PSPリマスターとトランスファリングはゲームにとって何を意味するか(ホームサーバの戦い・第96章)
PSPリマスターとトランスファリングは違う
僕は、これからはトランスファリングが主流になる?(ホームサーバの戦い・第92章) で、こんな言葉を引用した。「トランスファリング」は、セーブデータを共有することで、一つのゲームを据え置き型ゲーム機と携帯型ゲーム機の両方で、継続してプレーすることができる機能です。これにより、電車などの移動中には携帯型ゲーム機でストーリーを進め、ご家庭では据え置き型ゲーム機を接続したテレビの大画面でクライマックスを堪能するといった、好きなときに好きな場所で、最適な環境を選択してゲームを楽しむことが可能となります。一方、PSPリマスターについては、7月16日にホームページができている。それによると、
『MGS PW HD EDITION』は、2010年にPSP®(PlayStation®Portable)向けに発売し、好評を博した『MGS PW』のHD化タイトルです。エミュレーター※を使用せず、フルHDの画面サイズに合わせて、グラフィックや文字などのインターフェースの描き直しを行うことで美しいグラフィックを実現しているほか、サウンドの再調整によって音質も向上しているため、ゲームの臨場感を一層高めています。また、据え置き型ゲーム機のコントローラーの機能も生かしており、操作性を向上させる右アナログスティックへの対応やゲーム内の演出を体感できる振動機能にも対応しています。(プラットフォームの垣根を越えた遊びを提案「トランスファリング」で広がるゲームの新しいプレースタイル第1弾は「METAL GEAR」シリーズで実現)
これまでPSP®のみでしか楽しめなかった名作タイトルを、より美しく、より迫力のあるPS3®で楽しめるようにした、新しいタイトルシリーズ!映像美のほかにも、PSP®とセーブデータの共有もできるなど魅力が満載!(PSP®REMASTERとは)として、(1)圧倒的な高画質、HDグラフィックス採用!(2)PSPとPS3のセーブデータが共有できる!(3)アドホックモード/アドホック・パーティーで友達同士はもちろん全国のプレイヤーともつながれる!(4)迫力の3D映像で臨場感アップ!(5)ワイヤレスコントローラ対応で操作性アップ!(6)PSP Remaster版ならではの新コンテンツ、新ステージをご用意!(7)大容量&高画質のブルーレイ採用!の7点を特徴としている。
この特徴を見る限り、トランスファリングと共通している。ところが、Kotaku Japanで[インタビュー]アドホック通信は? トランスファリングとの関係は? ソニー・コンピュータエンタテインメントに「PSP®Remaster」のあれこれを聞いてみたというインタビュー記事によると、
―コナミさんが発表した「トランスファリング」とはどんな関係が?確かに、技術上は違うだろうが、コナミとSCEの立場の違いだと思われる。コナミの技術を他のソフトメーカーが活用するためには、コナミにライセンス料を支払わなくてはならない。一方、SCEはプレイステーションのハードメーカーだ。「PSP®Remaster」として発表すれば、あらゆるソフトメーカーが活用できる。たまたま同時期に発表があったのは、コナミの発表を見て、このシステムを確実に拡大するために、SCEが後押しをしたのではないだろうか。
豊:「トランスファリング」はコナミさんの技術・コンセプトで、他社である私たちがコメントできる立場ではありません。
―E3では、PS3とPS Vitaの両方で発売されるマルチタイトルに関して発表がありましたが、PSPリマスターと関係はあるのでしょうか?
豊:こちらもPSP リマスターとは技術的な関係はありませんね。
―ほぼ同じタイミングで似たコンセプトのものが発表されたので、何らかの関係があると思っていました。
豊:私たちは技術主導で「PS3でPSPを再現できる」というところから企画を進めていきました。
―Wii Uもそうですが、E3の前後で「据え置きと携帯の両方で遊ぶ」という方向性がいっせいに並びましたね。
豊:世の中のトレンドでしょうね。どこででも遊びたい、でも家の中では大画面のTVで見たいよね、という要望が表面化してきたんだと思います。
袴谷:ずっとやりたいと思っていたことが、タイトル限定とはいえ実現できるようになってきました。弊社も含めて、ユーザー様にお届けできる時期がたまたま同じタイミングになったのでしょう。([インタビュー]アドホック通信は? トランスファリングとの関係は? ソニー・コンピュータエンタテインメントに「PSP®Remaster」のあれこれを聞いてみた)
ゲームガイドの田下広夢氏は、この試みはゲームを元気にするという。現在、PS3のソフトは減少し、PSPのソフトが増えているという。その理由は、
ハードの性能があがり、よりリッチで、よりボリュームのあるゲームをという傾向に拍車がかかると、開発期間は伸び、開発費は高騰していきます。しかも、追い打ちをかけるように日本の市場は携帯ハードが主流になっています。なお、コナミの「トランスファリング」の『MGS PW HD EDITION』には、PSP版を持っていない人のために、無料ダウンロードコードが付いてるが、「PSP®Remaster」にはPSP版はついていない。特に第一弾は「モンハン3HD HD Ver」で、オリジナルPSP版は450万本も売れている。わざわざPSP版ソフトをつける必要はないだろう。
結果、コストはかかるもマーケットは小さくなるという形で、据え置きハードへのソフト供給はどんどんリスクが高まり、発売タイトルがなかなか以前のハードのようには伸びなくなりました。<
(中略)
ガイドのような職業をしていると、ゲームはできるだけたくさんのタイトルを遊ばなければいけませんし、この日までのこのゲームをクリアしないと原稿がマズイ、というようなこともあります。なので、PS3とPSPでセーブデータを共有できる、なんて聞くと、ウホッとなります。これは嬉しいウホッと。素直に、家にいる時はPS3の高画質を楽しんで、外出時はPSPだ、と考えます。
なのでついつい、セーブデータ共有のところに注目してしまうんですが、しかし実際には、重要なのはおそらくそこではありません。何故ならPS3もPSPも両方持っていて、さらに、同じゲームのPSP版とPS3版の両方を買うというのは、相当に熱心なユーザーでしょう。そういう人もいることはいるはずですが、普通に考えればある程度限られてくるはずです。
それより大事なことはPSPのコンテンツに付加価値をつけてPS3を送り込むことでPS3が盛り上がり、PS3で盛り上がることでPSPにも火がつくというサイクルです。あるソフトについて、みんなが遊んでいるという一体感、ムーブメント、そういった雰囲気を作るきっかけです。(PSPリマスターがPS3とPSPにもたらす良い効果)