夢幻∞大のドリーミングメディア

素人だから言えることもある

派遣制度はバーチャル雇用

リアル世界とバーチャル世界

 バーチャル世界というと、セカンドライフの中のアバターを使ってのチャットを思いつくが、
Virtualとは「実質的な」という意味であり、バーチャルリアリティという語 には「現実世界の実質的で本質的な部分をユーザに提示する技術」という意味がこめられている。そのような意味で仮想現実という訳は本来不適切といえる。またバーチャルリアリティの訳語として「仮想現実」という言葉が一般に普及したことから、文脈を無視して「バーチャル」の語を、「仮想」(または、擬似)という意味で和製英語的に使われることが多いが、これはさらなる混乱をもたらす場合がある。

(中略)

国立国語研究所「外来語」委員会の言い換え提案でも、英語 virtual は「表面上は違うが実質そのものである様子で、実質上と訳される」のに対し、外来語「バーチャル」は、「現実そっくりだが仮想の世界である様子」として用いられ、英語と意味が大きくずれていることが認められている。(バーチャルリアリティwikipedia)

 このように、バーチャルという言葉ひとつとっても受け取り方によっては、180度違ってしまうので、今回のエントリーの定義として、リアル世界では物理的に越えられない「時間と距離を超越したもの」をバーチャルとして考えてみたい。

 ぼくは、メディアはなぜ孤立化を好むのかで、心理学者の小此木啓吾氏の「一・五の時代」に触れた。

 たとえばいままでの人と人とのかかわりを「二」という数字で表すと、現在の情報機械と人とのかかわり、コンピュータとのかかわりなどは「一+〇・五」つまり「一・五」のかかわりだと私は比喩的に表現しています。

(中略)

いわば情報機械の特徴は、機械ではあっても、そこにはいろいろな人間的な情報がたくさんインプットされていて、それが一つの擬似的な人と人とのかかわりを代行してくれるという意味があります。そこで人とのかかわり以上に面白いインタラクションを経験させてくれます。そのなかに、ほんとうの人間はいないけれど、こうした情報機械と二人でいる、つまり一・五というわけです。(小此木啓吾著「現代人の心理構造」NHKブックス)

そして、
 このメディアは、人工物だから自分の都合でON・OFFできる特徴がある。メールができなかった時代の携帯電話は、相手の都合を気にしなければならなかった。だが、メールができるようになって、そんな相手の都合も関係なくなる。その瞬間、自分のパーソナルな空間がその分広まったような気分になる。そしてこの友達関係も簡単にON・OFFできる関係となってしまった。(メディアはなぜ孤立化を好むのか)
と書いた。人間と人間の間にメディアが入り込むことによって、「時間と距離を超越」したケータイはいわばバーチャル空間となってしまった。
 これは、インターネットがビジネスの世界に入り込むことで、ますますバーチャル空間が日常化してきた。今まで、テレビで新製品の情報があっても、近くの店で買うしかなかったものが、インターネットを通して買い、配送してもらうことができる。そこにあるのは、いわば、「時間と距離を超越」したバーチャル空間なのである。

派遣制度は企業にとって都合の良いバーチャル雇用制度

 パソコンなり、ケータイなり、たとえ、インターネットにつながらなくても、間にメディアをおくだけで簡単にバーチャル空間ができる。たとえば、サポートセンターに電話をつないでいるつもりでも、そこは中国の大連であって、日本語のうまい中国人が対応しているかもしれないのだ。
 フラットな世界には「代替可能な仕事と代替不可能な仕事の二つしかない」。・・・フラットな世界の最も顕著な特徴の一つは、たくさんの仕事が代替可能になったことだ。(トーマス・フリードマン著/伏見威蕃訳「フラット化する世界」日本経済新聞社)
 この代替可能な仕事は、人件費の抑制のために、限りなく買い叩かれる。リアル世界では、正規雇用は企業にとって代替不可能な人材として育てるために、コストをかけて採用する。ところが、世界を良く見れば、実は、代替不可能な仕事なんてそんなにない。ほとんどが代替可能な仕事ばかりだ。その例として、僕は、個人情報が輸出される「フラット化する世界」でこんなことを書いた。
 今まで企業の要とされていた人事・経理・総務まで中国の大連にアウトソーシングされるというのだ。5500円かかっていたコストが750円ですむというのである。しかもその企業数が2500社というのだから驚きである。しかし、待てよ。人事や経理といえば、社員の個人情報がなければ勤まらないところだ。それを中国に持っていくとは。当然ながら顧客情報もデータ入力のために海外流出していることを意味しているのではないか。(個人情報が輸出される「フラット化する世界」)
 人間と人間の間にメディアが入ることで、バーチャル空間が作れると書いた。つまり、それは人と企業の間に派遣会社が入ることで、バーチャル空間ができてしまったのではないか。そして、その特徴として、簡単にON・OFFできる関係となってしまったのではないだろうか。
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