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素人だから言えることもある

ヒゲオヤジの語る手塚治虫

 来年は、手塚治虫生誕80周年だという。「MW」が実写映画化され、しかもハリウッド版「ASTRO BOY」も公開の予定だ。また、ニコニ・コモンズに手塚作品が登場した。(宣言全ページ)
 実は、11月3日は手塚治虫の誕生日である。そして、来年11月3日はちょうど80歳の誕生日というわけである。さて、雑誌「東京人」の「特集 手塚治虫への冒険」を読んでいると、ブルボン小林氏の書いた「たかがマンガ」と思わせる遊び。というページ(P48)で、こんな文章があった。

 最後にもう一つ、光文社カッパブックスから刊行された「マンガの描き方」は手塚には少ない活字の本の中でもさらに珍しい「実用書」だ。当時のカッパブックスは裏表紙に「推薦文」が掲載されるならわしだった。教授が出した本なら別の教授とか、タレントならば友人の役者などが、その本の魅力を語っている。「マンガの描き方」の推薦文は誰が寄稿しているんだろうか、多分漫画家だろうか……と思ってみたら、伴俊作(お茶の水小学校教諭・私立探偵)とある。ヒゲオヤジだ!活字でさえも「マンガ」的なギャグをやりたいという彼のイズムを、漫画家ではない活字だけの職業の僕もせっせと見習っているのである。
と、文章はここで終わっている。俄然、ヒゲオヤジの書いた「マンガの描き方」推薦文を読みたくなってくるではないか。僕は、本文の「マンガの描き方」にはあまり興味が無いが、手塚治虫が書いたヒゲオヤジの見た手塚治虫論には大変興味がある。講談社の漫画全集にこの「マンガの描き方」(別巻17)は載っているはずだ。ところが、これは、手塚の死後にオリジナルの「マンガの描き方」を編纂されており、ヒゲオヤジの推薦文などはない。そういえば、古本屋で買ったカッパブックス(正確にはカッパホームス昭和52年版)があった。ここで、おそらくもう古本以外では二度とお目にかからない、ヒゲオヤジの推薦文を引用する。
著者・手塚治虫氏のこと

お茶の水小学校教諭・私立探偵 伴俊作(通称・ヒゲオヤジ)


 手塚治虫は三十年間以上、家庭を捨て家族を投げ出し、趣味や道楽を犠牲にし暇やゆとりを切り刻んでも、漫画を描くことにだけ費やしてきた男なのだ。……わたしァ、それ以上昔から手塚を知ってるがね。彼は痩せ細って近眼で、色男ではないが金と力のない一介の学生だった。ある日それまでは本職になる積もりでやってきた医者の勉強を、すっぱりやめちまった。諦めが早いちゅうか移り気だちゅうか、もったいないことをしたものだ。もっとも、かりに医者になっておったところで、あの気の弱さじゃあ、ブラック・ジャック先生どころか、盲腸だって治せねえと思うがね、……あの人ァあれでなかなかどうしてガンコなんだ。虫プロを始めたときなんざ、自分の意見を曲げねえもんだから、ちょっとした映画にべらぼうな金をつぎこんじまった。関西人にゃ珍しく、宵越しの金を持たねえんだが、そんな性格が会社をつぶしちまったんだねえ。……手塚は意外と人みしりで、そのくせさみしがり屋なんだよ。そこらがあべこべに負けん気の源泉になってるのかもしらんねえ。いま、自分の漫画を海外へ出すんだなんて夢持っとるようだがね、案外やっちまう人かもしんねえよ。執念深いからね、あれは。



追記


ASTRO BOYの予告編が公開された。アトムが服を着ている。御茶ノ水博士も微妙。まあ、これもありか。


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