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素人だから言えることもある

脱原発がなぜ脱福島になってしまうのか

福島の花火騒動

愛知県でこんなニュースがあった。
福島の花火、苦情で打ち上げず 愛知・日進市の祭り
2011.9.19 13:44
愛知県日進市で18日夜行われた花火大会で、放射性物質の拡散を心配する苦情を受けた実行委員会が福島県で製造された花火の打ち上げを中止していたことが19日、分かった。
「にっしん夢まつり・夢花火」で、東日本大震災の被災地の復興を支援しようと、福島の花火の打ち上げを予定していたが、直前になって取りやめた。打ち上げられた計2千発のうちの80発で、愛知県内の業者の花火に差し替えたという。(MSN産経ニュース)
似たようなことがあったことを思い出す。一か月前のことだ。
被災の松での京都の「送り火」 放射性物質不安の声で中止
2011.8.7 21:42
京都市で16日に行われる伝統行事「五山送り火」の一つ「大文字」の護摩木として、東日本大震災の津波で流された岩手県陸前高田市景勝地高田松原」の松を使うことを大文字保存会が計画したところ、放射能汚染を不安視する声が京都市などに寄せられたため、急(きゅう)遽(きょ)中止となった。
用意していた護摩木は約400本あり、遺族の名前や祈りが書き込まれたが、保存会は京都に運ばず、8日夜に陸前高田市で迎え火として使う。さらに護摩木をすべて写真撮影して別の木に書き写し、京都の大文字で燃やす予定。
送り火は、盆に迎えた亡くなった人の霊を送り出す宗教行事。陸前高田市の鈴木繁治さん(66)が中心となって護摩木を集め、7月下旬に当時集まっていた約300本を京都市と保存会がすべて検査。放射性物質は検出されなかったが、「子供に後遺症が出たらどうなるのか」「琵琶湖の水が飲めなくなる」といった声が京都市などに寄せられ、保存会は8月に入って中止を決めた。(MSN産経ニュース)
これらの報道の後、一斉に批判のメールが殺到した。「日本人は考えるようになったのか」で引用した当事者性の有無について考えたが、この場合、佐々木氏の言う「当事者」が二つに分かれることが分かる。

つまり、被災者という当事者と主催者側の地域の住民という当事者である。そして、それを批判する当事者性のない人々(ないものねだり論者)が存在する。しかも、「主催者側の地域の住民」がそれを嫌った原因は、風評被害であることは明確である。

ここで考えなければならないのは、住民に、いや日本全国民に放射能の危険性が明確に伝えられなかった事実である。明確に伝えられなかったのはもちろん政府側にも責任がある。政治というものは、過去の前例から判断する。今回の原発災害が「想定外」だったのは、想定することすらコストがかかるため、その時点で思考停止したのではないだろうか。

ともかく、危険性が知らされなかったことにより、当事者たちの頭は悲観的な想像でいっぱいになる。特に、前項「薬は毒の一部であることを忘れていないか」でとりあげた内田氏の言う「情報難民」たちである。当事者だから、そのまま「情報貴族」になるわけではない。危険性を知らせるという、最低限の情報を与えられなかった人たちは、「情報難民」にならざるを得ないのではないか。

まず、主催者は、その事実を知らされなかったために、この程度なら大丈夫だろうと思って意図したと思われる。一方、住民たちは、自らの安全性を最大限に考えて抗議をする。その地域と関係ない人たちは、被災者の意向を無視したものとして反発する。この構造がこれらの騒動に見えている。

6万人の脱原発デモが「情報難民」を増幅する

19日に東京の明治公園で脱原発デモが開かれた。そこに参加した落合恵子氏が、こんなメッセージを書いた。
かつてクレヨンハウスは、チェルノブイリ原発事故のあと勉強会をし、ささやかながら異議申し立てをしてきた。

しかし、それを持続してこなかった。ほかにやることがいっぱいあって、という言い分けが子どもたちに通るわけがない。責任はきわめて大きい。その反省から、このブックレットを創刊する。

この小さなメディアをつくりつづけながら、「あなた」と柔らかくつながり、共に勉強していこうと思う。もう、「知らないとは、知らされなかったとは、知ろうとしなかった」とは言えない………。(脱原発へのメッセージ -【落合恵子】)

「情報難民」とは知らなかった、知ろうとしなかった人の別名ではなかったのか。日本人は、相手のことを気遣い、こんなことを聞いては失礼だと思ったりして(これは空気を読むことであるが)、肝心なことを知るチャンスを失してしまう。この空気を読むことにたけた人が「情報難民」に化すのではないか。

推進派、反対派と別れていくらシュプレヒコールを上げても、本当の情報を持っているのはほんの一握りに過ぎない。このまま、脱原発デモが拡大しても、「情報難民」が増えて、脱原発=脱福島となっていく。本当に、脱原発をした福島の救済をメインにしたデモを行わない限り、「情報難民」は増えていく危険性は大きい。
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