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素人だから言えることもある

「イノベーションのジレンマ」とソニー

 ようやく、今話題の「イノベーションのジレンマ」(クレイトン・クリステンセン著/翔泳社)を読むことができた。

 CNET Japanの記事「イノベーションのジレンマに陥る優良企業たち」によると

本の中でChristensenは、競争力を維持し、顧客を重視し、研究開発への投資を行っている優良企業が、努力の甲斐もなく市場優位性を失っていく理由を徹底的に分析している。
 イノベーションには持続的イノベーションと破壊的イノベーションがあるという。
 大手企業は一般的に、要求度の高い顧客のニーズに応えるため、より高機能な商品の開発に力を入れる。この性能向上を求める絶え間ない努力を、Christensenは「持続的イノベーション」と呼ぶ。

 「技術進歩のレベルが顧客の実際のニーズと活用能力をはるかに超えると、行き過ぎが裏目に出る。新興企業に、より安く単純で、高機能を必要としない顧客から見れば十分な性能を持つ商品を提供する機会を与えてしまうのだ」と、Christensenは言う。そして、これを「破壊的イノベーション」と名づける。(「イノベーションのジレンマに陥る優良企業たち」)

破壊的イノベーションの法則

1.企業は顧客と投資家に資源を依存している

 顧客と投資家を満足させる投資パターンを持たない企業は生き残れないため、実質的に資金の配分を決めるのは顧客と投資家である。業績のすぐれた企業ほどこの傾向派が強く、すなわち、顧客が望まないアイデアを排除するシステムが整っている。その結果、このような企業にとって、顧客がその技術を求めるようになる前に、顧客が望まず利益率の低い破壊的技術に十分な投資をすることはきわめて難しい。そして、顧客が求めてからでは遅すぎる。(「イノベーションのジレンマ」)
ソニーの例1

 草創期のソニーは、経営者のアイデアや直感で次の製品が決定されていた。トランジスター技術に着目した盛田氏は、その権利を持っていたアメリカのAT&Tに「トランジスターは補聴器ぐらいしか使えない」とか「そんな小さなラジオが売れるわけがない」とは言われたが、結局トランジスターラジオで「ソニー」の名前を世界にとどろかせた。

 ところが、企業が巨大化すると、1経営者や1社員のアイデアに資金を投入することが難しくなる。

 たとえば、平面ブラウン管ベガの成功で酔ってしまったソニーは、プラズマや液晶技術開発に遅れてしまった。またブラウン管の次は有機ELであると見ていたが、初期の計画より時間がかかってしまった。

2.小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない


 破壊的技術は、新しい市場を生み出すのが通常である。このような新しい市場に早い時期に参入した企業には、参入の遅れた企業に対して、先駆者として大幅な優位を保てることが実証されている。しかし、こういった企業が成功し成長すると、将来大規模になるはずの新しい小規模な市場に参入することがしだいに難しくなってくる。(「イノベーションのジレンマ」)
ソニーの例2

 ウォークマンは、カセットレコーダーから録音機能を除き、ステレオ機能とヘッドホンをつけるというアイデアから始まった。これは、創業者井深氏の特注であった。世界中にブレイクし、ウォークマン以外のほかのメーカーは偽者扱いされたほどだ。

 ところが、アップルのiPodがブレイクするとソニーは後追いすることすら難しかった。それは、ベータ事件でソフトの大切さを学んだために、SMEを抱えており、著作権問題に対応しなければ製品開発ができなかったからだ。巨大企業になれば、どれほどアイデアが優れていても目配りが必要になってくる。>」)

3.存在しない市場は分析できない

 投資のプロセスで、市場規模や収益率を数量化してからでなければ市場に参入できない企業は、破壊的技術に直面したときに、身動きがとれなくなるか、重大な間違いをおかす。データがないのに市場データを必要とし、収益もコストもわからないのに、財務予測にもとづいて判断をくだす。持続的技術に対応するために開発された計画とマーケティングの手法を、まったく異なる破壊的技術に適用することは、翼をつけた腕で羽ばたくようなものだ。(「イノベーションのジレンマ」)
ソニーの例3

 ソニーがプレイステーションを始めたとき、ゲーム業界はまったく未知の領域だった。

 ソニーは、任天堂に対する不満を調べ、CD-ROMの必要性を各メーカーに説いて回った。つまり、新たな市場を開発したのだ。PSがブレイクして今度は任天堂がWiiを使って今までとまったく違った市場を切り開いた。

 僕は「ものづくりは人づくり」でWiiとブルーオーシャンについて語ったことがある。

任天堂は、「なぜもっとほかの層にゲームで遊んでもらえないのか」と自らを問い直した。複雑になりすぎたゲームではなく、もっと簡単で操作を覚えやすいゲームを作れないかと考えた。そこで、「Wiiリモコン」を開発。ゴルフやテニスなどの手の「動き」という新しい要素を「付け加える」ことで、新たな市場を創出した。(「Wii」を生んだブルー・オーシャン戦略とは?)
 このことは何を意味するか。つまり、人と違った考え方をしろということだ。ソニーはかつてそれが得意だった。ところがいつの間にか、アメリカが追いついてきた。ポータブルオーディオ市場は、ウォークマンからipodへ、ゲーム市場はPS3からWiiへ流れた。消費者は目先の変わったものに流れてゆく。成功体験に酔っているうちに、抜き去られてしまう。かつて、ベガが好調なときに各社は薄型テレビに力を入れていたように。今でも、そうだ。セカンドライフが発表された後に「Home」を発表し、YouTubeが流行しているうちにeyeVioが発表された。ソニーは、いつまでもアメリカの後追いをしているように見える。二番手は、サプライズがないと普及しない。(「ものづくりは人づくり」)

4.技術の供給は市場の需要と等しいとはかぎらない


 競合する複数の製品の性能が市場の需要を超えると、顧客は、性能の差によって製品を選択しなくなる。製品選択の基準は、機能から信頼性へ、さらに利便性、価格へと進化することが多い。(「イノベーションのジレンマ」)
 現在の携帯電話の競争は、この最終段階に行っているように見える。どこの電話もそれほどの違いが見えない。すると、今度は「ナントカ割」でひきつけようとする。結局、その端末を売るために、通話料に上乗せした販売奨励金が重いのだ。だから、通話料がニューヨークの三倍になってしまう。もっとシンプルな携帯電話が新たな破壊的イノベーションとなる時が来るのであろうか。
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