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素人だから言えることもある

iPhoneとブルー・オーシャン

iPhoneとWiiの共通点

 ブルー・オーシャンとは、
 『ブルー・オーシャン戦略』(ランダムハウス講談社)という経営書が静かなブームになっている。米国でベストセラーになり,各国語に翻訳され,世界100カ国以上で刊行されているという。

 この本では,競合他社と価格や機能で血みどろの戦いを繰り広げなければならない既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海)」,競争自体がない未開拓の市場を「ブルー・オーシャン(青い海)」と呼んでいる。「コスト削減」や「差異化」などを勧めるこれまでの経営書は,どれもレッド・オーシャンで勝つための方法を説いているとし,それとは違うブルー・オーシャンを創造することを提唱。そのための具体的な方法を解説している。 (「他社とは違う土俵で勝つ」ためのブルー・オーシャン戦略)(ものづくりは人づくりWiiの成功と限界で引用)

この本の共同著者の仏INSEAD教授のW・チャン・キム氏は、IT Proの取材で
 任天堂が、新型ゲーム機「Wii(ウィー)」の企画・開発に当たってブルー・オーシャン戦略を適用したのは興味深い事例だと考えている。任天堂は、社内でチームを作り、私の本を読んで、自分たちで解釈して実践してくれたようだ。私は理論家として、このことをとても誇りに思う。(任天堂の事例も含めた詳細は、http://www.blueoceanstrategy.com/=英文=を参照)

 Wiiは「非顧客」を顧客化した典型的な事例だ。これまでゲームであまり遊ばなかった小さい子どもや大人にも満足してもらえるゲームを出すことで、ブルー・オーシャン(新市場)を開拓した。

 任天堂も(Wiiの前世代の)「ゲームキューブ」を発売したときは、ソニーやマイクロソフトとの激しい競争の中で、レッド・オーシャンにおぼれそうになっていた。任天堂を含むどの企業も、ゲーム機の主要な顧客を10代後半だと考え、この層を満足させるために、画像処理の性能など機能面で競争してきた。

 任天堂は、「なぜもっとほかの層にゲームで遊んでもらえないのか」と自らを問い直した。複雑になりすぎたゲームではなく、もっと簡単で操作を覚えやすいゲームを作れないかと考えた。そこで、「Wiiリモコン」を開発。ゴルフやテニスなどの手の「動き」という新しい要素を「付け加える」ことで、新たな市場を創出した。(「Wii」を生んだブルー・オーシャン戦略とは?)

iPhoneについては、INSIDE INSIDEというサイトにこうある。
ブルーオーシャン戦略を学ぶ

Blue Ocean Strategy Study Groupは授業はなく、学生のグループがブルーオーシャン戦略の本を読んである製品・サービスを分析し、この結果をチャン・キム教授に報告して指導してもらいます。僕たちのグループはiPhoneを選び、ブルーオーシャンの6PathやBuyer Utilityなどのフレームワークに従ってiPhoneを分析しました。

iPhoneスマートフォンとMP3プレイヤーに機能を追加した製品であり新たなマーケットも作り出していないので、ブルーオーシャンではなくレッドオーシャンの製品だという結論でチャン・キム教授とディスカッションしました。

そこでチャン・キム教授に言われたのは”iPhoneレッドオーシャンの製品かもしれないがウォークマンのようなブルーオーシャンになる可能性もある。iPhoneの成功・失敗をブルーオーシャンの観点で分析して、どうやったらブルーオーシャンになるかの提案をするのがブルーオーシャン戦略の使い方だ”とのことでした。

チャン・キム教授はアップルのスティーブ・ジョブズにもブルーオーシャンについてアドバイスをしているそうで、僕たちにもスティーブ・ジョブズにアドバイスする立場で考えるように指示されました。その後考えてみるとiPhoneにはウォークマンのようにその時代を代表する製品にするためのアイディアが見つかり、ブルーオーシャン戦略の本来の目的を理解したのでした。(ブルーオーシャン戦略を学ぶ)

ウォークマンやWiiのブルー・オーシャン

 ブルー・オーシャンの成功例として言及されるウォークマンだが、なぜそういわれるのだろうか。
ぼくは、「ジョブズとソニー(3) iPodとウォークマン」で、ウォークマンがどのようにして作られたかを「ソニー自叙伝」(ソニー広報センター/WAC)を引用した。
 例の改造版プレスマンを手にした盛田の第一声に皆驚いた。
「この製品は、一日中音楽を楽しんでいたい若者の願いを満たすものだ。外へ音楽を持って出るんだよ。録音機能はいらない。ヘッドホンつき再生専用機として商品化すれば売れるはずだよ

さらに、盛田は続けた。

「若者、つまり学生がターゲットである以上、夏休み前の発売で、値段はプレスマンと同じくらい、4万円を切るつもりでいこうじゃないか」

(中略)

「こんなのを作ってくれ」とアイデアを出したのは、70歳を過ぎた井深だった。「これはいけるぞ」と商品化に熱中したのは、60歳に近い盛田だった。年齢にも過去の成功にも捉われることなく、絶えず好奇心に満ちあふれアンテナを張る二人は、新しい商品提案を支持する感性と、何よりも熱意を持ち続けていた。(「ソニー自叙伝」ソニー広報センター/WAC)

