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朝日新聞は、今、何を考えているか(ホームサーバの戦い・第67章)

サッカー・デンマーク戦を前にして、佐々木氏のTweetを読む

 6月24日の夜、佐々木氏のTweetを読んでいると
朝日新聞のWEBRONZAっていうのがスタートして私も執筆者に入ってるんだけど、ここ原稿料が1本1万円。おまけに月に何本書いても上限は2万円。有料サイトとしてこういう原稿料の設定ってどうなんだろう。ちょっと微妙な感じ。(http://twitter.com/sasakitoshinao/status/16925186704)
 どうやら朝日新聞で有料サイトを始めたらしい。そこでWEBRONZAを見てみる。創刊の辞を書いた一色清氏は、
紙の新聞や本は、電子の世界に敗れていずれ消え去る存在なのかどうか、分かりません。
混迷の時代に、私たちは「分からないこと」への回答を提示したい、と思います。回答までは無理だとしても、「分かるため」の道しるべを提供したいと思います。
そのために、各分野の気鋭の論者を集め、素早く自由にラジカルにニュースを読み解く場をウェブ上に作りました。それを「WEBRONZA(ウェブロンザ)」と名付けました。このサイトが、みなさまの仕事のために、学問のために、そして何より、「分からない」時代を生き抜くために役立つ空間となることを、わたしたちは信じています。(朝日新聞社×シノドス共催 WEBRONZA創刊記念シンポジウム)
そういえば「論座」と言う雑誌があった。
「月刊Asahi」の事実上の後継誌であったが、1994年12月20日、「週刊朝日増刊Ronza創刊準備号」として発刊された。1995年3月6日に「RONZA」の表題で同年4月号として創刊された。編集長は薬師寺克行。創刊当初の1995年には月平均約3万7000部ほどの売上を記録した。新機軸を打ち出す意図からB5版の週刊誌サイズであったが、そのために書店では他社の論壇誌・文芸誌と同じ棚に並べてもらえないなど目論見がはずれ、次第に売上が低迷。このため1997年8月発売の同年9月10月合併号をもってリニューアルし、1997年11月号から「論座」と改名、大きさも月刊論壇誌サイズのA5版となった。記事内容を「朝日新聞」誌上で後追い紹介するなど宣伝にも努めたが、リベラル・左派論壇自体の低迷も重なり、ついに創刊当初の売上を回復することなく2008年9月1日発売の同年10月号をもって休刊した。(論座-Wikipedia)
 このWEBRONZAについて経済学者の池田信夫氏は、
論壇誌は、紙の世界では絶滅危惧種です。『論座』も含めて、左右の論壇誌はほぼ全滅で、あとは『正論』と『VOICE』と『世界』が、赤字を垂れ流しながら版元の意地で続いているだけです。こうした雑誌がだめなのは、冷戦時代の「保守」と「革新」の軸の上で同じパターンの論争を続けてきたためです(VOICEは少し違いますが)。

実は右派系論壇誌の編集者も、保守イデオロギーは信じていない。ある編集者は「私も家では朝日新聞を取っているが、あれと同じことは新聞でいくらでも読める。金をはらってもらうためには、新聞で読めない特殊な意見でないとだめだ」と言っていました。高齢者の世界では「大東亜戦争は正しかった」みたいな感情論は一定の固定読者がありましたが、『論座』のような建て前論は市場がない。

この観点からいうと、残念ながら一色さんのような中道左派的な意見は「報道ステーション」で毎日やっているので、金を取るのはむずかしい。WEBRONZAを見ると、執筆者も「朝日文化人」だけではなく、ウェブから出てきた若い世代も起用するなど工夫のあとが見られますが、こういう言論はブログで読めるので、7月1日から月735円というのは急ぎすぎじゃないでしょうか。(ウェブ上の「プラットフォーム競争」が始まった - 池田信夫)

