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素人だから言えることもある

見えないものが見える(電脳コイルからファンタジー・バーチャルを考える)

 昨夜、久々に「BSアニメ夜話・電脳コイル」の再放送を見た(本編は未見)。電脳コイルとは、

時は202X年、今よりもちょっと未来。子供達の間で“電脳メガネ”が大流行していた。この“電脳メガネ”は、街のどこからでもネットに接続し様々な情報を表示する機能を備えた、子供たちになくてはならないアイテムだ。現代の携帯電話のように普及し、ほぼ全ての子供が持っている。舞台は由緒ある神社仏閣が建ち並ぶ古都でありながら、最新の電脳インフラを擁する地方都市「大黒市」。

小此木優子(おこのぎゆうこ)は、小学校最後の夏休みを目前に、父の仕事の都合で大黒市に引っ越すことになる。そこで出会ったのは、もう一人の“ユウコ”、天沢勇子(あまさわゆうこ)。同じ名前で同じ歳だが全くタイプの違う二人。新しい学校で個性豊かな子供たちと出会い、電脳空間で次々と巻き起こるフシギな出来事を体験する。(電脳コイル|磯光雄監督作品‐あらすじ‐ )

その中で登場する電脳メガネ。
子供たちの間で大流行しているウェアラブルコンピューター。「オバケが見える魔法のメガネ」として遊び道具として使われている。常にインターネットに接続していて、メガネをかけると慣れ親しんだ実際の街並みに、これをデータ化したバーチャルな街並みが重なって映し出される。メガネを使用するとゲームをしたり電脳ペットを飼ったりして電脳世界で遊ぶことができる。違法なソフトを使うと、メガネから光線を発射したりもできる。しかし、違法なソフトを使いすぎると、ウィルス駆除ソフトのサッチーにデータを消去される危険性が高くなる。(電脳コイル|磯光雄監督作品‐電脳メガネとは‐ )
 電脳メガネはバーチャル世界と、リアル世界の接点である。リアル世界に慣れた人に、バーチャル世界を言葉で説明するのは難しい。バーチャル世界は、体験した者でしか味わえない世界だからだ。だが、文明とはそういうものではないか。たとえば、テレビを見たことのない人にテレビを説明するより、直接見せた方がいい。パソコンを知らない人に、インターネットを説明することは難しいが、パソコンを覚えていくうちに、その仕組みがわかってくる。この、見えないものを見えるようにすることこそが文明なのではないだろうか。

 僕は、「夢物語(異文化文献録) 」でミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を引用してこう書いた。

「絶対にファンタージェンに行けない人間もいる。いるけれども、そのまま向こうに行きっきりになってしまう人間もいる。それからファンタージェンに行って、またもどってくる者もいくらかいるんだな。きみのようにね。そして、そういう人たちが、両方の世界を健やかにするんだ」(ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」岩波書店

(中略)

映画も音楽も演劇も小説も、すべての文化・文明は自らの「夢」を他人に伝えようとした者、言い換えれば、「夢」の世界から戻ってきた者によって作られているからだ。(「夢物語(異文化文献録)」)

 どのような芸術作品も、さらにはそれが積み重なって作られる私たちの文化・文明も必ず独りの発想者がいる。たとえば、今のケータイ文化にしても、グラハム・ベルの発明がなければ、まったく違った形になったかもしれない。僕は、「手塚治虫は「考える人」だった」にこう書いた。
手塚治虫の漫画に感動した者の何人かは漫画家を目指した。「鉄腕アトム」を読んだ人の何人かは、ロボット科学者を目指した。たとえば、ホンダのアシモ。実は、こんなエピソードがある。(手塚治虫は「考える人」だった)

 「世界最高のヒューマノイド(人間型ロボット)」と絶賛され、世界中から注目された「ASIMO(アシモ)」。二年前、自動車メーカーのホンダが発表したとき、安定した足どりと愛らしいデザインが、それまでのロボットのイメージを一新させた。CMやイベントへの出演依頼は今も相次ぐ。「生みの親」のホンダ上席研究員、広瀬真人さん(46)の開発までの軌跡を追った。

 「鉄腕アトムみたいなロボットを作ってくれ

 「えっ?」(RoboCup-2002 Fukuoka/Busan ASIMO 「アトム」への夢)

 「鉄腕アトム」は、アシモを開発した人たちの共通認識だった。また、冒頭の「BSアニメ夜話」でも、科学者の間で必ず参考になる映画や漫画がアイデアのきっかけになるという話題が出た。「ガンダム世代」「攻殻機動隊世代」「スター・ウォーズ世代」「2001年宇宙の旅世代」…、様々な映画や漫画から彼らの発想を促すヒントが作られている。彼らもまた「ファンタージェンに行って、またもどってくる者」であったのだ。作家の一片の妄想であっても、そのアイデアに共感した者がそれを現実化する。そうして、私たちは、これらのアイデアに刺激され、また独自の文明を作っていくのである

追記

電脳コイル」再放送が4/7からBS2で毎週火曜日に夜8時から放送
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