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素人だから言えることもある

アップル、iPhone・iPodで携帯ゲーム機戦争参加を宣言?(ホームサーバの戦い・第36章)

アップルの発表会から

 9月9日、アップルのスティーブ・ジョブズCEOが登場しての新iPod発表会が行われた。そこで、携帯ゲーム機のPSPとDSについてiPhoneiPod touchとの比較が語られた。
特にゲームについてはPSPニンテンドーDSを例に、「これらが出たときにはクールだと思ったが、一旦iPod touchでゲームをすると、他のゲームの価格が高く感じる」とする。その購入方法についても、お店に行ってゲームを買ったとしても、それはあまり面白くない。iPod touchApp Storeで買う経験はブレイクスルーだ」とした。他のプラットフォームとゲーム/エンターテインメントの作品数を比較したグラフも示し、「PSPが607タイトル、DSが3,680タイトル、そしてiPhone OSが21,178タイトル」とその差をアピールした。(“音楽が好き”から生まれた新iPod。復帰のジョブズCEO−新iPod nanoで「ポケットにビデオカメラ」)
 もちろん、パッケージメディア中心の携帯ゲーム機と、ダウンロードコンテンツのみのiPhoneiPod touchでは、単純に比較しても仕方がないが、これからゲームがその方向に向かうであろうことは考えておかなくてはなるまい。

アメリカのiPhoneにワンセグ機能がない理由

 日本では携帯電話にワンセグ放送が当たり前なので、ソフトバンクがiPhone専用の対応機器を発表しているが、アメリカではワンセグ放送が行われていない。「誰も語らない地デジの歴史」で各国の地デジの放送形式を取り上げたが、ここで海外のワンセグ放送の実態を取り上げてみる。
日本以外の地域でも移動体向けの地上デジタルテレビ放送が始まりつつあり大きく分けて日本方式(ワンセグ:ISDB-Tの部分受信)、欧州方式(DVB-H)、韓国方式(T-DMB)の3方式がある。このうち、セグメントの部分受信という方式を採っているのは日本方式だけである。この日本方式では、ブラジルが2007年後半に、いくつかの都市圏から放送サービスが始まった。ただし、使用周波数が806MHz(日本は470および770MHz)、毎秒フレーム数が30fps(日本は15fps)と、システムの相違が見られる。他には、ペルーでも日本方式の地上波デジタル放送システム導入が決定し、ワンセグ放送開始への可能性が開けた。

なおワンセグはテレビ放送の部分受信というその方式上、少ない基地局で欧州方式や韓国方式に比べて圧倒的に広い地域に放送することができる。ただし比較的低い周波数帯域においてかつ狭い帯域を利用しなければならないために、他方式に比べて画質が劣る。(ワンセグ-Wikipedia世界の移動体向けテレビ放送の動向)

 このブラジルとペルーについては、毎日新聞に載っていた。それは総務省の官僚が南米にセールスをしたためだという。
 日本方式の国際標準承認は00年で、日本での放送開始は03年。アナログでのハイビジョン放送の技術開発にこだわった分だけ出遅れた。そんな日本が狙いを定めた先が南米だった。嫌米の政治的な土壌に加え、植民地時代の旧宗主国である欧州の方式採用も避けたいという思惑もあり、空白地帯が広がっている。

 日本方式の技術的な優位性も後押しする。同一の周波数帯でテレビ向けと携帯端末へのワンセグ放送ができるために経済的で、移動中でも高画質のハイビジョン放送の受信が可能なのは日本方式だけ。山かげなどの電波障害にも強く、山がちな南米各国に適している。

 06年、電波の送り出しの基本部分にかかわる特許料支払いを免除する「特典供与」でブラジルを口説き落とし、07年には当時の菅義偉総務相と家電メーカー役員らがアルゼンチンなど各国でトップセールスを展開した

 総務省の担当者は試験放送に駆け回った。走らせた車の中でワンセグにサッカーを映す。国民的スポーツを手のひらの上でいつでも楽しめる日本方式の評価が高まった。チリ、アルゼンチンでは、サッカーのワールドカップ南アフリカ大会が開幕する10年6月までの放送開始に期待が膨らむ。「ベネズエラでは野球を見せます」と担当者は意気込む。

