夢幻∞大のドリーミングメディア

素人だから言えることもある

龍馬は「バカ者」であり、「夢を語る人」だった

龍馬はアイデアマンの「バカ者」

 「龍馬伝」は終わった。龍馬の役割を考えていくと、僕は、「バカ者」であることに気がついた。「バカ者」とは、学習院大学の青木幸弘教授の作った言葉で、2006年1月4日(水)付け 日経MJによると
 ビジョン、利害の調整、そして選択と集中だ。ただこれは自治体がもっとも苦手とすることだ。ブランドが成功するには『三つの者』の存在が鍵を握ると言われる。一心不乱に目的に邁進するバカ者、冷静に自己分析するヨソ者、後継者となるワカ者だ。とりわけ継承することが重要なので、人材育成に力を入れる必要がある。(2006年1月4日(水)付け 日経MJから)(企業ブランディングと地域ブランディング)
 この言葉は、地域ブランディングによく使われる言葉だ。「情報発信する自治体」では、地域活性プランニング代表取締役の藤崎慎一氏はこう語っている。
藤崎 よくあるのが行政が先頭に立つケースですが、自治体主導では往々にしてうまく進みません。担当者はいくらがんばっても、2〜3年ごとに入れ代わってしまい、ノウハウが蓄積されないからです。行政ではなく、地域の住民が自立し、主体的に活動を進めなくては、活性化は決して実現しません。言い換えれば、行政は住民が活性化の中心的立場を担うように仕向ける必要があるわけです。

 では地域でどういう方が中心となって活性化に取り組むのがよいのか。私は「よそ者」「若者」「ばか者」という三つの「者」が必要と考えています。

 このうち「若者」は、積極的に活動に取り組むいわば“実働部隊”です。年齢的には本当に若くなくとも、過去の例にとらわれずに前向きに行動できる資質を持った人のことです。

 「ばか者」は、いわゆるアイデアマンです。突拍子もないことを言い出すため周囲からは異端児扱いされることもありますが、実は心の底から誰よりも地元の将来を案じている。その地元愛から来るアイデアに耳を傾ければ、活性化に大いに効果的なものが多く、誰も気がつかなかった大胆な企画が生まれることもあります。

 この2つのタイプの人種は、どの地域にも必ずいますが、圧倒的に欠けているのが「よそ者」の存在です。

 「よそ者」とは、第三者の視点を持った整理屋で、客観的な情報から地域の強みや弱みを分析し、方向を示してみんなの後押しをする人物です。

 活性化を進めていく上で、地域に最も欠けているのが、市場が何を求めているのかという認識、すなわちマーケット感覚です。私は地域の映画ロケ誘致のお手伝いもさせていただいておりますが、地元の方はよく地域の名所をロケ地として売り込もうとします。しかし映画関係者が望んでいるのは、名所よりも、ありそうでいてなかなか見つからない味のある景色や建物だったりするわけです。ロケ地として魅力ある場所を持ちながら、地域の人はそれに気付いていないのです。

 活性化の活動で地域を訪れたときに、「よそから来た人間に何が分かる」と言われることもあります。確かにそれはおっしゃるとおりで、長年その地域で暮らしてきた方に比べると、よそ者は地域のことをよく知りません。しかしよそ者は外の世界を知っているため、その地域が何を発信すれば、多くの人が着目するかということが分かります。だから、地域に足りないマーケット感覚を補う存在として、よそ者はとても重要です。

 よそ者として活躍する人物として多いのが、都会の生活を経験したUターン者です。静岡県の浜名湖地域の活性化で活躍した旅館の二代目経営者も都会からのUターン者でした。彼は地元とのしがらみがないという利点を生かして、それまで下関の市場に持っていくだけだった遠州灘産の天然トラフグについて、地産地消のプロジェクトを進め、ブランド化しました。さらに映画のロケ誘致にも成功し、観光客の注目を集めました。(NBオンライン情報発信する自治体)

 ヨソ者やワカ者とは「龍馬伝」では、龍馬の言葉に影響を受けた人たちである。そして、龍馬が土佐を変えようとする「バカ者」であることは明確だ。どうしても、既得権者の武士の境遇が劇的に変わらざるを得ないので、武士たちに恨まれる。しかし、実は心の底から誰よりも地元の将来を案じているのだ。それは、福山氏の言う
 龍馬さんが命を懸けてやりたかったのは、故郷・土佐を変えることだったと僕は解釈しています。最初から最後まで、その志は変わりません。土佐の田舎に生まれ、上士と下士とという歴然と身分差がある藩社会の中で、上士を斬り殺したり殿様に訴え出ても、藩という制度は何ひとつ変わらない。そうであれば、脱藩して日本中を旅して回り、根底にある日本のシステム自体を変えるしかない。(文藝春秋12月号・福山雅治「龍馬」を語る)(日本は龍馬を待っている)

龍馬は「夢を語る人」だった

 龍馬が、彼の未来の夢を聞いて、次々に人々をとりこにする姿が何度も登場する。それほど、彼の夢は魅力的だった。これは、優れた創業家の特質にも共通する。僕は、アップル・ソニー・ディズニーの共通点でも、ウォルト・ディズニーやスティーブ・ジョブズ井深大のエピソードを引用した。
 ウォルトは優れたストーリーテラーだった。ストーリーボードを前にしての作品検討会でも、彼は一種のトランス状態に入り込みながら、ミッキーやドナルドやフクロウや老犬になりきって、演技を交えて構成を語り、スタッフを圧倒した。

「このイヌは掃除機のようにくんくんかぎながらやってくる。そしてその鼻面は地面いっぱいに広がっていく」とウォルトは、マーセリーン(ウォルト・ディズニーが子供のころに過ごした田舎町)の子供の頃に出会ったイヌを思い出しながら、イヌになりきって演技する。演技をすれば演技をするだけイヌは滑稽になっていき、スタッフが反応すればするだけウォルトはキャラクターになりきり、アニメーターにインスピレーションを与えた。(ニール・ゲイブラー著/中谷和男訳「創造の狂気ウォルト・ディズニー」ダイヤモンド社)(アップル・ソニー・ディズニーの共通点)

アップルのジョブズもこういうエピソードがある。
 「私がグループに入り、発売後 100 日で7万台、初年度 50 万台というすさまじいMacの販売目標数字を聞いたときは、そんなばかなと思いました。」ところが、スティーブ・ジョブズの魔法薬を飲んでいると、「 2,3 ヵ月のうちに、自分でも同じことを言うし、信じるようになっていました。スティーブは、みんなにすごい影響を与えていました。彼の言うとおりにするのは無理だって頭ではわかるんです。でも、どうしても実現したいという気持ちにさせられ、そのうち、信じるようになってしまうんです」(ジェフリー・ S ・ヤング+ウィリアム・ L ・サイモン著/井口耕二訳「 スティーブ・ジョブズ偶像復活 」東洋経済新聞社)
 龍馬はもちろん、行動の人である。しかし、彼は漠然と走り回ったのではない。しっかりとした夢を持ち、それを実現するために、あらゆる人間を動かした。その人間たちは、ヨソ者・ワカ者となり、龍馬の夢を実現しようと努力していくのである。
ブログパーツ