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素人だから言えることもある

スター・ウォーズの「執着」について考える

ビッグス&ウェッジはFFにも登場

 現在、NHKのBSハイビジョンで、スター・ウォーズを一挙6作放送されている。20日に放送されたエピソード4・新たなる希望は、1977年の作品だが、今回はデジタル・リマスターのHDリマスター版で、33年前の作品なのにエピソード1・2・3(1999〜2005年公開)と肩を並べるほどの高画質である。

 そのエピソード4に懐かしい名前が登場した。ルーク・スカイウォーカーとともに戦う戦闘機乗りメンバーの名前がビッグスとウェッジと言う名前なのだ。調べてみると、1994年のFF6から登場するという。

ビッグス&ウェッジ (Biggs and Wedge) は、スクウェア・エニックスのゲームソフト・ファイナルファンタジーシリーズに登場するキャラクター。メインキャラクターでは無いが、『ファイナルファンタジー6』で初登場以降ほとんどのシリーズにチョイ役でスター・システム的に登場する。
名前の由来は映画『スター・ウォーズ』に登場するキャラクター、「ビッグス・ダークライター」と「ウェッジ・アンティリーズ」である。(ビッグス&ウェッジ-Wikipedia)
 僕にとって、ビッグス&ウェッジはFF7に登場するティファやバレットの所属する反神羅組織「アバランチ」のメンバーである。僕には、スターウォーズのストーリーとFF7のストーリを比較した「人はなぜ、ダークサイドに惹かれてしまうのか1 ・2・3・4・5・6」がある。

執着と愛とダークサイド

 僕が「執着」と言う言葉に興味を持ったのは、ジョージ・ルーカスの次の言葉から来た。
この三部作(エピソード1・2・3)を通して、私は善悪という二分法はとらなかった。自分では善を行っていると信じている人間が、どのようにして邪悪な存在になってしまうかこそが問題だったのだ。

始まりは愛する人を救いたいという極めて純粋な望みだった。自分の周りの状況をコントロールしたいというごくささやかなことだったのだ。母を、妻を失いたくない。本当に大切に思う人を失う苦しみを味わいたくない。そのために悪魔と契約を結ぶ、ファウスト的な物語である。

アナキンが抱えている問題の根源は、執着を捨てられないことにある。諦めをつけ、自分の人生を歩むべきことに気がつかない。厭だからというだけで、太陽が昇るのを止めることはできないのだ。しかし、アナキンは執着することでさらなる力を追求し、ついには宇宙を支配できると考えるところにまで行き着いてしまう。それこそが彼の真の転落であり、悪になるということでもある

そしてその結果、彼はすべてを失ってしまうのだ。皇帝以上の力を持ち得た可能性があったにも関わらず、皇帝の従僕となり、彼がなり得たものの影にしかすぎない。肉体は傷つきサイボーグと化して、もはや皇帝の力に及ばず、その座を奪うこともできない。そうなって初めてアナキンは自己の境遇、苦しみを受け入れるのだ。

(中略)

最初の「エピソード1」から見ていくと、全体がアナキンの贖罪の物語となってくる。オビ=ワンとヨーダはアナキンの子供たちがダース・ベイダーを倒すことを望んでいるが、彼らが理解していなかったのは、目的を達成する唯一の方法は、子供たちがアナキンの中に善があると信じることだった。アナキンの子供たちへの愛情が、ダークサイドから彼を引き戻し、真の悪である皇帝を抹殺して、予言通りフォースにバランスをもたらすのだ。だからこそ、アナキンはすべての源なのである。(ジョージ・ルーカススター・ウォーズエピソード3シスの復讐」プログラムより)

そこで、「執着」という言葉を探ってみると
執着(しゅうじゃく、abhiniveza (sanskrit))とは仏教において、事物に固執し、囚われる事。主に悪い意味で用いられ、修行の障害になる心の働きと考えられている。
執著とも書く事がある。仏教術語というより、一般的な用語であり、現代語の執着(attachment)によく似た意味で、煩悩の術語としてのraaga(愛)あるいはlobha(貪)に近い。

サンスクリット原語は、abhinivezaの他に、sakti、aasakti(没頭する事)、 parigraha(摂取、所有)など良い意味でも使われる語が同時に執着の意味を持ち、 graaha(にぎる、理解)、adhyavasaaya(決知、判断)など認識にも関わる語が執着の意味で用いられる。
キリスト教では愛を説くが、上記の見解から、仏教では愛ではなく慈悲を唱える。(執着-Wikipedia)
僕は、「愛とLOVEの不思議な関係」でも、愛やLOVEにさまざまなケースがある事を書いている。
 愛ってなんだろう。「愛」はもともと、仏教の言葉だったという。「愛」は、渇愛ともいって、のどが渇いている人が水を求めるように、激しく欲求することなんだ。仏教では、仏道修行者をさまたげる煩悩の一つで、現在の意味のように良い意味では使われていない。

