映画から何を学ぶか
今年のアカデミー賞が決定した。83年ぶりのサイレント映画「アーティスト」だという。4月の日本公開前なので、評価はしにくい。最近、僕のエントリーランキングを見て、いわゆる映画感想文と違ったいくつかの特徴が表れているので、今回はそれについてまとめてみたい。
(1) 感想は書かない
僕の映画のエントリーの特徴として、まず個人的な映画の感想がほとんどないことだ。この映画の出来がいいとか、どこそこに感動したとかいうのは僕にとっては意味がない。そもそも、僕は、何度も読み返せるようなブログを書こうと思っている。読者から見れば、個人的な感想など、もう一度読みたいとは思わないだろう。(2) 監督や脚本家は、何を考えてこの映画を作ったか
例えば、「踊る大捜査線」の映画を見たときに、調べたのが「踊る大捜査線」の作り方。これは、映画プログラムの中で脚本家の君塚良一氏の「リアル警察もの」という言葉から、君塚氏の本「テレビ大捜査線」に行きつく。また、アニメ「カールじいさんの空飛ぶ家」でも、映画プログラムの中の
彼の口癖は、「観る人たちが持ち帰る“お土産”は何かね」だった。この言葉に導かれ、観た人の心にいつまでも残る、キャラクターに根ざした本物の感情を描く物語が紡ぎ出されていった。(カールじいさんの空飛ぶ家・映画プログラムより)の言葉の発想から、読む人が持ち帰るお土産は何か(知識を伝える・2) というエントリーを書いた。
(3) 映画の中の気になった言葉を調べる
映画「はやぶさ/HAYABUSA」からは、「失敗は成果だ」という言葉、「はやぶさ 遥かなる帰還」からは「ボロをまとったマリリン・モンロー」という言葉が気になり、原作や著書、キネマ旬報を調べて書いたのが、映画「はやぶさ」の「失敗は成果だ」という話やボロをまとったマリリン・モンローだった。また、「ALWAYS三丁目の夕日’64」で気になった言葉、「幸せとは何でしょうな」については、シナリオが発表されていないので、ノベライズ小説を使った。(「三丁目の夕日’64」と「麒麟の翼」をつなぐテーマ「コミュニケーションのない家族」(ネタバレあり) )
僕は、映画を見たときに、資料として何を探せば、どんなブログを書けるかいつも考えている。映画は、見ただけでは終わらない。
(4) ジャンルを超えた新しい知識の発掘
映画というジャンルにこだわってしまうと、話がそこで終わってしまうので、現代社会にまで話を発展させる。例えば、「三丁目の夕日’64」と「麒麟の翼」をつなぐテーマ「コミュニケーションのない家族」(ネタバレあり) では、現代社会で問題となっているコミュニケーションのない家族の「幸せ」について考えることができた。また「猿の惑星」のもう一つの解(ネタバレあり) では、アルツハイマー新薬による「ウィルス進化論」の新しい知識について発想を広げることができた。
また、「はやぶさ」の資料を読んでいるうちに、JAXAの人々が
非常に前向きで、悲観的な考え方がまるでないのです。「できる」ということを最優先で考える。たとえそれに多少の問題があったとしても、やろうとしていることができるのだから、それでいいじゃないか、ということです。マイナス面に目を向けるのではなく、プラスを見る。(川口淳一郎著「高い塔から水平線を見渡せ!」NHKテレビテキスト仕事学のすすめ2011年6月)という、日本社会のほとんどの企業が、失敗を恐れ、足を引っ張り合うシステムになっているのに対し、前向きにとられるシステムがあることを学んだ。だが、多くの映画批評が、そこまで読み込んだ例はまずないだろう。僕は、ここから学んでいくべきだと思う。
さて、映画を調べれば調べるほど、単なる「映画感想ブログ」ではなく、映画は現代社会を反映したものであり、そこから得られた知識は、また現代社会に応用が可能だと認識できるのではないだろうか。