夢幻∞大のドリーミングメディア

素人だから言えることもある

40年前の「断絶の時代」を読む(1)

 今、起きている社会変動の原因は何か。調べていくと、ピーター・F・ドラッカーの「断絶の時代」に行き着いた。今回は、「ドラッカー名著集7 断絶の時代」 (ドラッカー名著集 7)」(ピーター・F・ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳)/ダイヤモンド社)の前書きから引用したい。

(1)新技術、新産業が生まれる。同時に今日の重要産業や大事業が陳腐化する。これまでの成長産業は、19世紀半ば以降の発明発見に基づいていた。これからの新産業は、20世紀の知識によることになる。量子物理学、生化学、心理学、記号論理学の知識である。これからは、技術や産業が連続的だったこれまでの半世紀よりも、新しい技術に基づいて新しい産業が数年ごとに現れていた19世紀最後の数十年に似たものになる。

(2)世界経済が変わる。今日いまだに経済学と経済政策は、国民国家を単位とし、言語、法律、文化と同じように経済も異なる国が、貿易によって互いに関わりをもつという世界経済を前提にしている。しかし、すでに世界経済は、グローバル経済になっている。情報が、同一のニーズ、刺激、需要を生んでいる。それらは国境、言語、イデオロギーを越えている。世界は一つの市場となり、グローバルなショッピングセンターとなる。だが今日、このグローバル経済は、グローバル企業以外の機関をもっていない。グローバル経済のための経済学も経済政策も生まれていない。

(3)社会と政治が変わる。いずれ多元化する。今日あらゆる社会問題が組織に任されている。しかし、いまだにわれわれが前提としているものは、18世紀の自由主義、個人主義である。そのくせ現実を支配しているものは中央集権組織である。ここで、集権化に向けた趨勢に変化が起こる。最大の中央集権組織である政府に対する幻滅が広がる。その能力が疑問視される。政府以外の大組織についても批判が生じる。


(4)最も重要なこととして、知識の性格が変わる。すでに知識が、中心的な資本、費用、資源となった。知識が、労働と仕事、学ぶこと、教えること、知識自らの本質とその使い方を変えた。さらには新しい権力者としての知識あるものの責任について新たな問題を提起した。(ピーター・F・ドラッカー (著), 上田 惇生 (翻訳) 「ドラッカー名著集7 断絶の時代 (ドラッカー名著集 7)」ダイヤモンド社)

 40年前といえば、東京オリンピック(1964)直後である。訳者あとがきによれば、この変動は、1965〜2025年の60年間かかるという。今回のサブプライムローンをきっかけとなる世界経済の大恐慌も、支配している政治の手遅れにより、後手後手に回っている。つまり、経済の発展のわりに古い政治が立ち遅れているのだ。この政治と、経済と、社会の断絶こそがドラッカーが予測したことである。しばらくは、この「断絶の時代」の言葉から、現代を読み解きたい。
ブログパーツ