 このような中で、佐々木氏の立ち位置が微妙だ。たとえば、WEBRONZAのメディア分野の論陣を見ると、11人の朝日新聞関係者と10人のいわゆる文化人。このうち、IT界で有名なのは、津田大介氏と佐々木俊尚氏のみ。
そう言うことなので、当分WEBRONZAへの寄稿は見合わせます。「原稿料を暴露してけしからん」と言ってきたら、それもここで報告しますよと通告しておきます。NDAも何も交わしてないしね。(http://twitter.com/sasakitoshinao/status/16926313292)
 朝日新聞としては、佐々木氏の登用は、IT業界にPRするため(つまり、人寄せパンダ?)に必要だったに違いない。実際、INTERNET Watchでは、
 ウェブロンザプラスでは、学者や専門家、ブロガー、朝日新聞の論説委員と編集委員ら60人が独自の視点からニュースを解説。「社会・メディア」分野の執筆陣には、ジャーナリストの佐々木俊尚氏や津田大介氏も名を連ねている。有料コンテンツ配信サイト「Astand(エースタンド)」で7月から月額735円で提供する。6月中は無料で閲覧できる。 (朝日新聞が言論・解説サイト「WEBRONZA」、佐々木俊尚氏ら執筆の有料記事も)
少なくとも、IT業界において佐々木氏が「WEBRONZA」から抜けてしまえば、ますます有料化の意味はなくなる。

朝日新聞の有料化路線はどこに向かうか

 朝日新聞の「WEBRONZA」が載っているAstandを見ると、すべてのコンテンツが有料コンテンツであるという。ID登録と同時にクレジットカード登録が必要になってくる。

 だが、インターネットで無料で情報が得られる時代に、わざわざ有料化して読者を囲い込むメリットが朝日新聞にあるのか。

多くの人に読まれる媒体力を持っていてパブリシティ効果があるのであれば、原稿料は問題じゃないんですよ。実際CNETのブログは原稿料は格安ですが、媒体力が強力なのでやめるつもりはありません。でも有料サイトというペイウォールの内側にある閉鎖系では、パブリシティ効果は非常に低い。(http://twitter.com/sasakitoshinao/status/16926766231)

有料サイトはそういうパブリシティ効果の期待できない場所だという認識が運営側にも必要なんじゃないかと思います。無料でオープン=公共圏への接続、有料で閉鎖系=高いコストで運営。(http://twitter.com/sasakitoshinao/status/16926874878)

 佐々木氏は、パプリシティ効果の高いCNETのブログを持ち上げるが、親会社が朝日新聞である事を忘れてはいまい。もし、佐々木氏が「WEBRONZA」を断り、CNETのブログのみを書き続ければ、朝日新聞としては、CNETのブログ全体を有料化することもできるのである。もちろん、編集権が違うのでそう簡単にはいくまいが。

 ただ、ニュースサイトという関係上、ニュースを有料化できない朝日新聞としては、コラムやブログを切り分け、よりアクセス数を稼げるサイトは、有料化してもらうと考えるのもおかしくはない。特に、

社外筆者に1本1万円で書かせるいっぽうで、早期退職者には7000万円とかの退職金を払ってるんだよね。(http://twitter.com/sasakitoshinao/status/16925809219)
のツィートを見る限り、朝日新聞のリストラは確実に進行中である。売れるコンテンツは有料化せよ、それが現在の朝日新聞の至上命題にも見える。だが、それではコンテンツの内容を確実にやせさせる。

ジャーナリストの生きる道

 佐々木氏のツィートにこんなのがあった。
マスメディア衰退時代に、フリージャーナリストは自分自身でどうビジネスを構築するかというふぇーずにやってきています。雑誌の連載も激減して、3年前には月に10本以上あったのが今では月に3本ぐらいに。みんな休刊!(http://twitter.com/sasakitoshinao/status/16928440062)
 そういえば、ITライターの小寺信良氏のブログ、コデラノブログ4でこんな記事があった。
今、書籍の出版は、モノカキにとっても非常に敷居の高いものとなっている。なかなか本を出させてくれないのだ。

もちろん、書けば書くだけ飛ぶように売れるような人は別だが、僕のようにこれまであまり書籍を出していない著者は、敬遠される。とはいっても、これでも過去に20冊ぐらいは出しており、中には5万部も売れたものがあるので、一応技術系のモノカキとしては優良な書き手だと思うのだが。

なぜ本を出させてくれないかというと、今出版は大不況のさなかであり、編集者がうんといっても営業がダメ出しするのである。

例えば僕と津田大介氏と共著で出した「Contents Future」は、もう3年前の本である。すでに今はいろいろ事情も変わってきているし、我々もこの3年でいろんなキーマンと知り合いになったので、同じ手法で「Contents Future 2」をやったらどうか、と相談がまとまって、出版社に話を持って行った。

