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素人だから言えることもある

人はなぜ、ダークサイドに惹かれてしまうのか・4

仲間と孤独

 前項「人はなぜ、ダークサイドに惹かれてしまうのか・3」で、「FF7」のティファとバレットの話をした。二人とも、家族を殺され、神羅に深い怒りを持っていた。つまり、彼らはすでにダークサイドの面に深く落ちていたのだ。その点では、ダインと同じである。
「俺はな、壊してしまいたいんだよ。この街の人間を。この街のすべてを。この世界のすべてを!この世界にはもう何もない。」仲間たちの過去2)
と自暴自棄になり、この世の中の全てを壊してしまいたいと考えたのだ。その点では、ダースベイダーやセフィロスと同じである。「人はなぜ、ダークサイドに惹かれてしまうのか」で
英雄たちは、自分の力ではどうしようもないことに怒り、憎しみを抱く。たとえば、セフィロスは、ニブルヘイムで自分の出生の秘密を知り、村を焼き払う。アナキン・スカイウォーカーは、母の死を予知夢で見てしまい、助けに行くが助けられず、怒りに駆られた彼は母を拉致したタスケン達を皆殺しにしてしまう。(セフィロス=ダース・ベイダー論)
と語ったように。彼らとティファやバレットと何が違うか。それは、彼らが孤独だったからだ自分の意見に共感したり、諌めたり慰めたりしてくれる仲間がいなかったからだ。もちろん、人にはそれぞれ違いがある。自分の執着に固執するあまり、仲間がいくら諌めてもそれを受け止めることができないこともある。

クラウドの人形としての過去

 まだ、その個人的怒りを仲間に語るキャラクターならいい。しかし、「FF7」のクラウドについては、これらのケースに当てはまらない。彼は人格崩壊までしてしまう。クラウドは幼馴染のティファの前に現れたとき、神羅のソルジャーという自分がなりたかったものに成れたと思い込んでいた。しかし、彼は一人の神羅兵に過ぎなかった。彼が自分を取り戻したとき、こんな発言がある。
クラウド「俺は元ソルジャーなんかじゃない」「みんなに話した5年前の出来事やソルジャーとしての話は俺自身が創り出した幻想だったんだ」「大見栄きって村を出たのにソルジャーになれなかった俺……」「それをはじた弱い俺は親友だったザックスから聞いた話……」「さらに自分で見たことをまぜあわせて幻想の自分を創り出した……」「そしてその自分を演じ続けていたんだ」

バレット「幻想かよ……そのわりには強かったじゃねえか」

クラウド「身体はソルジャーとほとんど同じなんだ」「宝条のセフィロス・コピー計画というのは何のことはない、ソルジャーを創るのと同じやり方でしかなかったんだ」「ソルジャーは魔晄をあびるだけじゃない」「実は、体内にジェノバ細胞をうめこまれた人間なんだ……」「良くも悪くも心が強い人間はソルジャーになる。ジェノバのリユニオンも関係ない」「でも、弱い人間は……俺のように簡単に自分を見失ってしまう」「ジェノバ細胞とセフィロスの強い意志。そして俺の弱い心が生み出した人間」「それがみんなが知っていた俺………クラウドだ」「……俺は幻想の世界の住人だった」「でも、もう幻想はいらない…… 俺は俺の現実を生きる」(希望1

面白いことに、ジェダイにおいてもこんな記述がある。
ジェダイになるためには、フォースを操るための資質と修行が必要で、誰でもなれるというわけではない。エピソード�では、生物の細胞中に含まれる共生生物ミディ=クロリアンの値がフォースの強さに影響を持つことが示唆されている。また、自身の精神的な修行も非常に重要である。フォースの能力を引き出す訓練はもちろん、自制心を養うための心身の鍛練、広い知識と洞察力を磨くことが求められる。
一般にフォースのライトサイド(光明面、light side)に仕えるものをジェダイと呼び、ダークサイド(暗黒面、dark side)に堕ちたジェダイをダーク・ジェダイ(Dark Jedi)と呼ぶ。ダーク・ジェダイの中でもシスと呼ばれるものたちはダークサイドによる銀河の支配という明確な理念を持っており、ジェダイとことあるごとに対決してきた。(ジェダイ−Wikipedia
 確かに、普通の人間にできないことができるようにするためには、当然、特殊な要件が必要なのは理解できるが。より強大な力を求めるために細胞から変化させて人間改造まで行くのかもしれない。

星痕症候群とダークサイド

 最近発売された「アドベントチルドレン」に星痕症候群という病気が登場する。
星痕症候群(Geostigma)

ライフストリーム(魔晄)を受けたものが発症する謎の病気(物語開始時は原因はわかっていない)。発病すると体の一部に黒いしみのようなあざができる。主に子供にかかりやすいとされる。発病中は痛みを伴うようだが、悪化すると死亡するのか、もしくはその他に後遺症があるのかは作中では特に触れられていない。


