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ヴォルデモート=ダース・ベイダー論(ネタバレあり)

ヴォルデモートとダース・ベイダーの名前の意味

ハリーポッターシリーズ最終作「ハリー・ポッターと死の秘宝PART2 」を見てきた。この「死の秘宝」では、主人公ハリー・ポッターは宿敵ヴォルデモートとの最終決戦となる。僕は、かつて「セフィロス=ダース・ベイダー論」というのを書いたことがある。ハリー・ポッターを見ていて、ここに登場する闇の帝王「ヴォルデモート」とスター・ウォーズの「ダース・ベイダー」の共通点が見えてきた。ところで、「ヴォルデモート」という名前だが、
本名はトム・マールヴォロ・リドル (Tom Marvolo Riddle) 。ファーストネームは父トム・リドル・シニア、ミドルネームは母方の祖父マールヴォロ・ゴーントに由来する。しかし幼少期からトムと言う「平凡な名前」が好きではなく、後に自身の出生を知ると父と同じ名を嫌悪するようになり、自身のフルネームを並び替えて "I am Lord Voldemort" (私はヴォルデモート卿だ)と名乗るようになる。

「ヴォルデモート」の語源は、フランス語で「死の飛翔」 (vol de mort) 。また作者は、インタビューで彼に言及した際、フランス語風に「ヴォルドゥモール」と発音している。(ヴォルデモート-Wikipedia)

一方、ダース・ベイダーの意味については、
なお名前は「ダーク・ファーザー」のもじりであり、ルーカス自身の父親との確執が反映されたキャラクターであると言われている。実際オランダ語で父親のことをvader(ファーダー)と言う。(ダース・ベイダー-Wikipedia)
これが分かれば、主人公、ルーク・スカイウォーカーダース・ベイダーの関係がおのずからわかるはずだが、観客には2作目のエピソード5まで、秘密にされた。

ヒーローと宿敵の不思議な縁

したがって、ダース・ベイダールーク・スカイウォーカーは親子、ヒロイン・レイア姫とは兄妹という血縁間関係である。一方、ハリー・ポッターとヴォルデモートの関係はいささかややこしい。

このシリーズでは、たびたびハリー・ポッターがヴォルデモートの行動を夢を通じて知るというエピソードが現れる。実は、その理由がこの最終作で初めて明らかになる。それについては「分霊箱」というものを理解しなければわからないだろう。パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズに「デッドマン・チェスト」という作品がある。その中にデイヴィ・ジョーンズという船長が登場する。
心臓が体外にあるため不死身である。ジョーンズの心臓は宝箱(デッドマンズ・チェスト)の中に納められており、クルーセル島に隠されている。またその箱の鍵はジョーンズ自身がタコひげの中に隠しもっている。ジョーンズを殺すか従わせるかして彼との契約から逃れるためには、宝箱と鍵が必要なのである。(デイヴィ・ジョーンズ (パイレーツ・オブ・カリビアン) –Wikipedia)
この体外の心臓を霊魂に変えたものが「分霊箱」になる。デイヴィ・ジョーンズは心臓なので1個しかない。ヴォルデモートはもっと不死身になろうと、複数の「分霊箱」を持つ。
ホークラックスは、「分割した霊魂を隠した物」を指す。邦訳においては分霊箱(ぶんれいばこ)と訳されているが、「魂を隠した物」は物質でも生物でも、その形状を問わない。また、本来の肉体にも魂が残っている。

分霊箱に納められた魂の断片は、魂をこの世に繋ぎとめる役割を持ち、「完全な死」を防ぐ効果を持つ。本来の肉体と肉体に宿る魂が破壊されても、他の魂の断片を納めた分霊箱が存在する限り、その者が本当の意味で死んだことにはならない。ただし分割された魂が全て滅ぼされた状態で本体が肉体的な死を迎えると、魔法を講じた者は死滅する。

(中略)
ヴォルデモートはより確実な安全のために複数回の分霊箱作成を行なっている。また7という数字が作品世界では一番強い魔法数字とされるため、6回の分割を経ることで、自身の肉体に残る1つの魂と6つの分霊箱の7つに自身の魂が分割されれば、より強力な存在になれるのではないかと考えた。そして1943年に16歳で1回目の分霊箱作成を行ない、その後も順次作成し、魂を6つに分割していった。

6つ目の品を得る前に1981年のハリー・ポッター襲撃で肉体を失っており、6回目の分霊箱作成を行なったのは仮の肉体を得た1994年夏の事である。その後、1995年夏に肉体も復活した。(ホークラックス–Wikipedia)

他者を殺せば、魂が引き裂かれるという現象があり、ヴォルデモートはこれを利用していけにえを殺し、分霊箱を作った。ところが、現実には、分霊箱は7つになってしまった。その7つとは、
(1)トム・マールヴォロ・リドルの日記(2) マールヴォロ・ゴーントの指輪(3) サラザール・スリザリンのロケット(4) ヘルガ・ハッフルパフのカップ(5) ロウェナ・レイブンクローの髪飾り(6) ナギニ(7) ハリー・ポッター(ホークラックス–Wikipedia
(1)から(5)までは物体だが、(6)のナギニはヴォルデモートのペットの蛇であり、(7)のハリー・ポッターについてはこんなエピソードがある。
1981年10月31日、ヴォルデモートが当時赤ん坊だったハリーに死の呪文を使った際、リリー・ポッターの愛による防御呪文で呪文を撥ね返された。この時、ヴォルデモート自身に残っていた魂の一部がハリーに引っかかり、ハリーは「ヴォルデモートが意図せずに作った分霊箱」となってしまった。

