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素人だから言えることもある

Wiiのネット配信「Wiiウェア」(ホームサーバの戦い・第12章)

(1)マイクロソフトがブルーレイを採用しない理由

最近は、PS3・Xbox360を通して、これからのコンテンツ配信はどうなるかを考えてきた。「マイクロソフトがブルーレイを採用する時」では、Xbox360がDVDのままでは、これからHD画質になっていくとどんどん容量が増えていく可能性があることを指摘した。それでも、マイクロソフトがブルーレイを採用しない理由についてこんな記事があった。ソニーの「PS4」やマイクロソフトの次の「Xbox」が見えてきました
この記事によると、ソニーやマイクロソフトは次の世代のゲーム機に対して、ゲームだけでなくインターネットを介してHD品質の高画質な映像コンテンツをダウンロードして楽しめるようにするつもりだそうです。

すでにソニーはPS3にBlu-rayディスクを採用しているため、高画質な映像コンテンツを楽しめるようになっていますが、一方でHD DVDをサポートしていたマイクロソフトXbox360が東芝のHD DVD撤退を受けてもBlu-rayディスクをサポートするつもりはないとしたのは、インターネットを通じた高画質な動画配信を見据えているからとのこと。

また、フラッシュメモリの大容量化がより進み、高画質な映像コンテンツを記録する媒体として次世代DVDに取って代わるという可能性も、次世代DVDを積極的に採用しない根拠となっているようです。

しかし、HD画質をダウンロードにするには、現在のインフラ状況ではあまりにも心もとない。しかも、インフラ整備はその国の国内事情による。マイクロソフトがいくら金持ちでも、外国のインフラ整備に干渉することはできない。その間、Xbox360はDVDで持たすことができるのだろうか。

(2)Wiiウェアの目的はネット接続率を高めるため

 さて、3月25日より、任天堂は「Wiiウェア」を始めるという。任天堂、Wii専用ソフトのダウンロード販売サービス「Wiiウェア」を3月25日より開始
 任天堂ではすでに、同社のファミリコンピューターなど、過去のゲーム機で発売されたゲームソフトのダウンロード販売を行う「バーチャルコンソール」を提供中だが、Wiiウェアでは、Wii専用ソフトをダウンロード販売する。なお販売は、バーチャルコンソール同様にWiiのオンラインサービス「Wiiショッピングチャンネル」上で行う。
という。PS3・Xbox360と同様に、インターネットを利用してゲーム配信をする点では共通点がある。しかし、Xbox360を始めるきっかけが、「Xbox vs PS2(ホームサーバの戦い・第8章)」で、ビル・ゲイツ氏が社員に語った
PS2は、単なるテレビ用のセットトップボックスやゲーム機の枠に収まらないだろう。PCにとって脅威になるのは間違いない。(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」ソフトバンク)
であるとすれば、任天堂マイクロソフト・ソニーの目的がおのずから違うのが当然わかる。しかし、それでも同様にインターネットを使うのはなぜか。

たとえば、Engadget&Joystiq 宮本茂インタビューでは、

Engadget:ソニーやマイクロソフトは映画のダウンロードとか、ゲームではないマルチメディア機能を追加していますね。プレーヤーがこうした機能が大切だと考えたらどうしますか? Wiiは比較するとあまり魅力的ではないということになるでしょうか。

宮本:どんどんこうパソコンのかわりになってゆく機械であるとか、そういう機械にコンピュータというものはなり得ますから、マルチメディアの展開とかムービーをダウンロードするとかね、それは分かるんですけど、任天堂は遊びのため以外に余計な機能は付けずに、使っている機能は家族のみんなの遊びのために絞り込んでいます。大きなデータをダウンロードしたり、大きなストレージがあったりするんじゃなくて、たとえばWiiコネクト24のようにゲーム機自体が低消費電力で24時間起きていて、そこで遊びのために必要な情報をやりとりしている。そのちょっとしたデータのやりとりがすごくユニークなゲームの結果として使える、そういうユニークさ、遊びのユニークさに全部のパワーを使いたいと思いますね。で、余計なものは外してできるだけ安く作って売りたいと思ってます。

Engadget:HD映像はゲームをどんな風に変えると思いますか?