実際の発症原因は、ライフストリームに溶け込んでいたジェノバ因子を取り込んだ者が発症する、一種のアレルギー症状のようなもの。詳細としては、肉体を巡るライフストリームと同質の循環機構が、外的要因であるジェノバ因子を排出しようと免疫効果の過剰活発を促してしまう為、母体である人体に影響を与えてしまう症状。カダージュ達は星痕に侵された子供達をリユニオンのために誘拐し、セフィロスは星痕を宿した死者の思念によって侵蝕された星を宇宙を巡る船としようとしていた。最終的にエアリスの癒しの水によって(おそらくは思念に宿った物も含めて)全て消滅した。 (ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン−Wikipedia

 面白いのは、野島氏の小説「On the Way to a Smile-FINAL FANTASY �」で、クラウドやバレットがこの星痕症候群の病気を治すために奔走することだ。バレットは、ティファにこう言う。
奪うだけではなく、与えることもできると証明するんだ」。(野島一茂著「On the Way to a Smile-FINAL FANTASY 7」スクゥエア・エニックス)
 バレットは贖罪の気持ちに傾いていた。それはこんな発言からも伺える。
「おれはな、罪を償いたいんだ。そのために旅をしている。でも、いつまでたってもその方法がわからねえ。おれは多分、あんたが言ったとおりの男だ。そんな奴にできる償い方って、どんなだと思う?」

「まあ、罪の種類にもよるな」

「…おれのせいで数え切れないほどの人間が死んでしまった」

 バレットはアバランチの仲間たちと壱番魔晄炉を爆破した時のことを思った。予想を遥かに超えた被害、パニックになった街。死んでいった仲間たち…見知らぬ市民たち。 

 黙り込んでしまったバレットにボイラー係は言った。

「生き抜くしかねえよな。そりゃあよ。こうすれば償いになると思ったことを片っ端からやってみればいいんじゃないのか?」

「やっぱり、そうだよな…」

「モンスターの巣がわからなくても、ぶっ壊しに行くんだよ、あんたは。そのうちモンスターも消えちまう…おい、ほら!」

 ボイラー係はトラックの後方を指さした。小型の不気味なモンスターが追いかけて来ている。バレットはそのモンスターに右手の先を向け、狙いを定めることもなく撃つ。バリバリという、弾丸が連続して発射される音とともにモンスターの身体は砕け散った。

「すげえな…モンスターも災難だぜ」

 たいしたことじゃないと言おうとして相手の方を振り返ったバレットはボイラー係の視線が自分の右手に向けられていることに気づいた。ジュノンで出会った女と同じ目だった。

 モンスターは自分の方なのかもしれない。

モンスターの巣は、おれの中にあるのかもな

 ボイラー係は何も言ってはくれなかった。(野島一茂著「On the Way to a Smile-FINAL FANTASY 7」スクゥエア・エニックス)

 ところで、この星痕症候群、かかる人間とかからない人間がいることがみつかった。
「ねえ、ユフィ。気づいたことがあるんだけど…」とユーリが言った。

「おれ、考えたんだ。病気にかかる人とそうじゃない人がいるのはどうしてだろう、って」

「何かわかったの?」

うん、ここにいる人たち、前から別の病気で苦しんでいた人と、ライフストリームを浴びて大怪我をした人だよ。つまり、自分はもう死ぬんだって思った人」(野島一茂著「On the Way to a Smile-FINAL FANTASY 7」スクゥエア・エニックス)

 しかも、メテオの後、ライフストリームが井戸水に何か影響を与えたらしい。そういえば、クラウドもライフストリーム(魔晄)を浴びて人格崩壊を起こしたではないか。

 別の場所で医者のキルミスターが神羅カンパニー社長のルーファウスにこんなことを言う。

「後発組の患者の中には、黒く染まった水を見たものが多い。何も気づいていない者でも、もしかしたら、知らないうちに浴びたか、飲んだかした可能性が高いとわたしは思っている。何しろ相手は水だ。その気になれば、どこへでも入り込むことができる」

「その気になればとは?」

 ルーファウスはキルミスターの言い方が気になった。

患者の痛みや熱は、身体が体内に入り込んだ異物と戦っている証拠だ。他の病気に比べると、かなり過剰だと思うが、相手が相手だから仕方がない

「相手の正体はわかっているのか?」

「…セフィロス因子、あるいはジェノバの遺伝子、いや遺伝思念とでも呼ぶべきか…いつか話した通り、ソルジャーの心身に見られる特徴と、かなり似ている」(野島一茂著「On the Way to a Smile-FINAL FANTASY 7」スクゥエア・エニックス)

 さて、この星痕症候群は、「アドベントチルドレン」で、無事治療されるのだが、ダークサイドに落ちたセフィロスが自分の仲間を集めるためにダークサイドに招きいれようとしているように見えてならない。しかも、自暴自棄になっていたり、弱気になっている人間には完璧にかかってしまうだろう。ダークサイドは、人間の弱さに入り込んでしまう性格を持っている。そのダークサイドから抜け出すには、仲間を作ってお互いに手を差し伸べるしか方法はないとこの物語は示しているのではないだろうか。「アドベントチルドレン」のラストにクラウドは言う。「ひとりじゃない」と。
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