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素人だから言えることもある

ジョブズとソニー(2) MacBook Airデザインのこだわりとソニーとの接点

(1) バッテリー問題とジョブズ氏のデザイン感覚

 朝日新聞の「アップル「Air」、「最薄」でも使い勝手にこだわり」の中に気になる言葉があった。
バッテリー交換やメモリー増強のための裏ぶたはない。アップルによると、バッテリー交換はアップルストアで行い、メモリーは最大2GBを標準に積んでいるため、必要ないという。
 誰が必要ないと言うか。それはジョブズ氏である。ジョブズ氏ほど、人々を熱狂させるスーパースターはいない。だが、現実問題になると、いささか困惑することも多い。

 Engadget Japanese「MacBook Air、バッテリーはユーザー交換不可」によると、

13.3インチ画面搭載で厚さ4mm - 19.4mmという数字が明かされたMacBook Airですが、薄さにはやはり代償がありました。iPodと同じく、MacBook Airのバッテリーはユーザー交換不可となっているようです。iPodの場合は再生時間が飛躍的に伸びたために(そして毎年買い換える人が多いために) 最大容量が目減りしてもそれほど苦情がでなくなりましたが、MacBook Airのバッテリー寿命は公称5時間。
充電のたびに最大容量が落ちてゆくのはともかく、公称6時間や8時間のモバイルPCですら多くの人が実践している交換バッテリーの携帯も不可。
 また、iPhoneもユーザーのバッテリー交換が不可能だという。米消費者団体,「iPhone」のバッテリ交換や解約に関する要望書をAppleに提出によると、
 FTCRによると,iPhoneのバッテリは300〜400回の充電で消耗する見通しである。このため,使用頻度によっては1年以内にバッテリ交換が必要となるが,ユーザー自身による交換はiPhoneの構造上,不可能だと報告している。
 AppleとAT&TはiPhoneの発売時点で,バッテリ交換に要する費用や方法などを明らかにしていなかった。このためFTCRは,iPhoneの保証期間後もバッテリ交換を無償で行うべきだと述べている。
 そして、その要望書の回答である。CNET Japanの「iPhone」のバッテリ交換は85ドル--アップルが明らかにでは、
保証期間を過ぎたiPhoneのバッテリ交換サービスは79ドルに加えて、6.95ドルの送料がかかり、またAppleによると、その処理には3営業日かかるという。
 バッテリ交換によりiPhone内のすべてのデータが消去される点もiPodの場合と同様であるため、送付する前に機器内のすべてのデータのバックアップをとる必要がある。
 まずデザインありきで、利便性がもうひとつというメーカーが日本にもあった。ソニーである。

