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ホームサーバが普及した時に起こるこれからの出来事(ホームサーバの戦い・第20章)

ホームサーバの戦いシリーズは今回で、20章を迎えることになった。ここで、改めてホームサーバの未来について考えてみたい。

ホームサーバという言葉について

 この言葉は、「家電屋VSコンピュータ屋、ホームサーバーの戦い」の中で、とりあげた前SCE社長、久夛良木健氏の
ネットワークで配信(再配信)可能なコンテンツには、ゲームの他にも、映画・音楽、許諾を受けた放送番組、あるいは個人が撮影した膨大な数の写真や動画などがあるだろう。今後、家庭において「プレイステーション 3」自体がホーム・サーバーとなり、他の携帯機器やネットワーク接続されたデジタル家電機器、さらにはパソコンにも、ゲームや映像や音楽を配信することも可能になる。(久夛良木健氏からの手紙、「PS3が創るリアルタイム・コンピューティングの未来」)
から来ている。ゲーム・映画・音楽・放送番組などのコンテンツは、配信会社からインターネットを通して、PCやPS3・Xbox360などのゲーム機、Apple TVなどのSTB(セットトップボックス)に映像配信される。それらのコンテンツをためておく場所がサーバであり、家庭内にあるサーバだから、ホーム・サーバである。特にゲーム機が多いのは、パソコンよりもリビングのテレビと親和性があるからだ。そもそもテレビに映せなかったらゲーム機の意味はない。

久夛良木氏は、久夛良木健氏が語る、PlayStation 3とCellの正体の中で

 ホームサーバーについては、これからものすごい勢いで伸びると思う。ホームサーバーが伸びるのは、ゲームとか映画とか、爆発的に伸びているデジタルフォトとか、それらのためのサーバーが必要だから。デジタルフォトも今ピクセル数がどんどん増えているから性能も必要になる。TVも固定ピクセル系TVになるから、画像処理はますます大変になる。

 ムービーでは、放送機器、もしくは映画会社の映画のオーサリング、そのレベルで画像処理できるエンジンが将来的には必要だと考えている。SCEIも含めたソニーグループは、TV放送機器用システムも一手にやっていたから、そのレベルの画像処理には経験がある。まず、その画像処理エンジンが、TVの中に入る必要がある。次に、それをお互いネットワークでつなぐ。そのためにはCellが必要となる。ホームサーバーも、Cellベースになると桁違いのことができるようになる。

 それから、ホームサーバーが、進化した無線LANホットスポットになると、モバイル機がそこにつながる。そうしたら、(Cellコンピューティングがモバイル機でもできるから)、例えば、腕時計(サイズのデバイス)の中に何でも詰め込むなんて必要はなくなる。

と語っている。

なぜ、映画会社が映像配信を望んだか

 ぼくは、「ホームサーバーの意味するもの」の中で、こんなことを言っている。
 映画会社にとって、ディスクというものほど厄介なものはない。確かに映画製作のためには大変大きな収入源だ。デジタルハイビジョン画質でコピーされてしまえばその収入源はふいになる。たくさん売りたいけれど、コピーは怖い。あれほどHDMI規格に時間をかけてコピーされないように設定した。しかし、所詮は誰かがコピーするだろう。コピーされないためにはディスクを視聴者に渡されなければよい。それで見るたびに金をとるシステムがあればよい。そうそれがインターネットを使ったホームサーバーシステムである。

 データに期間限定のプログラムを仕掛ければよい。もうひとつは、ブルーレイとHD DVDの統合をできるだけ伸ばすことが必要だ。ユニバーサルはマイクロソフトやアップルがホームサーバーを完成させるまでブルーレイ入りを待たせることにする。こうしてパソコン業界とアメリカ映画業界は秘密の結託をする。

映像配信の長所

 ここにも述べたように、長所としては、

(1) 映画会社や放送局がコンテンツの管理をしやすい。

(2) DVD化するには、まとまった枚数を製造しなければならないので、あまり売れない作品(つまり、上映・放送時こけた作品)は、DVD化しにくいが、映像配信では、1枚でもダウンロード販売ができる。

