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素人だから言えることもある

ジョブズ氏と孫氏の2015年・クラウド革命の違いはどこにあるか(ホームサーバの戦い・第62章)

5月13日の巌流島の決闘?

 5月13日、ソフトバンク本社でソフトバンクの孫社長とITジャーナリストの佐々木俊尚氏の「光の道は必要か?」というタイトルの対談があった。
 今回の対談は、ニュースサイト「CNET Japan」に佐々木氏が執筆中のブログにおいて、「ソフトバンクの『光の道』論に全面反論する」というコラムを掲載したことがきっかけ。これを読んだ孫社長Twitterで「佐々木さん、日本の将来の為何を成すべきか一度語り合いましょうか」とつぶやくと、佐々木氏も「オープンな場所でお願いします。」と返答。これに、「ケツダンポトフ」でおなじみのそらの氏が、Ustreamで生中継したいと申し入れ、対談の“ダダ漏れ”が実現した。(孫正義社長の「光の道」論、5時間にわたり炸裂、Ustreamなどで生中継 「国費ゼロで実現可能か」佐々木俊尚氏と討論)
 この「ソフトバンクの『光の道』論に全面反論する」()については、読んでいただくとして、この対談の1時間前、孫社長は、
小次郎殿との巌流島まであと1時間。気合い入れの瞑想。@sasakitoshinao「光の道」討論。UST配信→ http://ustre.am/bNTj #hikari_road(http://twitter.com/masason/status/13905000834)
とつぶやいている。佐々木氏を同じ苗字の佐々木小次郎になぞらえ、孫氏本人は宮本武蔵の気分なのだろう。それは、最初の挨拶から
ちゃんとあの約束通り遅れて参りました。ははははは。(【書き起こし.com】孫vs佐々木対談「光の道は必要か?」1 孫正義プレゼン)
という言葉に表れている。一方、佐々木氏は
佐々木小次郎呼ばわりはやめていただきたかった(孫正義×佐々木俊尚「光の道討論会」で感情が漏れた瞬間の発言集)
と憮然とした雰囲気。巌流島で武蔵は遅れ、「小次郎敗れたり」というエピソードを思い出す。

 対談は、5時間にわたり、「光の道」伝道師である孫社長の勢いにすっかり飲まれた感じ。やはり、対談で「光の道」教会のホームグラウンド・ソフトバンク本社で、伝道師の説教を聴いていては、反論などできようもない。さかんに国費ゼロを強調する孫社長とインフラ整備よりもプラットホームをと強調する佐々木氏では、かみ合わなかった部分も多かった。そもそも「光の道」構想はNTTが自分の回線を解放しなければ成り立たないものだが、NTT関係者が対談に絡まない限りは、話が発展していくはずがない。

 その中から気になった部分も。孫社長は、プラットフォームとして電子教科書と電子カルテの話が出た。確かに、図で見る限り、iPadのようなタブレットPCである。これをすべての学生に1台2万円程度で配るという。それなら、iPadでよさそうなものだが、オープンソースAndroidの話が出た。おそらく、アップルはオープンソースでないから電子教科書に向いていないと思っているのだろう。つまり、電子教科書の管理をアップルに握られてはたまらないと思っているのか。

:僕が言っているのは、2015年までに、原口大臣が光100%にしたいというビジョンを出したと。もし2015年までに光が100%繋がるという前提になるのであれば、2015年までに、その教材クラウドも並行して積み上げて行って、2015年までに電子教科書も並行して1台2万円でできる電子教科書を並行して作りにいって、それを1800万人の学生に配るという計画を5年間で並行してやると。

佐々木:そのアプリケーションはちなみに誰が開発するんですか?

:それはクラウドとして、例えば、例えばの例ですよ。Androidオープンソースですよ。僕は、政府が主導して、また特殊な大きなキーボードとか、さっきの老人向けの大きなトラックボールにするとか、絶対反対。老人向けの特別なブラウザを政府の金で、国民の税金で作るのは絶対に反対。そんなものはうまくいったためしがない。そうではなくて、世界にある、無料で使えるオープソースのOSがある。

佐々木Androidのことですか?