こうして、ウォークマンを外に持ち歩きたいという若者たちにライフスタイルを提案し、新たなブルー・オーシャンを切り開いた。また、「Wiiの成功と限界」では、任天堂の岩田社長の言葉を引用した。
 茶の間のテレビに人が集まっていたのが20世紀のだんらんの形。そこにファミコンが現れ、家族でコントローラーを奪い合った。ゲームにとって幸せな時代だった。なのに、いつの間にかコントローラーは複雑になり、お父さんやお母さんに後ずさりされるようになった。Wiiが提案するのは、ゲームを中心に家族が笑い合い、話し合う新しいライフスタイルで、21世紀型のだんらんだ。(朝日新聞(1/4)
この言葉は、冒頭のチャン・キム教授の言葉、
任天堂は、「なぜもっとほかの層にゲームで遊んでもらえないのか」と自らを問い直した。複雑になりすぎたゲームではなく、もっと簡単で操作を覚えやすいゲームを作れないかと考えた。
に呼応する。こうして全く新たな市場を切り開いた。また、「ハーバード・ビジネス・レビュー」の編集長のブログでは、

ブルー・オーシャン戦略の本質

ブルー・オーシャン戦略は戦略論のような考えに縛られないところに特徴があるのです。理想を追い求めたときに自社の足りない部分は何かを考えます。アイデアを出し、足りないものを探していくことで、自分たちの行きたいブルー・オーシャンに行き着くだろうというものなのです。

これは戦後の日本企業がやってきたことと同じです。ソニーは安かろう、悪かろうの日本製品を一流にしたいと考えました。このときに微細化技術を使えばブルー・オーシャンに行き着くだろうなどとは考えなかったはずです。何も制約のないところで、進んで行ったらブルー・オーシャンに行き着いたのです。
大切なのは決定論ではないところです。決定論に縛られると、「ウチにはこのようなリソースがないからやめよう」「やったことが無いからリスクが高い」と考えるわけです。もちろんこれらは間違いではありません。しかし、これではイノベーションが生まれて来ないのです。

ヒット商品は戦略ミスから生まれる
話は変わりますが、ヒット商品というのは戦略のミスから生まれるともいえます。ヒット商品はセグメントを細分化するのではなく、加えることで発生するものなのです。「こんな思わぬお客さんがいたのか! 気づかなかった」という戦略をミスした結果、大ヒット商品が生まれるといえます。

実は、「ブルー・オーシャン戦略」は、そういう戦略のミスを見つけるための方法論なのです。

任天堂のWiiやプレイステーションの話は本論にも書いてあるので詳細はそちらに譲りますが、プレイステーションの設計、開発の方向性というのはセグメンテーションです。どんどんヘビーユーザー向けにスペックを高度化していったわけです。画像がきれい、処理能力が高い、ストーリーが難解というように……。一方、Wiiというのは高齢者まで楽しめるものになっています。それゆえに不要とは言わないけれども、あえてそのハイスペック仕様に背を向けたことが、成功要因になっているわけです

そうすると、携帯電話の機能をおさえたものとどこが違うのかと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。Wiiはプレイステーションとは違うところに解がある、ということを見つける作業過程が違うのです。具体的にいえば、Wiiはノンカスタマーの声を聞きました。ここがキーになっていたと思います。

これまでは、既存のお客さんのことを知ろうとすることで、いいモノを作ろうとしていました。マーケティングというのは、そういうことだと思います。CRMはまさにそうですね。従来のマーケティングのやり方を否定するわけではないのですが、それはあくまでもレッドオーシャンでの話であって、ライバルとしのぎを削っていく市場での考え方です。

iPhoneスマートフォンとMP3プレイヤーに機能を追加した製品であり新たなマーケットも作り出していない」からレッド・オーシャンの製品であると切り捨てられたiPhoneがブルー・オーシャンになる可能性はないのか。

iPhoneのこれから

さて、同じ授業に参加していた別の学生のサイト、フランスMBA&音楽留学体験記の「iPhoneの可能性」と題して
まず調べて分かったのはiPhoneユーザーの90%が競合製品から乗り換えた人で、競合製品を持っていなくてiPhoneを新たに買った人は10%しかいませんでした。やはり今のiPhoneレッドオーシャンの製品です。

それでなぜレッドオーシャンの製品になってしまったのかを考えると、そもそもレッドオーシャンの製品として作ったからだと思います。iPhoneの製品発表でも”iPhoneスマートフォンとMP3が一つになった製品”として紹介しています。既存のスマートフォン、MP3よりも優れた製品として評価されたので競合製品から乗り換える人はたくさんいて話題になりましたが、一方で全く新しい製品カテゴリー・バリューを提案してはいないのです。これでは新たなマーケットを作り出すことはできないはずです。

そこで何か出来る可能性がないかを考えてみるとモバイルインターネットの可能性が見えてきました。スマートフォン顧客満足度調査を見ると電話とメール機能には満足しているがインターネットブラウザーは使いにくく不満が多い一方で、iPhoneのブラウザーは使いやすいと評価されています。実はモバイルインターネット端末として今は一番すぐれた製品のようです。

(中略)

さてiPhoneにどのような改善が必要かというとアクセススピードです。これはGSMでなく3Gを採用することで改善されます。それとモバイルインターネット用のアプリケーションがもっと必要です。例えば街を歩いているときに近くのレストランを探せて気に行ったレストランまでの道順を教えてくれるなどのアプリでこれはGoogleとの連携を強化していくことでも対応できると思います。街中でモバイルでインターネットが使えたら何をしたいか、便利かをもっと考えることが大事です。それと今はついているMP3の機能は不要です。この機能を削ることでiPhoneの製造コストを約30%減らすことができます。

モバイルインターネットの時代はこれから来るだろうし、この代名詞となる製品にiPhoneがなる可能性はあると思います。スマートフォン市場の30%を取ったということよりももっと大きなインパクトを与えられる可能性があり、この時代のWalkmanのようなポジションになりえるのです。

つまり、現在ではiPhoneレッドオーシャンの製品ではあるが、モバイルインターネットの時代では、iPhoneがブルー・オーシャンを切り開くだろうというのである。それには、アップル自らの魅力的なモバイルインターネットの世界を築き上げることが重要である。
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