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素人だから言えることもある

転がりだしたら止まらない

カンフル剤でやっと保っている日本経済

 現在、売れている製品といえば、ユニクロやドン・キホーテの海外製造の衣料品か、エコ・ポイント付の家電品、エコカー減税・補助金付のエコカーなどの、麻生政府の残した景気対策であり、これは来年には終わってしまうといわれる。鳩山政権では、まだマニフェスト財源探しの段階で、景気対策の話はまだない。ようやく、緊急雇用対策が決められたくらいだ。
 また、失業率5.5%というと、欧米の10%近い失業率を思えば、少ないと思うかもしれないが、これもあくまで雇用調整助成金で企業内失業者を隠しているに過ぎない。同一労働同一賃金の道(福祉と政治・2)で引用した早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の野口悠紀雄氏の記事では、
企業内の潜在的な失業者は経済全体で528〜607万人に達する。製造業では328〜369万人である。白書はこれを「雇用保蔵」と呼んでいるが、実態的には、企業の過剰雇用者、すなわち企業内の失業者だと考えることができる
(中略)
 現在、雇用調整助成金の需給申請者数は、240万人程度となっている。これは、企業が実際に過剰と認定し、休職扱いにしている労働者数だ。白書の推計は、その2.5倍程度の労働者が企業内で過剰になっていることを示しているのである。
 全産業の雇用保蔵607万人は、労働力人口(6689万人)の9%程度に相当する。したがって、これらの労働者が実際に失業すれば、日本の失業率は14%程度という未曾有の水準になるわけだ。(ダイヤモンドオンライン日本の潜在的失業率は14%!その解決にまったく役立たない各党の雇用政策
 つまり、雇用調整助成金というカンフル剤で何とか失業率5.5%に見せているに過ぎない。これでは、貧困の実態がわからない。それで登場したのが、貧困率だ。というのは、「一億層中流化」の幻想が広まり、「日本には貧困がない」というのが大多数だからだ。
 反貧困ネットワーク湯浅誠事務局長によると、日本の貧困率の高さは、非正規雇用の増加のほか、高齢者や単身世帯の多さも原因になっている。昨年秋からの景気悪化もあって、生活苦の相談は昨年同時期に比べ、約3倍に上っており、一般の家庭にも生活苦が広がっているという。
 湯浅氏は「国が貧困率の削減目標をたて、雇用、住宅、教育などの面で総合的に支援していかなければ、問題は解決しない。所得税や社会保険料など税制全体を見直すことで貧困層の生活を底上げし、中間層を増やしていくことが必要だ」と話している。(読売新聞10月21日「大学行きたい、修学旅行行けない…貧困率15%」)
 緊急雇用対策に、この湯浅氏の「雇用、住宅、教育などの面で総合的に支援」の提言を受けて作られたと思われるハローワークのワンストップサービスがある。
 政府が23日に公表する「緊急雇用対策」の原案が21日、明らかになった。ハローワークで職業紹介や生活支援など複数の手続きができるワンストップ・サービスを11月から始めるほか、働きながら介護資格などが取れる就業支援制度を設ける。雇用情勢に改善の兆しが見えないなかで、「年越し派遣村」の再来を防ぐ狙いがある。
 ワンストップ・サービスは11月下旬から、東京、大阪、愛知など都市部のハローワークで実施する。自治体の福祉窓口や社会福祉協議会の職員にも加わってもらい、職業紹介のほかに、当座の生活資金の貸し付けや、住宅手当を支給する制度の申し込みなどをできるようにする。利用状況をみて対象施設や実施日の拡充も検討する。(朝日新聞10月22日雇用支援手続き、ワンストップ・サービスで 対策原案)
 確かに、ハローワークに「雇用、住宅、教育」の窓口があれば便利だろう。ところが、ハローワークにも「官製ワーキングプア」の問題があり、かなりの非正規職員が入っているという実態が、湯浅氏も出演したNHK「そりゃあんまりだ!」で明らかになった。おそらく、当初は、混乱が起こるかもしれない。

二番底が起こったら

 これらの対策は、結局、対症療法に過ぎない。根本的な解決につながらないからだ。民主党の政策で気になるのは、「子どもは親のものか、社会のものか」でとりあげた「子ども手当」のように、明らかにスウェーデンなどの、北欧的な(つまり、社会民主党的な)福祉政策なのに、その根幹である「同一労働・同一賃金」に触れようとしないことだ。ここを通過しない限り、決して日本は浮上しない。なぜなら、これからは正社員がほとんど増えなくなるからだ。正社員と非正規社員の間に明らかに二重構造があるのに、それを見過ごしていたら、非正規社員は永久に『かわいそうな人』で終わってしまう。人間としての誇りを持たせるためには、同格になる必要があるのだ。しかも、湯浅氏が「そりゃあんまりだ!」で言った「周辺的正社員」が代わりに増えているという。
名ばかり正社員(なばかりせいしゃいん)とは、非正規雇用とあまり変わらない労働条件・環境で雇われた、正社員の事周辺的正社員、なんちゃって正社員とも呼ばれる。賃金については低賃金であり、定期昇給やボーナスの両方かいずれかがなく、中には最低賃金以下となるケースもある。(正社員-Wikipedia)
 これから非正規社員・周辺的正社員しか就職先がなくなったとき、果たして、製造業原則派遣禁止を実現できるだろうか。正社員が多いうちには、なかなか言えないことでも、非正規が圧倒的になれば、今まで見えていなかったことも見えてくることがある。私たちは、永遠の坂道を下っている。ともかく、雇用についても転がりだしたら止まらないのである。
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