Android。例えば。ね。Android 以外にもいくつか選択肢があってもいいと思います。例えばのひとつの例でいえば、Androidの上に、そういうようなオープソースのAndroidの上に、教科書、教材のようなアプリは、これから5年間というスパンで見れば、続々と増えますよ。ですから、そういう形で、クラウドが進み、教材が進み、並行してやればいいんですよ。(【書き起こし.com】孫vs佐々木対談「光の道は必要か?」3-2 フリー討論)

2015年のクラウドは無線か光か

 この引用の中の言葉、
もし2015年までに光が100%繋がるという前提になるのであれば、2015年までに、その教材クラウドも並行して積み上げて行って、2015年までに電子教科書も並行して1台2万円でできる電子教科書を並行して作りにいって、それを1800万人の学生に配るという計画を5年間で並行してやると。」(【書き起こし.com】孫vs佐々木対談「光の道は必要か?」3-2 フリー討論)
を聴いて、同じ2015年をテーマにしたSteve Jobsの2015年のiPad考(ホームサーバの戦い・第59章)の中の言葉を思い出した。
2015 年までの間に自らを全く異なるタイプの企業に変えることが出来なければ、アップルの命運は他の PC 産業と同じく、取り残された存在[irrelevance]と化してしまう。ぎりぎりの予算で取るに足らない利益を追求する、コモディティー部品を組み立てるだけの、どれをとっても変わらないサプライヤーのひとつに堕してしまうのだ。(Steve Jobs が Flash を嫌う本当の理由)
 いわば、ソフトバンクが2015年までに電子教科書や電子カルテのシェアを奪い取らなければ、他のインフラ業者と同じ立場に落ちてしまうと思っているかのように。孫社長が「光の道」なら、ジョブズ氏は無線を念頭においているように見える。
もしアナタが 2015 年に iPad を使っているとしたら、自宅にブロードバンドを引くことなぞ意に介さないだろう。どこにいても必要なときデータを得ることができるからだ。バックアップに気を使うこともなくなる。データは常にアップルのクラウドに保存されているからだ。ソフトウェアアップデートも気にしなくていい。すべてはバックグラウンドで自動的に処理されるからだ。面倒なこともないし、ワームやウイルスも、マルウェアも侵入しない。そうなるためには、ネットブック好きのマイクロソフト愛好者より余計なカネがかかるのは当然だ。(Steve Jobs が Flash を嫌う本当の理由)
 アップルはメーカーなので、インフラ整備はそれぞれの地元のキャリアに委託しなければならない。地元のキャリアが無線に力を入れようと、有線である「光の道」に力を入れようとアップルには関係のないことだ。しかし、アップルのクラウド革命が無線の方向を見ているのは、アップルがそれぞれのキャリアの都合に影響されたくないと思っている証拠である。その典型が、今回のiPadの「simロック問題」である。孫社長が、あえて「光の道」を目指しているのは、NTTに比べてソフトバンクの条件の厳しさがあるからだ。
我々が今作っている基地局の数は6万局を超えていて、auさんの倍です。ドコモさんが7万局ぐらい。ドコモさんとauさんは800MHzという一番電波が到達しやすいものを持っている。4倍届くんです。電波のカバーエリアが。1個鉄塔の基地局を建てるとカバーエリアが4倍広いんです。だから壁の中も浸透できるんです。
我々が許認可を得ているのは800MHzという一番重要な周波数帯はビタ一文貰えていないんです。
もちろん我々がボーダフォンジャパンを買収した段階から持っていなかったわけですから、過去を非難しているんではないんです。まだ我々は少なくても公平な競争環境下に置かれていない、という認識なんです。
ですから持っていない武器が電波という武器、持っている武器が新しい端末という武器がある。
ですからどうしても我々がハンディキャップを背負っている部分は別の武器で戦わないとならない。(【書き起こし.com】孫vs佐々木対談「光の道は必要か?」4 質疑応答)
 もし、これがNTTと同条件であったら、simロックはフリーになっていたかもしれないし、そもそも「光の道」構想もなくなり、アップルと同じく無線を選んでいたかもしれない。原口大臣なぜiPadが売り出されるこの時期に「光の道」構想をぶち上げたのか。そして、孫社長iPadをsimロックにしてまで、「光の道」伝道師となったのか。それも、ジョブズ氏と同じく2015年を目標に。
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