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素人だから言えることもある

テレビは馬鹿が見るものか

テレビの終わりの始まり

前項「無縁社会」とテレビドキュメントの限界で、わかったのは、バラエティーとドキュメンタリーでは視聴者のとらえ方が違うということだ。

池田信夫氏の「テレビの終わりの始まり」ではこんな言葉が出てくる。

民放の場合は、日本テレビの土屋敏男さんのいうように「馬鹿にどう見せるか」を考える。コストを節約して数字を取るには、出す側もプライドを捨ててバカになるしかない。しかし出す側が視聴者をバカにしていることは見る側に伝わるので、まともな人はテレビを見なくなる。そうすると見るのはますます老人や専業主婦などの情報弱者ばかりになる・・・という負のループにテレビは入ったように見える。(テレビの終わりの始まり)
そこで、リンク先のほぼ日の土屋敏男氏の言葉を引用してみる。
土屋 実は、ぼくら地上波のテレビをやっている人たちは、視聴者を、信じていないんですよ。見ている人のことを、かなりものがわからない人だと想定して、その人たちにどう見せるかと工夫しているんです。ものすごく悪い言い方をすると、もう、「馬鹿にどう見せるか」と、みんな絶対にクチには出さないけれども、どこかのところではみんながそう思っているようなフシがありますね

糸井 あれだけの大きさのツールを持てば、誰でもそうなりますよね。

土屋 確かに、何百万人、何千万人と見てくださる中には、もちろん、そういう人たちも、いますよ。その人たちも入れないと数にならないから、「その人たちまで含めて全員をダマすためには……」と、自分たちの持っている視聴者像を、どんどん、ものすごく友達にしたくないところに持っていってしまっている、というか。(テレビという神の老後。電波少年T部長と青臭く話した。第11回 あなたは、消費者を信用できますか?)

確かに視聴率至上主義になるためには、かなり視聴者のレベルを下げなければならないだろう。誰でも楽しくというのは、結局、視聴者を馬鹿にしていることになる。

前項「無縁社会」とテレビドキュメントの限界でも、鈴木氏やテリー氏が主張しているのは、これじゃ難しすぎて視聴者にはわからないだろうといっているにすぎない。だから、解決策を提案しているのである。一方、森氏は、「自分はこうありたいと思うものを、見る側が考えてわかって、ああこれかと分かったほうが、はるかに獲得する力って強いんですよ。」というのは、視聴者がそれなりのレベルが必要だということである。

地デジ化によるテレビ離れ

そういえば、前項で取り上げた「新春TV放談2011」のラストのコーナーで、ゲストのうちの2人が「今年のテレビここに注目!」で、こんなことを言っていた。
大根仁(ドラマ「モテキ」などの監督) (「地デジ化によるテレビ離れ」というフリップ)
ぼくは、テレビ番組というよりも、テレビ界全体の「地デジ化によるテレビ離れ」。今年の7月に完全地デジ化に移行しますけれども、あのー、全員が全員切り替えるわけはないと思って、これを機にテレビ見なくなる人が絶対多くなると思っていて、しかもテレビなくても大丈夫、っていうことをわかる人がたくさん出てくると思います。って、僕らは、テレビ作っている側として今までは当たり前に作って見てもらっていた視聴者が、当たり前のように電波がテレビから流れていたっていうのが、一回、途切れる人がたくさん出てくると思って、絶対的に必要なものかどうか、ていうのが7月に起こるんじゃないかな。

森達也(映画監督・作家) (「反デジタル」というフリップ)
えーと,デジタル元年。これは、ハードはいいんです。ハードに対しては文句をつける気はないんですけど。ソフトです。つまり、あの、デジタルっていうと、理論的に言うと、二進法なんですよね、0か1に。まあ、この構成によってつくられているわけで、つまり、二元化なんです。えー、わかりやすさでもあるわけなんです。善か悪か、右か左か、前か後か、黒か白かみたいな。やっぱり、その間にあるものが本当は大事なのに、テレビはどんどんそれを捨ててきてしまった。これは黒、これは白みたいな、ね。これは、そういう単純、簡略化ばかりを目指してきてしまったんであれば、ここらで間にあるものを見つめなおしたい、そう言った気運が盛り上がってくればいいなと思って、「反デジタル」化にしました。(新春TV放談2011)

おそらく、テレビの番組で「地デジ化によるテレビ離れ」を言った人はいないだろう。(大晦日の朝生で池田信夫氏が「地デジは失敗する」と言ったためにテレビの出入り禁止になったというエピソードを話していた)いわば、このテーマは,テレビ局にとってタブーになっているわけだ。しかも、この番組が生放送ではなく、録画番組(アナウンサーのメッセージによると、収録は4時間だったという)だったので、新年早々の初の快挙(?)のような気がする。

さて、「テレビは馬鹿が見るもの」ということで、視聴者を減らしてしまう結果になる前に、テレビ局はどのように視聴者を獲得しようとするのか、それがこの半年で問われている。
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