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ソニー・ストリンガー会長の会見を読み解く(ホームサーバの戦い・第23章)

 ソニーのストリンガー会長の会見の様子が、より詳しく載っていた記事があった。それは、Business Media 誠の過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録というものだった。

 たとえば、前項「ソニーの復活にはPS3の値下げしかない(ホームサーバの戦い・第22章) 」で引用したインプレスの記事は、

 その戦略の一環として、PLAYSTATION 3用ネットワークサービス「PLAYSTATION Network」とソニー製品の連携などについても言及。テレビにネットワーク機能を持たせ、“オープン化”により、ネットワーク、ゲーム、テレビなどのさまざまな機能を実現する方向性を、ソニーの次の姿として語った。(ソニー、2008年度業績は2,600億円の営業損失に−テレビ事業構造改革や人件費削減に着手)
とあっただけだが、Business Media 誠では、
 そして、第3にエレクトロニクスにおける連携を強化してまいります。ハードウェアとネットワークサービスとの融合を加速していきます。デジタルエンターテインメントの世界で競い勝っていくために、コンピュータエンタテインメント、エレクトロニクス、それぞれの事業領域で迅速に動き、重複をなくし、リソースの共有化を図らなければなりません。すでに色々動きをとっております。例えばネットワークサービスチームのトップであるティム・シャーフは、平井一夫率いる組織と直接的に協力することとなりました。

 確かに今は大変厳しい試練の時です。しかし一方で、私どもは「その黒い雲が晴れた時に待っているチャンスの時代に備えなければならない」と考えております。事業構造の変革をなしとげた暁には、ソニーは柔軟性、資金力、そしてスピードを備えることになるでしょう。そして、それをもってネットワーク時代に優位な立ち位置を持つことになりましょう。

 エレクトロニクス、コンピュータエンターテインメントの連携を強化することによって、いくつかの重要領域で戦略的な動きをすることができるようになります。

 まず第1にテレビでありますが、テレビを従来の放送事業者が決めた一方的なエンターテインメントを提供するパッシブなディスプレイから、インターネットから直接さまざまなリッチコンテンツを引き出すことのできるネットワークエンターテインメントセンターに変えていく動きを加速いたします。

 また、ゲーム、エンターテインメント、デジタルイメージング(※デジタルイメージング……紙文書などをデジタル化する技術)、テレフォン、そういったソニーの強みを生かして、次世代のモバイル機器のラインアップの充実を加速してまいります。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)

 この話の後に、ストリンガー会長は、
ソニーの変革を進めていくにあたって、またこの春にでも進ちょく状況をご報告できれば、あるいは私どものいろいろな作業を、細かい内容までお話できればと思っております。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)
と、いささか思わせぶりな発言があった。この春にはいったい何があるのか? 次に記者との一問一答があった。
——会長のスピーチで「エレクトロニクスとゲームの連携強化」というお話がありましたが、具体的にどういうことを示しておられるのでしょうか?

ストリンガー もう具体的になっていますが、プレイステーションネットワークとそのほかの会社との関係、これが今加速的に強くなっているということです。ネットワークサービスのオペレーションは元々カリフォルニアでプレイステーションとは別個に行われていましたが、この事業が今はプレイステーションの長の下に置かれています。いかに統合するかということは時間を待たなければいけませんが、いわゆる物理的なパッケージではなくて、オンラインのゲームになると思います。

 ネットワークのデバイスに関してもPS3とか、そして我々が作り出したプラットフォームのゲームとか、ビデオサービスとか、エンターテインメントをすべてのデバイスに提供できる可能性があるのがソニーの秘密の強さだと思います。

 先週ラスベガスに行ってらっしゃった方もいたかと思いますが、我々コンベンションで非常に成功いたしました。「コンテンツとエンターテインメントとハードウェアを1つにすることによって、ほかのエレクトロニクス会社が提供できないような体験を提供する」、これが目標であり、将来であり、イノベーションということになります。PS3、プレイステーションネットワークも昨年始めましたが、これがまさに重要な製品・要素となるわけです。これによってそれがより進むということになります。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)

 ここで語られたのは、今まで、テレビ部門や映画部門やPS3の部門などでバラバラにネットワークサービスを行っていたのが、現在では、PS3の傘下にあるということ、しかもその体験は「コンテンツとエンターテインメントとハードウェアを1つにすることによって、ほかのエレクトロニクス会社が提供できないような体験」で、それは成功したことである。しかし、それが成功したところで、収益に結びつくのか。記者はこう質問する。
——アセットライト(アセットライト……アウトソーシングを活用して資産を圧縮すること。)は戦略かもしれませんが戦略の修正でしかなくて、これで利益成長ができる類のものではないと思います。また、ネットワークにつないだからといって売り上げが上がるという保証はないと思います。今日この場では先にコア事業の定義、つまりソニーはどこに行くんだという話を先にしてから、構造改革を実施するのが本来の順番だと思います。もう少し具体的に、ソニーがどう進んでいくのかお話していただければと思います。