 それじゃ、昔は愛はなかったのかというと、もちろんそうじゃない。男がいて、女がいれば、そこにお互いが好きになる感情が生まれる。これは自然な感情だ。だけど、平安時代では「愛」と呼ばず「恋」と呼んだ。「恋」は、男女間の感情をあらわすが、また大変もろいものだった。当時は(実はつい最近の第二次世界大戦以前までつづく)、結婚は親が決めていた。家柄や格式のつりあうものが、結婚の条件であって、本人が好きかどうかなんて関係なかった。現代の君たちには 、信じられない世界だろう。だから、江戸時代には、恋を認められない男女が死ぬ「心中」物の芝居が人気を持っていたのだ。

 ヨーロッパの「 LOVE 」は、これとかなり違う。キリスト教の教会が、強大な力を持っていて、神の愛(= LOVE )を説いていた。また、男女間の感情も「 LOVE 」と呼んでいる。神の「 LOVE 」は、地球愛・人類愛に通じる普遍的なもの。男女の「 LOVE 」は日本の「恋」と同じ個人的でうつろいやすいもの。この二つが同じ「 LOVE 」と表現されているんだ。神の前で永遠の「 LOVE 」を誓った男女が、「 LOVE 」を失っても離婚が許されなかったのは、この二つがたてわけて考えられなかったせいだと思う。 (愛とLOVEの不思議な関係)

 スター・ウォーズアナキン・スカイウォーカーパドメ・アミダラのケースは、公的にはジェダイの騎士と元老院の議員関係であり、個人の愛に執着していくことが、本来の業務に影響を与えていく。さらに、ダークサイドに落ちることによって、ジェダイの存在そのものが危機に瀕していくのである。

小説版から見るアナキンのダース・ベイダーへの変遷

 スター・ウォーズアナキン・スカイウォーカー(ダース・ベイダー)は、警護を頼まれたパドメ・アミダラに一目ぼれしてしまう。(正確には、エピソード1から続くパドメへの思慕であるが、エピソード2の警護任務はそれを決定付ける)
あなたは愛することを許されているの?」パドメは尋ねた。「ジェダイには禁じられているのだと思ったわ
何かに執着することは禁じられている」アナキンはゆっくり説明した。「所有することも禁じられている。でも、思いやりは、これは無条件の愛だと思うけど、ジェダイの生活の中心だ。だから、ぼくらは愛することも奨励されているとも言えるんだ」(パトリシア・C・リード著/ジョージ・ルーカス原作/富永晶子訳「スター・ウォーズ エピソード2・クローンの攻撃」ソニー・マガジンズ)
 アナキンは、無条件の愛と個人の愛を混同している。本来、ジェダイの騎士は
銀河共和国のジェダイは、強い執着心をダークサイドの感情へと通じるものだと考えており、それを持つことを禁じていた。同様に、結婚することも許されていなかった。アナキン・スカイウォーカーの存在こそは、ジェダイがこうした慎重な姿勢をとったことの証であり、彼は秘密の妻パドメ・アミダラを失うことへの恐怖によって最終的に闇へと転落したのだった。しかし、彼は息子ルーク・スカイウォーカーとの絆によって、後に光を取り戻している。他にも極わずかに結婚を許された事例が記録として存在している。(ジェダイ-スター・ウォーズの鉄人!)
 ジェダイの騎士とはそもそも宗教の僧侶のような存在に近いと思われる。(色欲・物欲)=執着を絶つことだと考えているようだ。パドメにしてもアナキンにしても、公の立場にある。堂々と結婚できる立場にない。もちろん、古臭い考えかもしれない。だが、一度とりこになると抜けられなくなるのだ。これこそ、執着することではないのか。

 母親がタスケンたちに捕まって殺された。怒りに駆られたアナキンは、タスケンたちを皆殺しにする。

母さんはどうして死ななくてはならなかったんだ? なぜ、ぼくは助けられなかったんだ? 助けられたはずなのに!
「ときにはだれにも直せないことがあるのよ」パドメはやさしく言った。「あなたは万能なわけではないわ。アニー」
「でも、そうあるべきだ!」アナキンは怒って叫んだ。「いつかそうなる! ぼくは最も強い力を持つジェダイになるんだ! 人々が死ぬことさえ止められるような!」(パトリシア・C・リード著/ジョージ・ルーカス原作/富永晶子訳「スター・ウォーズ エピソード2・クローンの攻撃」ソニー・マガジンズ)
 アナキンは正義を保つことよりも、より強い力を持つことに執着し始める。強い力さえあれば、死んだ人も助けられるという風に。

 パドメから赤ん坊を授けられる事を知らされる。ある日、アナキンは、パドメが出産時に死ぬ予知夢を見てしまう。アナキンは母の死に続いて、妻の死を恐れる力に心を支配されていく。こういうとき、甘言するのが、後の銀河皇帝であるパルパティーン元老院議長だ。

