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素人だから言えることもある

麻倉氏の「ソニーらしさ」理論に異議あり!(ホームサーバの戦い・第26章)

ないものねだりの麻倉理論

 IT-PLUSにこんな記事が載っていた。
ストリンガー氏のソニー再建計画に異議あり!(麻倉怜士)

4月からソニー社長を兼任するハワード・ストリンガー現会長兼CEOが打ちだしたグループ構造改革と新経営体制で、ソニーの最大の武器である「ソニーらしさ」はどうなるのか、と私は問いたい。(麻倉怜士のニュースEYE

(中略)

従来、ソニーは独自の技術、独自のスタンダードを作り、それを世の中に広めてきたが、それではダメだという。ソニーの製品しか通用しない技術ではなくて、オープンな技術をサポートしなければならないとする。具体的な話でいうと、ソニー独自の「ATRAC3」ではなく、オープンな「MP3」を使ってウォークマンをつくるというようなことだ。

 CESの現場でストリンガー会長のスピーチを聞いた私は、日経BPの「Tech-On!」のCES特設ページにこう書いた。

 「筆者の考える『こうであってほしいソニー』は違う。圧倒的に凄い技術力をもって他を引き離し、孤高のフォーマットであっても、他社にぐうの音も言わせない“もの凄いもの”を作る。それこそがソニーではないか。他を突き放す、尖った技術をわれわれに見せつけて、感動を与えてほしい。ソニーにとって大事なのはサービスより『感動させる技術』である」

 確かに、麻倉氏は「ソニーの復活」を目指す熱烈なソニーファンだ。だから、こんなことをいうのかもしれない。
 サービスだけのソニー、オープンだけのソニーなど全くいらない。ユーザーはソニーにへなちょこなサービス、へなちょこなものづくり、へなちょこなITなんかは求めてないのである。ところが、このままではどんどんへなちょこになっていく予感がする。

 それは嫌だ。

 ソニーが今後のネットワーク時代において繁栄するためには、何といっても独自の提案力、独自の技術力、独自のものづくりの力、といったソニーならではの力の集積こそ必要だ。(ストリンガー氏のソニー再建計画に異議あり!(麻倉怜士))

 このような独自のシステムを作るには、膨大な技術の集積が必要である。そして、現在、金にならなくとも将来の商品のためにあらゆる技術や研究に過大な投資を続けなければ、顧客をあっと言わせる商品など作れはしない。ところが、今回の金融危機に見舞われた電機業界にはそんな余裕などないのである。しかも、ベンチャー企業と違って、ソニーは巨大すぎる。「イノベーションのジレンマ」とソニーでこう書いた。
2.小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない

 破壊的技術は、新しい市場を生み出すのが通常である。このような新しい市場に早い時期に参入した企業には、参入の遅れた企業に対して、先駆者として大幅な優位を保てることが実証されている。しかし、こういった企業が成功し成長すると、将来大規模になるはずの新しい小規模な市場に参入することがしだいに難しくなってくる。(「イノベーションのジレンマ」)

ソニーの例2

 ウォークマンは、カセットレコーダーから録音機能を除き、ステレオ機能とヘッドホンをつけるというアイデアから始まった。これは、創業者井深氏の特注であった。世界中にブレイクし、ウォークマン以外のほかのメーカーは偽者扱いされたほどだ。

 ところが、アップルのiPodがブレイクするとソニーは後追いすることすら難しかった。それは、ベータ事件でソフトの大切さを学んだために、SMEを抱えており、著作権問題に対応しなければ製品開発ができなかったからだ。巨大企業になれば、どれほどアイデアが優れていても目配りが必要になってくる。

 ソニーは、ハードとソフトを抱えている唯一の企業である。そのため、ハードに重点を置くのか、ソフトに重点を置くのかで大きく揺らぐことになる。

テレビ製造冬の時代

 パイオニアがテレビから撤退を表明したのは2008年3月だから、今回の金融危機とは関係ない。
パイオニアの決断--プラズマパネル生産から撤退、今秋には液晶テレビ参入も

しかし、2005年ごろから薄型テレビの価格競争が激化するとともに、市場シェアは減少。液晶テレビの大画面化もこの状況に拍車をかけた。須藤社長は「プラズマテレビに関しては、大規模な会社とは直接戦えない。商品の良さをお客様にわかっていただきながら行っていくという事業規模であった」と振り返る。

と2005年ごろから価格競争が起こっているという。薄型テレビの在庫が増え、新興国の低価格製品が量販店で売られている現在、薄型テレビはすっかりコモディティ化している。
コモディティ(英:commodity)化は、市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとっては何処のメーカーの品を購入しても大差ない状態のことである。なお英語の「commodity」は日用品程度の意味しかない。

これらには、幾つかの要因があるが、消費者にとっては商品選択の基準が販売価格(市場価格)の違いしかないことから市場原理の常としてメーカー側は「より安い商品」を投入するしかなくなり、結果的にそれら製品カテゴリーに属する製品の値段が安くなる傾向があり、反面企業にしてみれば価格競争で安く商品を提供せざるを得ず、結果的に儲け幅(商品として扱ううまみ)が減ることもあり、企業収益を圧迫する傾向がある。

こういったコモディティ化回避の企業戦略としては、付加価値の付与による多機能化など差別化戦略がある訳だが、過剰に機能を追加しても過剰性能で消費者にアピールできない場合もあり、ブランドイメージ戦略も各々のメーカーが同程度の力を注いでいる場合は並列化するまでの時間稼ぎにしかならず、差別化戦略にも限界が存在する。(コモディティ化Wikipedia)

それでも、この金融危機の中で、テレビを製造していくとすれば、製造現場は海外に逃げていくだろう。「元旦の夜、竹中氏が語ったこと」で引用したソニーの中鉢(前)社長の
通常の部品調達や人件費などの削減で収益改善できる範囲を超えており、このままでは国内で製造できる企業はなくなる」(米ゼロ金利で産業界悲鳴 日銀の協調利下げに期待)

という言葉の通りである。日本のどの企業も、テレビ製造で勝つことはできないだろう。

ホームサーバだけがソニー復活の道

 僕は、「コンテナー(入れ物)大国からコンテンツ(中身)大国へ変換するとき」で、
 レッド・オーシャンになると、機能よりも低価格を競うことになる。そうなると、人件費が安い低価格製品には勝てない。勝つためには、まったく違った未開拓の分野、つまりブルー・オーシャンを目指さなければならない。アメリカは、家電産業は手放したが、映画やテレビのコンテンツ産業はまだ健在だ。日本も今回の「おくりびと」「つみきのいえ」などのアカデミー賞受賞や、ノーベル賞の受賞など、個人個人のコンテンツは健在である。コンテンツの世界は、コンテナー産業のように大量生産はできないが、一人ひとり違ったブルー・オーシャンの世界である。
と書いた。アメリカが家電を手放したように、日本の家電産業もテレビは新興国の産業になってしまうかもしれない。ソニーは、ゲームにとらわれず、日本中から様々なコンテンツを集め、ハードとソフトをネットワークでつなぐ、ホームサーバで生きることがソニー復活の道ではないだろうか。
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