(3) DVD化するには、印刷物をあらかじめ制作しなければならないが、映像配信では、コンテンツのみを準備すればよく、時間と費用がかからない。そのに座っているだけでため、パッケージ費用を省いた料金で提供できる。

(4) 今まで、死蔵していたDVD化しにくい作品や、テレビ番組などを大量に活用できる。

(5) 資金の少ない小さな制作会社でも参入しやすい。

(6) 配信まで時間がかからないということは、放送したばかりのテレビ番組や上映中の映画であっても直後に配信できる。一度に宣伝できるので、タイミングを逃さない。昨日見損なったり、録画に失敗したテレビ番組でも、すぐ見ることができる。

(7) ユーザーは、自宅のテレビの前に座っているだけで、外のショップやレンタルビデオ店に行く必要はないので、手間がかからない。また、ビデオやDVDを返す必要がない。

(8) 今まで、暇つぶしの番組ばかり作っていたテレビ局が、海外で売れるコンテンツを作らざるを得なくなる。

(9) また、YouTubeなど、素人投稿ビデオは、メジャー参入など、夢のまた夢だった素人クリエイターにとって、海外の映画会社や放送局にPRできるチャンスになる。

映像配信の短所

 一方、短所として、

(1) HD配信には回線に負担がかかるので、インフラ整備が必要。また、有名番組の配信のときには、一箇所に集中するので、パンクしたり、途中で途切れる可能性もある。

(2) 今までDVDを販売していたショップや、制作していた会社、運送会社、レンタルビデオショップに破壊的な影響を与える。流通システムが根本的に変わるためである。アメリカは日本に比べ、家電が下火なので、あまり抵抗はないが、日本においては、どこまで普及するか。期間限定であったり、DVD化されていない作品に限ったりで、制限されるかもしれない。しかし、ハリウッド作品が、売れ線の日本では、映画会社の意向は逆らえないのではないだろうか。

(3) 映像配信の料金が下がる一方、コレクターアイテムとしてのパッケージDVDは、より高価になる。

(4) 自宅で見られるので、映画館まで足を運ばない。

(5) 上映や放送をしない配信だけの作品が増える。

(6) 公開前のスターを集めての大イベントが少なくなる。

時代は変わる

つまり、ホームサーバとは、既存の流通システムを根本的に変え、新たなステージに立つための大きなチャンスなのである。ぼくは、「第2の波では組織、第3の波では個人が主体に」でこう書いた。
さて、僕は「革命前夜」でアルビン・トフラーの「富の未来」をとりあげ、第二の波(産業革命)から、第三の波(知識革命)に変わりつつあると論じた。それは同時に、大量生産・大量消費の企業組織主体の価値観から、それぞれの消費者にあった知識を持つ個人の力が主体になるということなのではないか。

たとえば、テレビのコンテンツというものも、もともとは作家の知識が大本になっている。インターネットのブログなどは、今まで物言わぬ大量生産品の消費者たちが一斉にしゃべりだしたということもできる。つまり、しゃべる消費者の出現である。メーカーとしては、これら消費者の言葉は無視できない力となる。

 そうなると、現在のテレビのありようも変化せざるを得ない。テレビ局はより良質の知識(コンテンツ)を持つ人間を集めなければ、インターネットに対抗できないからだ。まだ、テレビ局は自分たちは番組のプロであるという、おかしな自信を持っている。だが、制作会社がなければ番組制作はできない。その制作会社は何を考えているのか。テレビしかなかった時代、制作会社はテレビ局の電波管理の下で、唯々諾々と働かざるを得なかった。インターネットでは、その鉄鎖は取り払われる。

時代が変わるとき、過去に依存していた人々に大きな嵐が襲いかかる。だが、それはまた過去に縛られた人を解放する大きなチャンスでもある。
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