しかし4巻で、ヴォルデモートは自身の甦りにハリーの血を使ってしまう。このことでヴォルデモートはハリーの血に宿るリリーの防御呪文までも取り込んでしまい、結果としてハリーはヴォルデモートの肉体が生きている限り死ななくなった(つまりヴォルデモート自身が「ハリーの分霊箱と同様の存在」になったと言える)。

7巻でヴォルデモートがハリーに対して死の呪文を使ったが、上記の通りハリーの魂はヴォルデモート自身に守られているためハリーは死なず、ハリーに残っていたヴォルデモートの魂だけが破壊される結果となった。器の破壊なくして魂の欠片だけを破壊された、法則に外れた分霊箱である。(ホークラックス–Wikipedia)

だが、映画で見ると、そこの部分があまり理解されにくかったようだ。ハリーがヴォルデモートに敗れて死んだように見え、しばらくたって息を吹き返したからである。

恐怖の組織と信頼の組織

ヴォルデモートもダース・ベイダーも才能は大変優秀であった。ヴォルデモートの才能は、
頭がよく知識も豊富で、一般に魔力を制御できないとされる年齢から「力」を自覚して制御するなど、魔法の才能にも恵まれている。ホグワーツ在学中は分野を問わず受けた試験は常にトップ、加えて監督生と首席を務め、ダンブルドアに「ホグワーツ始まって以来、最高の秀才」と言わしめた。

強力な魔力を必要とする「死の呪い」を普通の呪文であるかの如く連発していることから、並外れた魔力を有していることも窺える。映画ではバジリスクを模した「悪霊の火」や、エネルギーを集約し強烈な衝撃波を発生させるといった、原作では使わなかった大技が表現されている。ホグワーツの戦いでは、数百人の総攻撃でも破れなかったホグワーツの防御魔法を一撃で破壊した。

魔法の知識に関しても、ダンブルドアをして「存命中の魔法使いの誰をも凌ぐ広範な魔法の知識を持っている」と言わしめている。それに加え、仮の肉体を創造する魔法(4巻)や箒を使わない飛行術(7巻)などの魔法を発明するなど、数々の実験を行い魔法の境界線をかつてない程に広げた闇の魔術の研究家としての一面もある。(ヴォルデモート-Wikipedia)

ダース・ベイダー
その人生は、正にジェダイの予言にある「フォースにバランスをもたらす者」を体現した者であった。なお、スター・ウォーズシリーズでジェダイおよびシスの中でも(単純な戦闘能力に限って)最強のフォースの持ち主とされるのは、ルーカスの発言ではサイボーグになる直前の五体満足な(ただし厳密には、この時点ですでに生身の右手を失ってはいるが)状態の彼であるとのこと。(ダース・ベイダー-Wikipedia)
一方、性格については
目的の為なら手段を選ばない自分本位な性格で、赤ん坊や老人でも敵対するなら命を奪うことも厭わない、冷酷無比な性格。冷静さを取り持っている時は無意味な殺人は避けたり、ハリーの「死亡」というホグワーツ側にとって絶望的な状況の中、果敢に自身を攻撃してきたネビルの勇敢さを讃え死喰い人に招く等の面も見られる。しかし逆上すると、部下の死喰い人をも平然と殺害する。一方で、本人にとっては勢力拡大に利用する為とはいえ、魔法族が迫害してきた巨人や闇の生物に自由と権利を与え友好の手を差し伸べるなど、他の魔法使いにはない一面もある。

幼い頃から弱者を隷従させることを当然と考えている節があり、弱者を隷従させる為に意識的に「力」を行使していた。同時にその「力」に限界があることも自覚していたようで、ダンブルドアに「力」が効かないことを知ってからは、彼に対してそれ以上の「力」を行使しなかった。魔法界と初めて接触した11歳の時には既に「選民思想」を抱いており、自身が「他者とは異なる特別な存在」であることを常に望んでいる。(ヴォルデモート-Wikipedia)

僕は、スター・ウォーズの「執着」について考えるでは、ジョージ・ルーカスの言葉を引用している。
アナキンが抱えている問題の根源は、執着を捨てられないことにある。諦めをつけ、自分の人生を歩むべきことに気がつかない。厭だからというだけで、太陽が昇るのを止めることはできないのだ。しかし、アナキンは執着することでさらなる力を追求し、ついには宇宙を支配できると考えるところにまで行き着いてしまう。それこそが彼の真の転落であり、悪になるということでもある。

そしてその結果、彼はすべてを失ってしまうのだ。皇帝以上の力を持ち得た可能性があったにも関わらず、皇帝の従僕となり、彼がなり得たものの影にしかすぎない。肉体は傷つきサイボーグと化して、もはや皇帝の力に及ばず、その座を奪うこともできない。そうなって初めてアナキンは自己の境遇、苦しみを受け入れるのだ。(ジョージ・ルーカススター・ウォーズエピソードⅢシスの復讐」プログラムより)

ヴォルデモートもダース・ベイダーも自分の才能におぼれ、弱者を隷属させることになれている点ではたいへんよく似ている。弱者に厳しい組織は、恐怖を持って管理する組織になる。一方、ハリー・ポッタールーク・スカイウォーカーをトップにする組織は、信頼に厚く、弱者に目を向ける。ダンブルドアはこういう。
「しかも、ハリー、あの者の知識は、情けないほど不完全なままじゃった! ヴォルデモートは、自らが価値を認めぬものに関して理解しようとはせぬ。屋敷しもべ妖精やお伽噺、愛や忠誠、そして無垢。ヴォルデモートは、こうしたものを知らず、理解しておらぬ。まったく何も。こうしたもののすべてが、ヴォルデモートを凌駕する力を持ち、どのような魔法も及ばぬ力を持つという真実を、あの者は決して理解できなかった」(J.K.ローリング著/松岡佑子訳「ハリー・ポッターと死の秘宝・下」静山社)P485

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