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素人だから言えることもある

佐々木氏の「ソニーは死んだ」発言で思い出すソニーの「バカ者」

佐々木俊尚氏は個人として戦っている

いつもすごいなと思うのは、佐々木氏は、相変わらず、自分の気持ちに素直に発言していることだ。今回の発言もそうだ。きっかけはこんな言葉。
いまSony Readerを一応入手しておこうかと思ってネット直販のソニーストアに行ったら、WindowsのIE6.0/7.0以外では「正常に動作しないので推薦環境で読め」というふざけたエラー画面が出た。びっくり。 http://bit.ly/fWAXxZ
(http://twitter.com/#!/sasakitoshinao/status/15340451611541504)
それがついにこんな言葉になる。
私の中では、今日ソニーが完全に死んだ。さようなら。(http://twitter.com/#!/sasakitoshinao/status/15374396654878720)

ガラパゴス化して死に体の日本家電業界にあって、唯一グローバル市場で闘えるはずのソニーがこの体たらく。私は本当に悲しく思います。ほんのしばらく前までソニーのファンだった一個人として。(http://twitter.com/#!/sasakitoshinao/status/15399438142935040)

詳しくは、Togetter(http://togetter.com/li/79743)を読んでいただくとして、この佐々木氏の熱い思いを読んでいるうちに、思い出した言葉がある。それは、元SCE社長の久夛良木健氏の言葉だ。

久夛良木氏のような「バカ者」

僕は、「昔のソニーには猛獣がたくさんいたし猛獣使いもたくさんいた」で、久夛良木氏の言葉を引用した。
今、僕は世の中がリスクをとらない風潮に向かっていることをすごく心配している。産業界に共通してリスクをとらずに、確実に利益をとりにいく風潮があるよね。例えば、かつてのソニーは、失敗を恐れずにどんどん挑戦した。大きな失敗もいろいろとしたけど、いろんな挑戦の中からキラッと光るものが生まれた。挑戦をやめたら、進化は止まるし、未来はつくれない。僕のSCEでの人生は、未来への挑戦の歴史だと思う。リスクを背負って、果敢に挑戦してきたつもり、SCEを離れた後も、そういう僕の生きかたは変わらない

(中略)

昔のソニーには社内に猛獣がたくさんいてね、だから活気があって、面白かったんだろうなあ。お世話になった先輩たちがよく言うんだよね、昔のソニーには猛獣がたくさんいたし、猛獣使いもたくさんいたと。猛獣の僕がこんなこと言うのも変なんだけど。(週刊東洋経済 2007/5/19号 「僕がやめる本当の理由を語ろう」)( 「昔のソニーには猛獣がたくさんいたし猛獣使いもたくさんいた」)

ソニーがきらっと光っていた時代、それは社員が失敗を恐れずにチャレンジしていた時代だ。当然ながら、それらの社員をちゃんと受け止める先輩たちもいた。久夛良木氏を受け止めた先輩とは、森園正彦氏だ。
それは、まず優秀なエンジニアであることだが、同時に職場で使いづらいと思われ、上司や同僚との人間関係がうまくいかず、浮き上がっていることである。森園の部隊に引抜きをかけても問題が生じない。職場が困らない人材であることだった。

その理由を、森園はこう説明する。

「私は、彼らを決して使いづらいとは思いませんでしたね。彼らは優秀で、とにかく仕事が出来ましたし、またよく仕事をするんです。ただ、上司であれ誰であれ、一言物申すタイプですから、 ( 職場で ) 周囲から浮き上がったり、上司から疎んじられたりするのです。でも彼らは『いざ』という時には頼りになります。開発や何かで難しい問題が生じた場合、これで出来るとか出来ないかとかごちゃごちゃ議論するのですが、彼らは『じゃあ、やってみます』と、すぐ始めるような人たちですから」( 立石泰則著「ソニー厚木スピリット」小学館 ) (ソニーの猛獣たち)

かつての日本の家電業界は、久夛良木氏のような浮き上がった人たちがいて、頑張っていたのだ。僕は、彼らこそ「バカ者」だったのだと思う。「バカ者」とは、地域ブランディングでよく使われる言葉で、
「ばか者」は、いわゆるアイデアマンです。突拍子もないことを言い出すため周囲からは異端児扱いされることもありますが、実は心の底から誰よりも地元の将来を案じている。その地元愛から来るアイデアに耳を傾ければ、活性化に大いに効果的なものが多く、誰も気がつかなかった大胆な企画が生まれることもあります。(NBオンライン情報発信する自治体)( 龍馬は「バカ者」であり、「夢を語る人」だった)

このような人物のいる会社からは、面白いものが生まれる。ところが、削減削減で社内にリスクを取らない(失敗・チャレンジをしない)人間ばかりになると、それなりに収益は出るが、画期的なアイデア商品は生まれない。ソニーからなかなか良い商品が生まれないのは、このような「バカ者」を雇っておく余裕がなくなっているからなのである。
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