宮本:いずれテレビはぜんぶHDになってゆくとは思うんですけどね。でもいま新しいゲームプレイに求められているものは映像のそういう力じゃなくて、もっと他の、例えばインタフェイスであるとかインターネットの使い方であるとか、それから家での、家族の中での使われ方であるとか、そういう他の要素のほうがずっと今は重要だと思ってます。

Engadget:なるほど。でも考えようによってはDSもポータブルHDデバイスみたいなものといえませんか。もうひとつ画面があることで表示面積が増えて、新しいゲームプレイが広がったと。だからHDゲーム機もただグラフィックが細かくなっただけではなくて、増えた解像度で別の情報を表示するような使い方があるんじゃないでしょうか。

宮本:そういうことはあるでしょうね。でもとりあえず、まずインタフェイス含めたダイナミックな変化というものが必要で、それはなぜかというと、いまのゲーム機は、ゲーム機であるがゆえに遊ばないって人がたくさんいるんですね。世の中には。

もっと高精細なテレビでマルチスクリーン化していろいろ使ってということもそれはそれとして有効なんでしょうけども、そういうことをやってもゲームが複雑だからとか、ゲーム機やコントローラが邪魔になるから部屋に置かないで欲しいとか思っている人はたぶん戻ってこないですね。もっと大勢の人がゲームを興味を持ってくれるようになれば、また画面の性能とかそういったものが重要な要素に戻ってくるんですけど、いまはそれ以前のところで、大きなお客さんを逃していってるのがゲーム産業の一番大きな課題だと思っています。

DSの場合はタッチスクリーンにペンで書けることとか、マイクで音声で入力できることだったり、解像度やグラフィックがどうということよりも大きな字が表示されるってことが大事やったり、全然違う要素でDSというゲーム機が幅広い人に受け入れられたんですね。ソフトウェアも含めて、犬であるとか頭のトレーニングであるとかね、そういう魅力的なテーマ、魅力的な素材をまず作るということが一番優先ですね。

それならなぜ「Wiiウェア」を開発したのだろうか。世界に2000万台も普及しているWiiでもネット接続率は高くないという。
任天堂岩田氏「ゲーム人口の継続的拡大にはネット接続が重要
 こうした施策によりユーザー層を拡大してきた任天堂だが、岩田氏は「お客様はいずれ飽きてしまうもの。業界でもこれは一過性のブームではないかという声もある」と指摘。「このままのアプローチを漠然と続けているだけではいけない。年間を通じて商戦期のような状況が続くと考えてはいない」とし、DS、Wiiという新型ゲーム機投入に続く第3のステップとして「継続的なゲーム人口の拡大」を目標に掲げた。

 「継続的なゲーム人口の拡大」の具体的な施策を語る前に、岩田氏はWiiを開発するにあたって設定した「1.家族とゲーム機の関係を変える」「2.テレビのゲーム機の関係を変える」「3.インターネットとテレビの関係を変える」というコンセプトを紹介。「1に関しては家庭内ユーザーが増え、2に関してもWiiのリビングルーム設置率が83%を超えるなど一定の成果を見せた」と評価した上で、「問題は最後のインターネットにある」と指摘した。

 任天堂の調査によれば、Wiiのネット接続率は40%で、「半分以上が接続していない状態」。岩田氏は「Wiiはネット接続でより楽しめるゲーム機で、ネット接続している人のほうが満足度が高いという調査結果も出ている」と説明。「ブロードバンドの世帯普及率は50%を超えている。また、Wiiがリビングに設置されている率が83%という数値から考えると、Wiiのネット接続率は満足水準ではない」とした。

 こうしたネット接続率が低い要因として岩田氏は「接続の技術的・心理的障壁と、それを克服するソフト不足」が課題だと指摘。技術的な面に関してはNTT東西と共同で、Wiiのネット接続に関するコールセンターを開設。新規回線手配から家庭での機器セットアップまでを提供する予定で、この詳細は後日発表するという。

 ソフト不足という面に関しては、過去のゲームタイトルをWiiでネット配信する「バーチャルコンソール」を紹介。「現時点で203タイトルを用意し、販売総数は世界全体で780万ダウンロード」との成果を示したのち、次の展開として新たに2008年3月から開始する「Wiiウェア」と発表した。

 Wiiウェアは、バーチャルコンソールと同様の仕組みを用いて新作タイトルをWii向けに配信するサービス。岩田氏は「ソフト開発は参入リスクが巨大化しており、すぐれたアイディアが形にならないこともある。また、パッケージ販売も重要だが、パッケージソフトには自然とボリュームを求めてしまう」と指摘。「テトリスのようなシンプルで愛されるソフトが世にでるチャンスがほとんどなくなってしまう」との危惧を示し、「Wiiウェアはパッケージを補う新たな販売方法」とした。

