夢幻∞大のドリーミングメディア

素人だから言えることもある

iPadはブルー・オーシャンか(ホームサーバの戦い・第55章)

独占=ブルー・オーシャン/競争=レッド・オーシャン

 マスメディアの「マス」が消えるときで引用した
誰もが発言できるということは誰も発言する権利を独占していないことだ。市場に例えれば、旧来のジャーナリズムは独占市場で、ブログは競争市場だ。なぜ新聞社がネットに対応できないのか。それは独占企業にとっての最適戦略は競争的な市場では機能しないからだ。

(中略)

では独占企業にとっての戦略とは何か。それは値段を上げるために供給を減らすことだ。学生が授業にくるようにプリントには全ての授業内容を載せないことだ。他に聞きにいく場所のない学生はクラスにいくしかない。

しかし、競争がある市場で同じことをしたら自殺行為だ。競争相手が価格を下げてシェアを奪ってしまう。競争的な市場ではいかに必要とされている財を提示し、それに応じたプレミアムをチャージするかが重要だ。単に価格を上げたら客は逃げる。(なぜ誰もあなたのブログを読んでくれないか

を改めて読み返すと、なぜかブルー・オーシャンの話を思い出した。この競争相手が価格を下げてシェアを奪ってしまうということがレッド・オーシャンのイメージを喚起したのである。最近のジーパンの安値戦争や牛丼戦争のように。
競合他社と価格や機能で血みどろの戦いを繰り広げなければならない既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海)」,競争自体がない未開拓の市場を「ブルー・オーシャン(青い海)」と呼んでいる。(「他社とは違う土俵で勝つ」ためのブルー・オーシャン戦略)(アップル・ソニー・任天堂のテレビとの距離感(ホームサーバの戦い・第54章
 ブルー・オーシャンはいわば独占市場なので、自由に価格を決められる。レッド・オーシャンになれば、価格競争に放り込まれる。マスメディアが独占市場とすれば、わざわざ自分たちのメリットを捨ててまで、レッド・オーシャンであるインターネットに飛び込むわけがない。ところが、アメリカでは、現実に新聞社がつぶれ、テレビがつぶれているという。それは何を意味するか。流通スタイルが完全に変わりつつあるのだ。

iPhoneはブルー・オーシャンではなかったが

 「iPhoneとブルー・オーシャン」で、引用した「iPhoneの可能性」で、
まず調べて分かったのはiPhoneユーザーの90%が競合製品から乗り換えた人で、競合製品を持っていなくてiPhoneを新たに買った人は10%しかいませんでした。やはり今のiPhoneレッドオーシャンの製品です。

それでなぜレッドオーシャンの製品になってしまったのかを考えると、そもそもレッドオーシャンの製品として作ったからだと思います。iPhoneの製品発表でも”iPhoneスマートフォンとMP3が一つになった製品”として紹介しています。既存のスマートフォン、MP3よりも優れた製品として評価されたので競合製品から乗り換える人はたくさんいて話題になりましたが、一方で全く新しい製品カテゴリー・バリューを提案してはいないのです。これでは新たなマーケットを作り出すことはできないはずです。(iPhoneの可能性)

としているが、一方で
モバイルインターネットの時代はこれから来るだろうし、この代名詞となる製品にiPhoneがなる可能性はあると思います。スマートフォン市場の30%を取ったということよりももっと大きなインパクトを与えられる可能性があり、この時代のWalkmanのようなポジションになりえるのです。(iPhoneの可能性)
 iPhoneは確かにスマートフォンの一つに過ぎないかもしれない。だが、電子書籍を組み合わせたiPadが単なる電子書籍リーダーを飛び越え、ブルー・オーシャンを開く可能性はある。そして、それはマスメディアの命運を握っている。

ブルー・オーシャンの条件はユーザーの声を聞かないこと

 それなら、ブルー・オーシャンになる条件とはなにか。「私たちは、インターネットで引き起こされたパラダイムシフトの真っ只中にいる」でこんな言葉を引用した。
これは戦後の日本企業がやってきたことと同じです。ソニーは安かろう、悪かろうの日本製品を一流にしたいと考えました。このときに微細化技術を使えばブルー・オーシャンに行き着くだろうなどとは考えなかったはずです。何も制約のないところで、進んで行ったらブルー・オーシャンに行き着いたのです。

大切なのは決定論ではないところです。決定論に縛られると、「ウチにはこのようなリソースがないからやめよう」「やったことが無いからリスクが高い」と考えるわけです。もちろんこれらは間違いではありません。しかし、これではイノベーションが生まれて来ないのです。(ブルー・オーシャン戦略の本質

一方、Wiiというのは高齢者まで楽しめるものになっています。それゆえに不要とは言わないけれども、あえてそのハイスペック仕様に背を向けたことが、成功要因になっているわけです

そうすると、携帯電話の機能をおさえたものとどこが違うのかと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。Wiiはプレイステーションとは違うところに解がある、ということを見つける作業過程が違うのです。具体的にいえば、Wiiはノンカスタマーの声を聞きました。ここがキーになっていたと思います。(ヒット商品は戦略ミスから生まれる

 また、北京オリンピックで話題になったレーザー・レーサーの水着についても
 これまで水着の開発は選手の着心地と動きやすさを重視してきたが、LRは選手の締め付け力を重視する。これまでの10倍の締め付け力があるという。

 イノベーションのきっかけはNASAとの共同研究。当初は摩擦の小さな生地の開発を依頼、100種に及ぶ生地を持ち込んだ。

ランスとNASAの研究担当者が昼、スパゲティを食べていて、NASAの研究者がふと呟く。「茹でる前の硬いスパゲティの方が、茹でた柔らかいスパゲティより、水の抵抗が少ない」体を締め付けることで水の抵抗を下げるアイデアが生まれた瞬間だ。


(中略)

 逆に教訓もある。(1)自社の外に自社の人間より優れた人たちがいる、(2)客の言うことを聞いていてはイノベーションは起こらない、(3)イノベーションのキーは専門知識ではない。(レーザー・レーサーはオープン・イノベーションの典型例だ(なお、すでにリンクは切れている)

 これをまとめると、こうなる。iPadは、出版社や新聞社の声を聞いて作ってないから成功する。かつて日本で作られた電子ブックリーダーがみんな失敗したのは、出版社の言う事を聞いたからである。最近、出版社が集まってまるで尊皇攘夷派のように黒船を迎え撃つ算段をしているが、敵は決してアップルやアマゾンのアメリカ陣営ではない。読者にとって本当に安く読みやすいシステムを築き上げた方が勝ちなのである。
ブログパーツ