ストリンガー これから2カ月の間にお答えできると思います。3つの要素、エンターテインメントとコンピュータとハードウェアの関係、これが将来の鍵だと思っています。「いかにこのビジネスをそれぞれ見直して、いかに協力させるか」ということだと思います。

 3年前にはこのエンターテインメントとハードウェアとの間はほとんど接触がなかったわけです。そしてコアビジネスを私ども見直して、こういったエレメントが今は交流があるという状況まで来ました。確かに今は未曾有の市場環境ですが、それぞれの会社が関係を深めていくことによってチャンスが生まれると思います。「いかに新たな収入源を、お互いのテリトリーの中で仕事をすることによって得ていくか」ということです。

 さまざまなデバイスがネットワーク対応になっています。Wi-Fi対応のものもあります。インテグレーション(インテグレーション……単一の業者が一括してサービスを提供すること。)とリレーションシップ、これがソニーを強くするということがはっきり分かってきました。もちろん皆を納得させることは困難ですが、私どもはそれができると思っています。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)

 2ヵ月後といえば、である。ストリンガー会長には秘策があるらしい。そういえば、会長はさかんに「ネットワーク化」という言葉が飛び出す。それを会見から探ってみる。
 ソニーはネットワークサービスに対応する商品こそ、今後長きにわたって差別化を実現し、そしてひいては事業が魅力的な収益を回復する上で必須であると十分分かっているのです。このような共通認識を持って、私どもは今後ソニーの製品を類似品の山に埋没するような製品ではない、際立った製品にしてまいります。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)

 次世代テレビ、つまりネットワーク接続型のテレビについては、私どもはいろんな経験を持っています。しっかり考えて進めていけば、例えばパナソニック、シャープ、サムソンと競合するだけではなく、ネットワークの分野のトップとも競争していくことができる、つまりはマイクロソフトなどと競争を展開していくことができるし、しなければならない。

 そして先行もしております。コンテンツ、テクノロジーを持っています。アップルでさえ、テレビのネットワーク化は成功していません。当社には、(テレビのネットワーク化に挑戦する)チャンスがある。今回のショックを生かして、その緊急感をさらに生かして(ネットワーク化の流れを)加速化させる必要があります。その結果として、より強い会社として、よりフォーカスの定まった会社として、再生できると考えます。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)

 「コスト削減それ自体が目的ではない」ということを申し上げます。今とろうとしている施策の狙い、「それは会社をより迅速に機敏にし、ダイナミックに競争力を高め、デジタルの時代に合ったネットワーク化された将来に合った会社に変えていこうということ」(です)。ネットワーク社会においてダイナミックな企業になれば、イノベーションも進めることができる、そして社員を鼓舞することによって現況から回復することができる。そしてソニーの収益性を持続的に回復させることができると考えます。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)

 ソニーは「保有するコンテンツをネットワークサービスを通じてテレビに出せる」というアドバンテージを持っています。数はまだ多くありませんが、米国では成功裏に進めております。ウィル・スミス主演の映画をケーブルテレビあるいは衛星放送ではなく、直接テレビに流すということもやっています。ネットワークサービスをもっと取り込んで、持続的にこの差異化を図る必要があります。これによって利益率も確保できるはずです。ただ、そのためにはもちろんテレビそのもののコスト削減も必要です。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)

 なぜ、これほどネットワークという言葉が出るのか。それは、今までのソニーの体制がバラバラだったからだ。ネットワークとは、ひとつになることであり、ソニーがひとつになれば、これほど強い会社はない。それは、ストリンガー会長の次の言葉に明確だ。
 「ソニーは多くの教訓を学んできた」と思います。私どもはもうハードウェア会社だけではないわけです。ソフトウェア会社でもあり、娯楽のエンターテインメント、ゲームの会社でもあると。そしてそのすべてを1つに統合することによって、素晴らしい力になるということです。

 ラスベガスのCESでジャーナリストから「ソニーのいくつもの要素が、実際に一緒に協力できるのか」と聞かれましたが、協力できます。その基礎 は、東京のハードウェアのエンジニアです。すべてのソニーの中の要素を1つに組み合わせて競争力を高めていく、それで日本の競合他社も、韓国勢とも、マイ クロソフトやアップルとも戦っていく機会は大いにあると思っています。

 世界は急速に変化していますが、これは我々にとってチャンスです。すべての要素を1つにまとめることができれば、我々は無敵になります。真珠の ネックレスのようなもので、1つ1つの真珠がしっかりつながっていることによって美しくなるわけです。「我々がネックレスになっているということがほかと違う」、差異化(できる)ということです。(Business Media 誠 過去最大の赤字から立ち直れるか——ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録)

 今年の春にソニーがわれわれにどんな驚きを与えてくれるかを期待したい。
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