今をときめく津田大介の本ということもあって、編集者はもちろん乗り気だったが、営業からNOと言ってきたのでこの話は「なし」になった。津田大介のあまりの遅筆に恐れをなしたのだろうか。それはないよとは僕も自信を持って言い切れないとことがあるが、主な理由は最初の「Contents Future」が初版で終わっているからである。(電子書籍は一体誰が恐れているのか 2 )

この中で、営業が力を持っている内情が明らかにされた。
日本文藝家協会の三田誠広さんが、電子書籍になると初版分の印税が支払われなくなるので、最低補償額の不安を述べられている。三田さんぐらいの大作家ともなれば初版分の全額をいただけるのだろうが、悲しいかな、こと技術系出版社と貧乏ライターの間では、もうすでに初版分の全額を支払わないという形態も出てきている。僕の知っているところでは、初版の40%のみ保証、あとは売れただけ、という契約書になっている。もはや出版の世界では、クリエイター側もそれぐらいのリスクを背負わされるところまで来ているのである。


もちろん初版部数を40%に減らせば全額ということになるが、そこまで減らすと全国に配本するには足りないので、結果的に露出が減って売れないという負のスパイラルになるため、初版の撒き数は減らせないのである

これなども、単に物理物である制限から来るもので、電子書籍になれば配本や在庫部数の処理もいらなくなるため、もっとフレキシブルに書籍が動くようになるはずである。初版分の最低補償額は、最初にまとめて貰うか全額印税にするかで、印税率を調整すればいいことである。


電子書籍は、終わった出版部門にとってはもはや乗るしかない話だ。だってこのまま何もしなければ、事業部が閉鎖になるか、会社ごと潰れるだけだからである。(電子書籍は一体誰が恐れているのか 2 )

つまり、過去に売れなかった本をどこまで印刷するかを決める権利は営業にあるというのだ。

 まだ回答がないが、僕は佐々木氏に2つの疑問をぶつけている。

@sasakitoshinao 一連のツィートを拝見していると、クリエイターの価値を知らない編集者がマスメディアの危機感にあおられてまっしぐらに有料化の道を進んでいるように思えます。これじゃ、成功するわけがない。(http://twitter.com/mugendai2/status/16930310489)

@sasakitoshinao現在はネットの本も紙の本にあわせて割高だが、やがてネット専門の出版社が生まれ、多くのライターは紙で印刷されることが大変珍しくなる?(http://twitter.com/mugendai2/status/16939863314)

おそらく、これからのライターは、自分の書いた紙の本ではなく、iPadに載せられた自分の電子書籍を見せながら自分で営業することになるだろう。僕は、映画「華氏451」のエピソードを思い出した。
華氏451度は、本が自然発火する温度である。

 すべてが機械化されたこの時代は、あらゆる知識や情報はすべてテレビによって伝達され、人々はそのとおりに考え、行動していれば平和な生活ができるのである。そこでは読書は禁止されており、反社会的という理由で、本はみつけ次第、消防士(英語でFireman)たちによって焼きすてられた。モンターグはその消防士の一人である。
 ある日彼は妻のリンダにうりふたつの若い女クラリスと知り合う。テレビのままに動く無気力なリンダの空虚な生活にひきかえ、クラリスは本に熱意を持っていて、モンターグにはとても刺激的だった。そこでモンターグは生まれてはじめて本を読み、その魅力にとりつかれてしまった。それを知ったリンダは、夫が読書をしていることを手紙にかいて密告した。
 モンターグは消防士を辞職する旨を消防隊の隊長に申し出たが、とにかく今日だけは、ということで出動した。ところがなんと行く先は意外にも彼自身の家だったのである。庭につまれた自分の本を焼きすてるように命じられたモンターグは、本ばかりか家そのものまで焼こうとした。そんな彼を制止し、逮捕しようとした隊長にモンターグは火焔放射器を向け、殺してしまった。
 殺人犯として追われたモンターグは逃走し、淋しい空地にたどりついた。そこはいつか、クラリスが話してくれたことのある「本の人々」が住む国だった。そこでは、人々は、すべての本が焼かれても、それを後世に残せるようにと、本を暗記していた。やっと本を読む自由を得たモンターグはエドガー・アラン・ポーの暗誦をはじめるのだった。(華氏451-Wikipedia)(メディア不況がやってくる(ホームサーバの戦い・第46章))

 もちろん、iPadにより読書欲は刺激されるので、この映画のテーマとは関係ない。ただ、「テレビで本を読んでいる」という外見が酷似しているだけである。
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