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素人だから言えることもある

アメリカでPS3の逆襲が始まった(ホームサーバの戦い・第19章)

プレイステーションの映画配信

 アメリカソニーコンピュータエンタテイメント(SCEA)は、E3のプレスカンファレスで当日より映画の配信を行うと発表した。

プレイステーション3向けに映画300本以上が配信! 映画1本購入で約1000円〜1500円にによると、

 プレイステーション3のビデオ配信サービスについて詳細が明らかに。PLAYSTATION NetworkPLAYSTATION Storeから、ダウンロードコンテンツを購入するのと同じ要領で動画を購入でき、プレイステーション3だけでなくPSP(プレイステーション・ポータブル)にダウンロードして鑑賞することもできる。

 北米向けに配信されるのは、映画やテレビ番組、オリジナルタイトルの3種類で、映画は300タイトル、テレビ番組は1200タイトル以上になる。それぞれSD(スタンダードデフィニション、通常の画質)とHD(ハイデフィニション、高画質)が用意され、選ぶことができる。


 これらの動画は、購入する以外にレンタルも可能。レンタルはiTunesなどの動画配信サービスと同様、レンタルしてから14日間の期間限定で楽しむことができ、さらに再生を開始してからは24時間以内に観終えなくてはならないシステムとなっている。

映画の場合は、購入で9.99ドル〜14.99ドル(日本円にして約1000〜1500円)、レンタルでは2.99ドル〜5.99ドル(約300円〜600円)でダウンロード。テレビ番組は1.99ドル(約200円)となる。なお、ダウンロードにかかる時間は、映画で1〜2時間とのこと。(プレイステーション3向けに映画300本以上が配信! 映画1本購入で約1000円〜1500円に)

ここで気になったのは、iTunesなどの動画配信サービスという言葉である。

Apple TV vs PS3

 日本では権利関係によって、直接ダウンロードはできない。そこで、比較するには米国の実情はどうかということだ。
Apple、「iTunes Movie Rentals」で主要スタジオの映画を網羅によると、
 レンタル価格は過去作品は1本2.99ドル、新作は3.99ドルとなり、HD版はそれぞれ1ドルプラスの3.99ドル、4.99ドルとなる。Mac、PC、iPodiPhoneApple TVでの映画レンタルおよび視聴が可能だ。レンタルした映画は30日以内に視聴する必要があり、一度視聴を始めると24時間でレンタル期間が終了する。24時間以内であれば何度でも視聴できる。なお映画レンタルが可能なのは米国内のみ。
 レンタル価格としては、あまり変わらないようだ。また、提携する映画会社はPS3が、
「20th Century Fox、Lionsgate Entertainment、MGM Studios、Paramount Pictures、Sony Pictures Entertainment、及びWarner Bros. Entertainment 」(SCEA、ビデオ配信サービスを米国で開始)
の6社であるのに対し、Apple TVでは、
「Twentieth Century Fox、Walt Disney Studios、Warner Bros.、Paramount、Universal Studios Home Entertainment、Sony Pictures Entertainment、Metro-Goldwyn-Mayer(MGM)、Lionsgate、New Line Cinema」(Apple、「iTunes Movie Rentals」で主要スタジオの映画を網羅)
の8社である。ユニバーサルとニューラインシネマがPS3では抜けている。
  また、冒頭の記事で「プレイステーション3だけでなくPSP(プレイステーション・ポータブル)にダウンロードして鑑賞することもできる」とあるが、当然ながら、iPhoneでも可能だ。(もちろんアメリカのみ)

Xbox360 vs PS3

 E3ではこんな発表がされた。西田宗千佳の— RandomTracking —E3 2008特別編 Xbox 360カンファレンスレポート− マイクロソフトが見せる「AVとゲームの融合」のカタチによれば、
また、Xbox 360をAV的な視点で見ると、より広い用途が見えてくる。現在Xbox Liveは、ゲームだけでなく、映像も含めたオンライン配信のプラットフォームとしての整備がすすんでいる。「Xbox Live ビデオマーケットプレース」と呼ばれるビジネスだが、今回のプレゼンでも、その点が強調された。

