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素人だから言えることもある

個人情報が輸出される「フラット化する世界」

 NHK スペシャル「人事も経理も中国へ」を見た。

 製造業の分野では続々と生産拠点を中国へ移し、コストダウンを図ってきた日本企業。そして今、人事や経理などホワイトカラーの仕事までもが次々に中国へ移っている。大連や上海などの都市では、日本語を話せる人材の育成を強化し、日本のサラリーマンの5分の1以下という人件費を武器に、日本企業の仕事を大量に請け負っているのだ。中国にホワイトカラー業務を移した日本企業は2500社に上る。
 ここまでコストカットしなければ企業は生き残れないのか。今まで企業の要とされていた人事・経理・総務まで中国の大連にアウトソーシングされるというのだ。 5500 円かかっていたコストが 750 円ですむというのである。しかもその企業数が 2500 社というのだから驚きである。

 しかし、待てよ。人事や経理といえば、社員の個人情報がなければ勤まらないところだ。それを中国に持っていくとは。当然ながら顧客情報もデータ入力のために海外流出していることを意味しているのではないか。(もちろん情報は細分化され、無関係な中国人が入力することで、安全性が保たれるのだが、輸出していることには変わりはない)  

 今まで、国内のメーカーにサポセンはあると思っていたが、実は中国に電話していたというエピソードも紹介される。もうすでに、中国を嫌っていては、企業すら立ち行かない状態に日本は陥ってることを意味しているのだ。もし、メディアが中国の「食の安全」キャンペーンを突き詰めると、ニュースを提供するスポンサーが誰もいなくなるかもしれない。

 トーマス・フリードマンの「フラット化する世界」ではこの中国の大連をこう紹介している。

 日本へも韓国へも飛行機で約二時間という近距離であるうえに、日本語ができる中国人が多く、インターネット通信の環境も充実していて、公園や世界に誇れるゴルフ場が多いので ( どちらも知識労働者にとって魅力的だ ) 、大連は日本のアウトソーシングにとってうってつけの場所となった。日本企業は、日本人ソフトウェア・エンジニアを一人雇う金で中国人三人雇い、そのお釣りで、コールセンターのオペレーター ( 月給90ドル) を部屋いっぱいに雇うことができる。日本企業 280 社が大連に拠点を置き、あるいは現地の中国企業と提携しているのも当然だろう。
 なかなか働く意欲を見せない日本の若者と比べて彼らはまじめで意欲的だ。一方、日本はコストばかりかかり、日本国内で存在する意義すらも見えてこない。トーマス・フリードマンはアウトソーシングされない職業として「無敵の民」になることだと言う、
 私の辞書の無敵の民とは、「自分の仕事がアウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されることがない人」を意味する。・・・フラットな世界には「代替可能な仕事と代替不可能な仕事の二つしかない」。・・・フラットな世界の最も顕著な特徴の一つは、たくさんの仕事が代替可能になったことだ。
 そして次の 3 つの無敵の民を推奨している。

(1)「かけがえのない、もしくは特化した」人々

(2)「地元に密着」して「錨を下ろしている」人々

(3)新しいミドルクラス (1・2に当てはまらない知識労働者、ホワイトカラー層)

 詳しくは、本書を読んでいただくとして、アメリカについてサミュエルソンの言葉を引いている
「われわれはいまも自転車競争の先頭を走っていて、あとをついてくる選手の空気抵抗を減らしてやっているが、その差は縮まっている。最先端の国というアメリカの立場は、どんどん危なっかしくなっている。なぜかというと、蓄えがきわめて乏しい社会になってしまったからだ。すべて自分、自分、自分、そして今?他人や明日のことは、まったく考えない。問題は指導者ではなく有権者だろう・・・・・・昔は、科学者になるような頭のいい子は難しいパズルに取り組んでいた。いまはテレビを見ている。気が散ることがあまりに多いのも、自分、自分、自分、そして今、という考え方が蔓延している理由だろう」
 「災害と個人情報」を書いたとき、思ったことは、個人情報は触れてはいけないものとして、隠しておくよりも、積極的に活用しようという方向に向かっているのではないか。「フラット化する世界」が押しとどめることができないものとするならば、自分は誰の代わりにもならない無敵の民としての自分自身を目指して生きるしかないと思うのだ。それはサミュエルソンの言う「自分しか見えない自分」ではなく、「あらゆる人の中でもかけがえのない自分」として。
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