(2)ジョブズ氏とソニーの接点・フロッグデザイン

ソニーを意識、ジョブズ氏がエア発表で語る」という記事には、
ソニー製より薄く、軽く——。新型のノート型パソコン「MacBook Air(エア)」を発表したアップル。最高経営責任者(CEO)のスティーブ・ジョブズ氏は16日(日本時間)、発表の舞台となった同社の祭典「マックワールド」で、ソニーを意識したという開発秘話などを披露した。(アサヒ・コム編集部)
 アップルが「最薄、軽量化」を目指すのに指標としたのは、業界でももっとも薄いとされていたソニーのノート型パソコン「TZシリーズ」だった。ジョブズ氏は、「ソニーのノートは、3ポンド(1.36キロ)という重さを実現するために、ディスプレーやキーボードの大きさ、薄さ、性能の面で妥協した」と話した。
 僕は「ジョブズとソニー」で、ジョブズ氏か絶えず、ソニーのウォークマンを意識していたことを書いた。
 (1985年)3月の終わりごろ、スティーブは、ドイツのデザイン事務所、フロッグデザイン社を訪ねた。大ヒットしたソニーのウォークマンをデザインした会社だ。ウォークマンのデザインに感銘をうけ、その後のアップル製品のすべてについて外観デザインをフロッグデザインに任せるという大きな契約をむすんでいたのだ。(「スティーブ・ジョブズ偶像復活」)
 でも、疑問を持った。ウォークマンをデザインしたのは黒木靖夫氏である。なぜ、「スティーブ・ジョブズ偶像復活」ではデザインした会社がドイツのデザイン事務所、フロッグ・デザイン社としたのか。
 黒木靖夫氏は、
「SONY」のロゴマークをデザイン、同社の主力業務用モニターであった「プロフィール」プロジェクトリーダー、つくば万博にて「ジャンボトロン」担当。ソニーウォークマン開発プロジェクトのリーダーを務め、「Mr.ウォークマン」と呼ばれていた。(黒木靖夫Wiki)
 一方、フロッグ・デザイン社のデザイナーロス・ラブグローブ氏の経歴を見れば
1958年、ウェールズ カーディフ生まれ。
1980年、マンチェスター工科大学にてインダストリアルデザイン最優秀美術学士号取得し卒業後、1983年ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業する。
80年代初期には西ドイツのフロッグ・デザインにデザイナーとして所属し、ソニーのウォークマンや、アップルコンピュータのコンピュータ等のプロジェクトにたずさわる。その後、ノール・インターナショナルのコンサルタントとしてパリに移り、多大なる成功をおさめたアレッサンドリ・オフィス・システム開発をになうことになる。
アトリエ・ド・ニームの招聘により、ジャン・ヌーヴェル、フィリップ・スタルクと共にキャシャレル、ルイ・ヴィトン、エルメス、デュポンなどのコンサルティングをてがける。
 Mr.ウォークマンとドイツのフロッグ・デザイン社、つながりが見えない。
 そこで検索してみると、価格.comでこんな情報が
初代TPS-L2はテープレコーダーそのままのデザインですが、次のWM-2とWM-DDはフロッグデザインですよ。
 → そうでした。初代は偶然的に生まれ予想外に大ヒットして、2代目からデザイン綺麗になったのでした。遠い昔になりましたが、デザインが無骨だった初代のインパクトは、何故か強烈に残っています。
 なるほど、TPS-L2は、無骨だった。単純にカセットとヘッドホンをつけた形。ここではポスターが載っていた。
一方、2代目のWM-2WM-DDは、デザイン的に優れていた。なお、3代目 WM-3は初代のリメイク。(ウォークマンの歴史を知りたかったらWalkman Museumなど)

 そこでフロッグデザインを調べてみる。フロッグデザインWikiのデザインとクライアントにこうある。(初めからこれを出せよといわれそうだが、「フロッグ・デザイン」を検索していて「フロッグデザイン」では検索していなかった)

最初のデザインは1969年のWegaで、ドイツのテレビ製造業者のものだったが、それは後にソニーに買収される。フロッグデザインはソニーの仕事を続け1975年にはトリニトロンテレビのデザインを手がけた。
彼らの最初のコンピュータ製造者向けのデザインは1970年のCTM (Computertechnik Müller) による商業的なシステムと1979年のDiehl Data Systemsだった。有名になったのはアップルコンピュータ向けのデザインでポータブルのApple IIcの筐体が最初で、それには1984年から1990年の間アップルによって使用されるSnow White design languageが導入されていた。それからいくつかのマッキントッシュのデザインを継続。1986年、SunのSPARCstations、1987年、NeXTcubeがフロッグデザインによりデザインされた。
 このことから、改めてソニーとアップルのデザイン感覚が重なっていることを知った。これからも、おそらくアップルは熱狂と批判の嵐にまみれていくことだろう。それは、ソニーとアップルが自ら選んだ道なのだから。

 余談だが、面白いことに、ジョブズ氏がiPodを世に出した頃(2004年6月)、こんなことを言っている。

あいにく、米アップルコンピュータ社のスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は、両方とも拒否してきた。
 『ウォールストリート・ジャーナル』紙の主催で6〜8日(米国時間)に開かれた『D:オール・シングス・デジタル』会議において、ジョブズCEOはインタビューに応え、アップル社ではかつてPDAを設計したことがあったが、市場に出す前に中止したと語っている。同CEOによると、このPDA開発はスマートフォン開発に取って代わられているが、いずれもアップル社にとって得意な分野ではないという。同CEOはまた、ビデオ機能はiPodにふさわしくないと述べている。
 「こういった携帯機器でビデオを見たいと望む人々の市場があるとは思えない。何が起こっているかと言えば、一部の会社は、ビデオを組み込むために、(これらの機器を)iPodより2倍重く、2倍大きくしている。そうなれば、ポケットに収まらなくなるし、価格がiPodの2倍になる」とジョブズCEO。(WIRED VISIONファンたちがデザインする未来の『iPod』)
iPod touchiPhoneが世に出るわずか3年前の話である。
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