「それで思い出したが、古い伝説にこんな話がある」パルパティーンはつぶやいた。「アナキン――きみは“賢者ダース・プレイガス”の悲劇を知っているかな?」
アナキンは首を振った。
「そうだと思った。ジェダイが教えそうな話ではないからな。これはシスの伝説なのだ。非常に深く自分の内に目を向け、命そのものを理解し、熟知するようになった暗黒卿の話だ。彼は死をも理解するようになった。まあ、よく考えれば、このふたつはひとつのものだ」
アナキンは背筋を伸ばした。いまのは聞き間違いか?「そのシス卿は、だれかを死から守ることができたんですか?」
伝説によれば、彼はミディ・クロリアンを操り、命をつくりだすことができた。その能力があれば、生きているものの命を保つのは、簡単なことだ。そうは思わないかね?」
アナキンの頭のなかで、すばらしい可能性が花のように開いた。彼はつぶやいた。「死よりも強い……」
「わたしが読んだかぎりでは、ダークサイドは超自然の力とみなされている多くの能力を手にする道のようだな」
アナキンは興奮のあまり、満足に息もできないくらいだった。
「そのシス卿はどうなったんですか?」
「まあ、これは悲劇だからね。この究極的な力を手にした彼は、それを失うこと以外には、恐れるものは何もなくなった――だからジェダイ・カウンシルから、彼を連想したのだよ。ジェダイも大きな権力を持っているからね」
「でも、何が起こったんです?」
「まあ、自分の力を守るために、彼はこの極意を弟子に教えた」
「それで?」
「その弟子が眠っている彼を殺したのだ」パルパティーンはあっさり肩をすくめた。「プレイガスは完全に不意を突かれた。悲劇的な皮肉だな。彼はほかの者を死から救うことはできた――自分以外は」(マシュー・ストーヴァー著/ジョージ・ルーカス原作/富永和子訳「スター・ウォーズ エピソード3・シスの復讐」ソニー・マガジンズ)
 ここでミディ・クロリアンの説明をしておこう。
 ジェダイになるためには、フォースを操るための資質と修行が必要で、誰でもなれるというわけではない。エピソード1では、生物の細胞中に含まれる共生生物ミディ=クロリアンの値がフォースの強さに影響を持つことが示唆されている。また、自身の精神的な修行も非常に重要である。フォースの能力を引き出す訓練はもちろん、自制心を養うための心身の鍛練、広い知識と洞察力を磨くことが求められる。(ジェダイ-Wikipedia)
 アナキンはエピソード1で、検査の結果、ミディ・クロリアンが異常に多いと言うことで、オビ=ワン・ケノービにより奴隷の中からジェダイの騎士に抜擢されている。

 アナキンは、母や妻の死を前にして、パルパティーンの言葉にすがりつく。「母を、妻を失いたくない。本当に大切に思う人を失う苦しみを味わいたくない。そのために悪魔と契約を結ぶ、ファウスト的な物語である。」(ジョージ・ルーカススター・ウォーズエピソード3シスの復讐」プログラムより)というのがこの点である。

「ぼくは――どうしても――」アナキンは両手を握りしめ、震えながらいすから腰を浮かしているのに気づき、力を抜けと自分に言い聞かせて座り直し、深く息を吸い込んだ。「あなたはそれに関してよくご存知のようです。だから教えてください。その力を学ぶことは可能ですか? そんなことはできますか?」
パルパティーンは肩をすくめ、穏やかな知恵をたたえた笑顔でアナキンを見た。
まあ、ジェダイから学べないことは明らかだな」(マシュー・ストーヴァー著/ジョージ・ルーカス原作/富永和子訳「スター・ウォーズ エピソード3・シスの復讐」ソニー・マガジンズ)
 アナキンはすっかりパルパディーンに乗せられてしまった。一方、まわりのジェダイたちは、あまりにもアナキンとパルパディーンが接近するので、不審がられ、ジェダイの中から孤立する。

 やがて、パルパディーンはその裏切った弟子こそ自分だと明かす。予知夢で妻の死を信じているアナキンは、妻を助けるために、パルパディーンに忠誠を誓い、ダース・ヴェイダーの名を授けられる。

 マスタージェダイのオビ=ワンが登場して驚いたダース・ヴェイダーは、妻を疑い、自分の妻の首を絞めてしまう。一方、ダース・ヴェイダーは、オビ=ワンとの戦いで片手両足を失い、瀕死の重症でありながら、パルパディーンの力でサイボーグとして復活する。あれほど、気にしていた妻の復活は、

気の毒だが、ヴェイダー卿、彼女は死んだ。きみが怒りに駆られて彼女を殺したようだ” (マシュー・ストーヴァー著/ジョージ・ルーカス原作/富永和子訳「スター・ウォーズ エピソード3・シスの復讐」ソニー・マガジンズ)
やがて、産み残された二人の子をめぐって話はエピソード4に続くが、アナキン・スカイウォーカーがこれほどまでに生き延びようとするのは彼自身の執着心のせいか。なにしろ、エピソード5で自分が父親だとあかした挙句、
「ルーク、おまえは皇帝を打ち倒すことができる。皇帝もそれを予見しておる。おのれの運命に逆らうな。父と子で力を合わせて銀河に君臨するのだ。それしかおまえの生きる道はない」(ドナルド・F・グルード著/ジョージ・ルーカス原作/石田享訳「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」竹書房)
というのだから、執着心の強さにもほどがある。
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