 「Xbox Liveは、ハイデフにおいて世界最強のプラットフォームだ。ケーブルTV会社もサテライト・サービスも敵ではない」

 マトリック氏はそう語る。現在、米国および欧州のXbox Liveでは、720pの映像をダウンロードする形で、映画やTVドラマを中心に配信が行なわれている。購入してから1週間以内なら自由に視聴可能、という「疑似レンタル」に近いサービス形態だ。

そしてレンタル業界大手のネットフリックスと提携するという。米マイクロソフト、DVD宅配大手と提携 ネット映像をTVで
マイクロソフトは14日、DVD宅配レンタル大手ネットフリックスとの提携を発表した。マイクロソフト据え置き型ゲーム機Xbox360」を通じて、ネットフリックスは映画やテレビ番組をネット配信する。このサービスを利用すれば、利用者はネット配信された映像を手軽にテレビ画面で見られるようになる。

 利用するには、Xbox 360を所有して、オンラインゲームを楽しむための会員契約(年間約60ドル)をする必要がある。また、ネットフリックスの会員であることも条件となる。ただ、両方の会員であれば、ネットフリックスが提供する1万本超の映画やテレビ番組を無料で視聴できる。

さて、「グーグルの「Lively」、PlayStation Homeを狙い撃ち(ホームサーバの戦い・第16章)の中で、
 PLAYSTATION 3にとって,Homeとはなんだろうか? Homeは,これまでオンライン対応ゲームはあっても,総合的なロビーサービスを持たないため,「点」の集まりにすぎなかったゲーム群を,一つのロビーからそれぞれに接続できる「線」のトポロジーに変換していく存在だ。これはSCEの悲願であったという。XboxでいうところのXbox Live!の必要性は切実なものであったのだろう。(4gamer-net[OGC2008#11]「PLAYSTATION Home」日本での展開はどうなる)
 その、噂のXbox Live!根本的に手直しされるという。
CNET JapanのE3 2008:マイクロソフトが秋のXbox Liveのアップデート内容を公表によれば、
改良版のXbox Liveが2008年秋に提供される際には、このオンラインプラットフォームのインターフェースは完全に新しいものになり、アバターを使ったコミュニティシステムが提供され、Netflixのオンデマンド動画ダウンロードサービスが統合される。

(中略)

アバターシステムについて、Whitten氏は、プレーヤーは8人までのパーティに参加することができると述べており、そこではさまざまなゲームをプレーしたり、Netflixの映画を見たり、写真を共有したり、Xbox Liveのダッシュボードを通じてチャットを行うことができるという。

このコミュニティー的手法は、ゲーム番組的なイベントやコンテンツを提供するカジュアルゲームポータルである、Xbox Liveプライムタイムにも拡大される。Microsoftは多くのイベントがライブで行われるようになると述べている。

なぜか、PlayStation Homeによく似ている。
PlayStation Homeとは

PLAYSTATION®ゲームとも連動するこのPLAYSTATION®Homeは、ユーザー同士が出会い、コミュニケーションできる安全な空間です。

ユーザーは3Dのリアルなアバターを使い、フレンドとテキストチャット、ボイスチャット、ジェスチャーなど様々なコミュニケーションをとることが出来ます。

PLAYSTATION®Homeの中心であるラウンジ「ホームスクエア」は、自分の部屋となる「マイホームスペース」や、アーケードゲーム、ボウリング、ビリヤード等がプレイできる「ゲームスペース」、動画コンテンツを見ることができる「シアター」と通じています。PLAYSTATION®Home内からPLAYSTATION®3ゲームを起動することで、フレンドと一緒にオンラインゲームへ参加することもできます。

アップルとソニー


 この「ホームサーバの戦い」シリーズで、思ったことは、アップルやマイクロソフトが、数ある日本の家電メーカーの中から、選んだライバルがソニーであったのはなぜか。いや、彼らの発言を調べれば調べるほど、ソニー以外は何も知らないのではないかという思いと、ソニーは、どれほど叩かれても必ず浮かび上がってくる不思議な生命力があることだ。