 ただ日本の家電メーカーは市場規模の小ささを理由に南米への本格的な進出には慎重姿勢だ。すでに放送が開始されているブラジルでは、自国では米国方式を採用する韓国のメーカーが日本方式の地デジ対応テレビを開発。ウォン安を背景に大幅に値引きをして売れているという。南米での日本方式の普及は存在感の誇示には役立っているが、今のところ商売に結びつけるのは難しいようだ。(毎日新聞9月9日知りたい!:南米の地デジ、次々日本式に)

 面白いのは、官僚と民間の熱意の違いだ。役割を与えれば、有能な働きをする証拠である。

WALKMAN vs iPodPSP go vs iPod

 WALKMANiPodの売り上げが逆転したという記事があった。
携帯オーディオ市場では、販売台数の週次シェアで、アップルが242週ぶりに2位に転落した。替わりにソニーが首位を獲得し、累計の販売台数と販売金額のシェアも徐々に縮めているという。ソニーは、1万円台前半で購入できる「WALKMAN S」シリーズを主力として順調に売り上げを伸ばしているとしている。また、家で音楽を聴くユーザー向けにスピーカーをセットにして販売したことも要因として挙げている。(携帯オーディオ:WALKMAN、約5年ぶりにiPodを破ってトップに--BCN調べ)
昨日のWBSの放送によれば、「WALKMANは音がいいから」という客の声があった。放送では単機能か多機能かというテーマで取り上げられていた。ともかく、ソニーは、音楽に特化したWALKMANとゲームに特化したPSPでアップルを追いかけて行くのだと思う。そのためにダウンロードのみに特化したPSP goが出てきたのではないだろうか。

 僕は、「PSP goの隠された使命(ホームサーバの戦い・第29章) 」で引用した久夛良木健氏(現ソニー・コンピュータエンタテインメント名誉会長)の言葉を思い出す。

久夛良木氏】 Microsoftよりは直接ビジョンが近いのはAppleだね。でも、競合よりというより、同じところにいて逆に楽しい。

【Q】 でもPS3がコンピュータなら、将来のApple製品と実際に家庭で競合するようになる可能性があるのでは。

久夛良木氏】 確かに、今の時点では競合していないけど、将来はわからない。2007、8年になって、AppleIntelとコラボレーションしている成果が花開いて来ると、当然、狙うのは音楽プレーヤーだけではないだろうから。

【Q】 家庭のエンターテイメントコンピュータという領域でぶつかるかもしれない。

久夛良木氏】 うん。ジョブズ氏は、きっとコンピュータが好きなんだと思う。すると、ビジョンが自然に重なる。(後藤弘茂のWeekly海外ニュースビジネスモデルを変革するためのPS3の価格戦略〜SCEI 久夛良木健氏インタビュー(2) )

 このインタビューした後藤氏は、PSP goの役目はiPhoneに対抗するためだという。
 PSP goは、今後のSCEの携帯ゲーム機戦略の方向性を反映していると推定される。つまり、PSP2世代への橋渡しとなる戦略的デバイス&サービスがPSP goだと推測される。

 PSP goに見えるSCEの携帯ゲーム機戦略は明瞭だ。それは、ゲームプラットフォームとして台頭してきたiPhoneなどに対抗することだ。そのため、PSP goでは、16GBと大容量のNANDフラッシュメモリを内蔵し、その一方で光学ディスクUMDドライブを外し、ダウンロード型のコンテンツ配信モデルを取った。

 筐体サイズと重量をiPhone並に削減して、コントローラ部分はスライドに収納できるコンパクトなものにした。フォームファクタとビジネスモデルを携帯電話に近づけたのがPSP goだ。SCEは、この改革を「デジタルコンシューマ」、つまり、デジタルコンテンツをダウンロードすることに慣れたユーザー層のライフスタイルに対応したものだと説明した。(後藤弘茂のWeekly海外ニュース 次世代PSP2までの長期戦略が見えるSCEの「PSP go」)

 こうして考えていけば、ジョブズCEOがわざわざ携帯ゲーム機を出してきた意味がわかってくる。日本の携帯電話は、ローカルだが、世界規模で展開しているホームサーバ端末は、マイクロソフト任天堂、ソニー、アップルの4社しかないGoogleはアンドロイドOSを使って世界の携帯電話会社に乗り込むという、いささか斜め路線である。マイクロソフトは、モバイル系は不得意である。つまり、アップルの競争相手は任天堂とソニーに絞られる。この二社を負かせば、世界のホームサーバの携帯部門はアップルが手に入れることになるのだ。
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