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ソニーの復活にはPS3の値下げしかない(ホームサーバの戦い・第22章)

 ソニーが2600億円の赤字とリストラ策を発表した。

ソニー、2008年度業績は2,600億円の営業損失に−テレビ事業構造改革や人件費削減に着手

 ソニーは22日、2008年度の通期連結業績予測を下方修正した。2008年10月発表の予測に対し、売上高は1兆3,000億円減(14%減)の7兆7,000億円、営業利益は4,600億円の損益悪化で、損失2,600億円と赤字となる。純利益も当初予測比で3,000億円のマイナスで、1,500億円の損失に修正した。

 世界的な景気後退に伴う事業環境の悪化や、為替市場における円高の進行、日本の株式相場の下落、構造改革費用の増加などにより、売上高と営業利益の見通しが大幅に下回ることとなった。第4四半期の想定為替レートは1ドル90円前後、1ユーロ120円前後(2008年10月発表の下期想定レートは1ドル100円前後、1ユーロ140円前後)。

 気になるのは、PS3はどうなるかということだ。ぼくは、「ソニーPS3撤退?」記事の日米メディア屈折度で、ソニーのPS3撤退は虚妄であると思ったが、現実にストリンガー会長の言葉が出るまでは、ありえないことではないと思っていた。というのも、Xbox360やWiiの伸びに対して、PS3は第3位に甘んじていたからだ。いわば、セガのドリームキャストの運命を彷彿とさせていたのである。しかし、この記事により、その可能性は消えた。
液晶テレビでは、新興国の成長による普及価格帯のモデルの比率増加を見据え、OEM/ODM展開を加速、アセットライト化を推進する。さらに、ハードウェア設計やソフトウェアをグローバルに共通化し、設計開発リソースを集約。特にソフトウェア開発については、一部領域をインドなどにアウトソースするなどで固定費削減を図る。また、設計、開発、製造、物流、販売の全てのオペレーションの構造をワールドワイドで見直すとしている。これにより、設計および間接部門の人員を2009年度末までに全世界で約30%削減する。

 成長戦略としては、エレクトロニクスとゲームの連携を強化し、ハードウェアとネットワークサービスの融合を加速するという。

(中略)

 ハワード・ストリンガーCEOは、「現在の世界の経済状況は家電業界が経験したことの無い変化。需要が縮小し、為替が大きく変動し、小売店の状況も悪い。しかし、競争は続いている。競合に比べれば、サプライチェーンマネージメントの非効率があり、サイロ(部門間の壁)もまだ残っている。これをイノベーションで超えていく」と語り、「変革により、ソニーは伝統的な日本の電機メーカーではなくなる。SamsungやLGはグローバルな製品ポートフォリオを有している。また、マイクロソフトAppleCiscoも、デジタルホームに乗り出している。電機メーカーであろうとなかろうと、この困難に直面している。競合も変化しているが、この中でエレクトロニクス事業で利益を出していかなければならない」と、構造改革の必要性を説明した。

 構造改革により、2009年度に2,500億円のコスト削減を達成すると目標設定。各事業の効率化とともに、競争力強化に注力する方針で、全世界で徹底的に取り組む方針を説明。「ソニーの基礎は優れたハードウェアであり、素晴らしいエンジニアの創造性とノウハウ、デザイン能力、ブランドだ」と語るとともに、「若く挑戦的なエンジニア、従業員もいる。ネットワークや新しいデジタルライフの創造に取り組む」とネットワークサービスの強化方針を語り、ソフトウェア開発への強化やアウトソース、半導体などのアセットライト戦略を解説した。

 その戦略の一環として、PLAYSTATION 3用ネットワークサービス「PLAYSTATION Network」とソニー製品の連携などについても言及。テレビにネットワーク機能を持たせ、“オープン化”により、ネットワーク、ゲーム、テレビなどのさまざまな機能を実現する方向性を、ソニーの次の姿として語った。(ソニー、2008年度業績は2,600億円の営業損失に−テレビ事業構造改革や人件費削減に着手)

 ソニーの次の姿は、PS3やテレビのネットワーク配信だというのだ。これは、かつて久夛良木健氏の語った、
ネットワークで配信(再配信)可能なコンテンツには、ゲームの他にも、映画・音楽、許諾を受けた放送番組、あるいは個人が撮影した膨大な数の写真や動画などがあるだろう。今後、家庭において「プレイステーション 3」自体がホーム・サーバーとなり、他の携帯機器やネットワーク接続されたデジタル家電機器、さらにはパソコンにも、ゲームや映像や音楽を配信することも可能になる。(久多良木健氏からの手紙、「PS3が創るリアルタイム・コンピューティングの未来」ITpro)( 家電屋VSコンピュータ屋、ホームサーバーの戦い
と見事に合致している。また、マイクロソフトビル・ゲイツ氏も
ソニーはマイクロソフトと競いたがっている。PS2は、単なるテレビ用のセットトップボックスやゲーム機の枠に収まらないだろう。PCにとって脅威になるのは間違いない。(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」ソフトバンク)(Xbox vs PS2(ホームサーバの戦い・第8章)
と語り、ITジャーナリストの後藤弘茂氏も
もともとは、ゲーム機という家電が、将来、リビングルームのメディアセンターに育つのなら、それを押さえよう、というのがMicrosoftのXbox戦略の原動力だった。もっと具体的に言えば、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)がそのポジションを獲る前に、自分たちで獲らなければならないと考えたXbox部隊の現場はともかく、Microsoftの上層は、そうした戦略でいたと思われる。(後藤弘茂のWeekly海外ニュース「Wiiに逆転されたXbox 360の巻き返し戦略」)(ゲーム機戦争とネット配信(ホームサーバの戦い・第10章) )
とすでに、現在のネット配信の戦いはそのときより始まっていた。いわば、PS3やXbox360、今ではWiiすらもコンテンツ配信を主眼においてゲーム機戦争を繰り広げている。家電業界をカテゴリーとするソニーが、ここで主導権をとるためには、PS3をはずすわけにはいかないのだ。そのために、ソニーは、SPE、SMEなどのエンターテイメント部門でさまざまなコンテンツを溜め込み、PS3をホーム・サーバーとしていく道を次の姿のソニーとして選んだのである。したがって、将来のソニーの復活を望むためには、PS3を値下げし、現在1000万台の販売をさらに拡大するしか方法はない。
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