が無料サービスを始めれば、ユーザーはそちらに向かう。無料になれたユーザーは決して有料のサービスには手を出さない。「無料の知識と有料の知識」で
 インターネットは現在、普及促進のためのサービス期間である。サービス期間中は有料の知識であっても、無料である。しかし、儲かっている企業はもともと余裕のある大企業か、楽天やソフトバンクのようなポータルサイトのみ。多くの企業は赤字を垂れ流しながらがんばっている。果たしていつまで体力が続くのだろうか。
 最近、グーグルやマイクロソフトが広告企業を買収するニュースが相次いだ。森祐治氏の「広告」の次に来るもの--マイクロソフトのaQuantive 買収からには新たな収益モデルの模索に悩むIT企業の姿が現れている。
 しかし、同じ無料といっても、今、現在インターネット上で提供されているサービスの多くは、インターネット黎明期のような極めて利用範囲が限定されたものではなく、一消費者にとって、そして企業にとってすら、その日々の活動に不可欠になってきているものばかりだ。そして、インターネットそのものとはこれまで別の存在であったものにまでネットワークを広げ、私たちのリアルな生活にもそのインパクトを及ぼしつつある。

(中略)

 むしろ、広告という事業のより高度なプラットフォーム構築を、広告会社を買収し、その内部にあるスキルをIT化することによって実現する。そして、これまでとは異なる「広告」をベースにした事業展開を、マイクロソフトだけではなく、多くのネット企業が密かに進めているに違いない。

 ともかく、インターネットは現在「消費者天国」の真っ最中である。無料雑誌のように広告で収益を上げるしか方法がないのが実情なのだ。一方、労働者(生産者を含むは、その消費者に合わせていけば収益は縮小する一方である。例えば、グーグルやアマゾンはロングテールに注目した企業として注目されていた。今までスペースの関係から無視されてきたロングテールの部分に着目して収益が可能なことを証明した。だが、それでそのロングテール企業は復活したか。結局、残ったのはグーグルとアマゾンだけだったのではないか。

グーグル・アマゾン化する社会」(光文社新書/森健著)には、

 アマゾンやグーグルでのロングテールの成功が大きく取りざたされることは、裏を返せば、もはやアマゾンやグーグルといったスケーラビリティをもつサイトにしか、本当の成功はないということだ。つまり、ロングテールで成功したのは、もともとヘッドという存在だったからということになる。そもそもロングテールという概念も拡大解釈が行われている。現在、業界では薄く広く儲けるビジネスをもってロングテールと称しており、グーグルも自らをそう呼んだ。だが、その対立軸となるヘッドはどこなのか。ヘッドがあってロングテールがあるべきだが、そのヘッドについては言及されていない。ロングテールビジネスの勝者は、業界における一部のヘッドグーグル、アマゾンだけということではないか。
 インターネットはバーチャル世界に「消費者は天国」社会を築き上げたが、労働者をその社会に引き上げることはできなかった。なぜなら、労働者の世界はリアル世界であるからだ。いわば、脳(バーチャル)と身体(リアル)が分断され、どこにも行くことができないでもがいている人々、それが格差社会の現代日本人の姿である。
ブログパーツ