たとえば、アップルのステイーブ・ジョブズは、「WALKMAN」に衝撃を受け、「iPod」を作り上げたり、WALKMANのデザイン会社を探し出して、アップル製品のデザインを任せたりしている。
ちょっと「ジョブズとソニー」から抜き出してみよう。

 (1985年)3月の終わりごろ、スティーブは、ドイツのデザイン事務所、フロッグデザイン社を訪ねた。大ヒットしたソニーのウォークマンをデザインした会社だ。ウォークマンのデザインに感銘をうけ、その後のアップル製品のすべてについて外観デザインをフロッグデザインに任せるという大きな契約をむすんでいたのだ。(「スティーブ・ジョブズ偶像復活」)
なお、そのフロッグデザインのいきさつについては、「ジョブズとソニー(2) MacBook Airデザインのこだわりとソニーとの接点」、iPodについては、「ジョブズとソニー(3) iPodとウォークマン」を参照。

アップルのスティーブ・ジョブズは、自分なりの「WALKMAN」を探し出して、ついにiPhoneまで到達した。より気持ちよくコンテンツを楽しむためにどうすればいいのかを考え続けてきた。もっとも、ジョブズにとって気持ちがよくても、使いづらい人には使いづらいのだが。いわば、それが、ジョブズ自身のライフスタイル(ジョブズとソニー(3) iPodとウォークマン)なのである。

マイクロソフトとソニー

一方、マイクロソフトビル・ゲイツは、PCの未来の脅威を防ぐのしはどうしたらよいかを考え続けてきた。
Xbox vs PS2(ホームサーバの戦い・第8章) で、ぼくは、「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳/ソフトバンク)の中の言葉から
ソニーはマイクロソフトと競いたがっている。PS2は、単なるテレビ用のセットトップボックスやゲーム機の枠に収まらないだろう。PCにとって脅威になるのは間違いない。」
との言葉を引き出した。また、その時代の関係者はこんなことも言っている。
 MITで開かれたゲームサミットで、3DOのトリップ・ホーキンズは、ソニーのPS2のことを「トロイの木馬」と評した。ただのゲーム機のつもりで買うと、テレビ接続の通信端末やPCの役割をいつの間にか分捕って、エンタテインメントの主役に収まってしまうからだ。ホーキンズは、1993年に3DOリアルマルチプレイヤーを発売したときにも同じことを言っていた。ホーキンズの読みでは、ソニー製「トロイの木馬」の方が、家庭向けのエンタテインメントボックスとしてPCに置き換わるチャンスが高かった。(「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳/ソフトバンク)
3DOとは、
The 3DO Companyは、1990年にエレクトロニック・アーツの創始者の一人トリップ・ホーキンスがゲーム機プラットホーム開発を目的に設立した。32bitマルチメディア端末の統一規格「3DO」を各社にライセンス提供し、さらに64bit規格「M2」を開発。1995年にM2の権利を松下電器に委譲した。その後はセガサターンやプレイステーション、PC用のソフトを開発、発売していたが、2003年5月に連邦倒産法第11章を申請し倒産した。(3DO Wiki)
松下(パナソニック)が発売した3DO REALは79800円だった。この時代、ソニーのPSの成功を見て誰もがまねをした。

さらに、マイクロソフトの目的は、「ゲーム機戦争とネット配信(ホームサーバの戦い・第10章) の中で、後藤弘茂氏のWeekly海外ニュース「Wiiに逆転されたXbox 360の巻き返し戦略」を引用した。に、後藤氏は

Microsoftの狙いはもっと大きいところにある。もともとは、ゲーム機という家電が、将来、リビングルームのメディアセンターに育つのなら、それを押さえよう、というのがMicrosoftのXbox戦略の原動力だった。もっと具体的に言えば、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)がそのポジションを獲る前に、自分たちで獲らなければならないと考えた。Xbox部隊の現場はともかく、Microsoftの上層は、そうした戦略でいたと思われる。
と見事にビル・ゲイツの狙いを見通している。どちらにしても、三者三様ながら、ホームサーバの戦いは、続いてきたのである。
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