 Wiiウェアは「メーカー規模にかかわらずアイディア優先のゲーム開発機会を作り出し、ソフト内容に応じて柔軟な価格付けができる」と説明。また、「在庫制約がなく機会損失もない。これはすでにバーチャルコンソールで実績を上げている」とし、ポイントを購入してダウンロードする仕組みにユーザーが慣れてきていると説明。「ゲーム開発者出身として、Wiiウェアは未来のゲーム開発者人口拡大に貢献できる」との展望を示した。

(3)ネット接続率とは稼働時間を増やすこと

一方、「後藤弘茂のWeekly海外ニュース・WiiWareで非ゲームアプリを呼び込むWii新戦略」では、3社のゲーム機のうち、ソフトのアタッチメント率がWiiでは低いことを指摘している。
 ゲーム機のアクティブ度の指標は、タイトルアタッチ率(ゲーム機1台当たり売れているゲームタイトル数)だ。Microsoftが3月10日に発表したリリースによると、WiiはXbox 360と対照的に、アタッチ率が高くない。Microsoftによると、ヨーロッパ地区のアタッチ率は、Xbox 360が7.0本に対して、PLAYSTATION 3(PS3)が3.8本、Wiiが3.5本という。ライバル側の示している数字ではあるが、Wiiのアタッチ率がXbox 360より低いこと自体は、ゲーム業界では周知の事実だ。

 というのは、3社とも、今回はゲーム機の稼働時間を増やすことが、戦略の重要なポイントとなっているからだ。ゲームプレイ時間以外は電源を投入されず、ともすれば何カ月も起動されない、そういった従来ゲーム機の状況から脱することが、各ベンダーの共通した目標となっている。TVのように、常に起動されるマシンになることが初期目標で、それが、次のより大きな戦略への足がかりとなる。そのため、今世代では、最も売れるゲーム機になるだけでなく、最も稼働するマシンにもならなければ、真の意味での勝者になれない

 アタッチ率は、従来型のゲームプレイの稼働時間の目安であって、従来型ゲーム以外の付加価値をつけた今世代のゲーム機の稼働率を完全には示してはいない。しかし、不吉な兆候であることは間違いがない。

 どうしてもゲームには、流行りすたりがある。絶えず、稼動してもらうには、ゲーム機として以外のメリットがなければ、継続的に稼動してもらえない。Xbox360やPS3が映画のようなHD画質のコンテンツ配信をねらうのも、テレビのそばにぴったりと寄り添っているからである。そして、たまにはゲームでもと考えたとき、そのゲーム機でと考える。そのために、無料の体験版をダウンロードさせたりできる。Wiiには、HD画質であることはすでに捨てている。しかし、それでもWiiに常にネット接続させることが必要だ。
 整理すると次のようになる。任天堂は、Wiiについては、当初から家庭で家族全員が触る、稼働率の高いマシンを目指した。そのために何が必要かをプロジェクトチームで検討し、ニュースや天気予報から始まって、ネットワーク経由での多彩なサービスやコンテンツを提供することが重要だと結論づけた。しかし実際には、任天堂1社ではリソースやノウハウの制約から、構想していたようなサービスやコンテンツをまかなうことができない。そこで、Wiiに対して、非ゲーム会社を含めた他社がビジネスできる枠組みを設けることにした。

 任天堂は、このプレゼンテーションの最後で、WiiWareのライセンシーの募集を呼びかけ、ライセンス窓口のメールアドレスを公開した。ゲームに詳しいライターの小野憲史氏は「ここでメールアドレスを公開するというのが、今まで、任天堂がやって来なかったこと」と指摘する。今回のWiiWareで、任天堂のオープン度が前進したことが、こうした部分からも伺える。

 門戸を開け、他業種も含めて多くのコンテンツ&サービス提供者を集める。それが、任天堂の新戦略だ。任天堂も、限定された範囲ではあるが、PCの発展の図式を取り入れようとしていることがわかる。つまり、サードパーティのソフトウェアやサービスが花開くことで、プラットフォームが繁栄するという図式だ。(「後藤弘茂のWeekly海外ニュース・WiiWareで非ゲームアプリを呼び込むWii新戦略」)

 一見すると、任天堂の計画は、ソニーやマイクロソフトとは違った方向を向いているように見える。しかし、テレビの隣の特等席をねらっている点では、変わりはない。ファミコン時代では、おもちゃ箱にしまわれたゲーム機も、現代では美容機器としてテレビの横に鎮座する。
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