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素人だから言えることもある

ようやくテレビはネットの重要性に気付いた(3)(ホームサーバの戦い・第112章)

第二部 新しい時代のテレビ放送

中谷キャスター 中村さん、この時代に放送局はどんな存在であるべきなんでしょうか。

中村 あのこれまでテレビ局は、テレビの番組を作ってきました。ネットの企業は、パソコン向けのコンテンツを作ってきました。ケータイの会社は、ケータイ向けのコンテンツを作ってきました。それではだめだっていうことですね。一人の人がテレビを見たり、ケータイ見たり、パソコン見たり、同時に行うわけですから、放送局も電波だけじゃなくて、衛星もブロードバンドも、あるいはケータイのネットも全部使う、総合メディア産業になっていかなければならないですね。ですから、NHKは、名前を変えましょう。日本放送協会やめてですね、

中谷キャスター すごい提案されて

中村 日本メディア協会。デジタル協会とかなってなければいけない時代です。
アメリカの放送局、危機感とかスピード感持っているわけですけれど、それはその産業構造の事情もあるんですね。日本の場合は、放送局が番組も持って電波も持って、非常に強かった。映像産業の中心だったわけです。アメリカの場合は、放送だけでも、放送局もあれば、ケーブルテレビも強いし、衛星も強いし、そして番組はハリウッドが作ってるし。そこにIT企業が強くなってきた。だから放送局自ら、攻めて出て行かなければいけない事情がある。日本もまあ、そうなってきましたが。

猪子 放送と通信の区別というのは、ユーザーからすると、全く区別がつかなくなると思うんです。だから、事実上、放送は特権でなくなるので、たとえば放送局側からすると、多分まあいち早く、放送局ではなくてコンテンツ制作会社なのかコンテンツ供給会社なのかわかんないですけど、そういう風に意識転換をして、企業体を相当シフトする覚悟を持ってシフトをしていったほうがいいのかもしれないですね。

佐々木 今起きているのはね、結局、垂直統合されていた放送局というのがどんどん水平分離して、これは言論の立場から言うと、言論のポイントから言うと、ある意味、テレビ局はそのコンテンツですね。番組とかニュースみたいなものを提供する。さらにそれについてみんなが議論しましょう。みんなっていうのは、今までのように解説委員と記者が議論するだけじゃなくて、外側にいる普通の日本人も一緒に参加しましょう。そこである種の場が生まれるわけです。その場のようなものを放送局が作るっていう、そういう方向に多分僕は行くんじゃないですかね。

中村 コンテンツがあって、その周りにコミュニケーションが生まれて、そういうコミュニティになるという感じですね。

猪子 そうなんですけど、通信側はもう出来上がっているので、それをその放送側が、どこまでテレビ期間みたいな。

佐々木 結局、今のやり方を変えるのを不安だというまあ心理的な要因も相当ある。

猪子 すごい論理的に考えると、ほとんど変わらずできるんじゃないかなと思いますけれども。

中村 これまでビジネスがうまくいってた。それを変えようとするときの不安が現れている。

猪子 不安ていうより、プライドとか思想とかそういう問題のような気もしないでもないです。

優木 今の話を聞いて、出版業界にも影響が出るだろうし、新聞社さんにも影響が出るだろうし。だから、自分たちはこれしかできませんていうふうに頑固にならずに、こうフレキシブルに何でも対応できたところが生き残るというか、勝つのかなみたいな。

佐々木 それはそうかもしれない。

<VTR スマートテレビ広がる可能性>

中谷キャスター ええ、人と人とがつながることで、放送をどう変えていくのか。この可能性について伺いたいんですが。

中村 ウェザーニュースがスマートテレビのモデルだと思うんですよね。みんなで番組を作っている。しかも、あれ、まだ海外じゃできないんですよね。日本ならではのサービスだと思うんですよ。あれ、日本全国の人々が老若男女がですね、ケータイで写真撮って、みんなが親指でメールを送るという力があるからなんですね。ユーザー力が非常に高いんで、ああいうものが成り立つ。日本ならではですね。

猪子 今、おっしゃった話も、全くそうだし、あと一方でなんかインタラクティブになることで、コンテンツが本当に面白くなると思うんですね。直感的にわかりやすく言うと、たぶん、放送コンテンツみたいなものは、ちょっとゲームのような、いわゆるテレビゲームとかビデオゲームとかいうようなインタラクティブなコンテンツに変わっていくんじゃないですかね。

佐々木 あの、ニコニコ動画っていうネット上の動画のサービスがあるんですが、あの中で有名なのが、単に道端にカメラを設定する。設置しておいて、単に道路を歩いている人だけを映している。という、そういうのがあるんです。完成度が全く低くて、道端の動画なんで、全く面白くないんですね。そこにコメントが入るんです。ニコニコ動画って。みんなのコメントで、わーすごい美人が来たよというコメントを書くと、読んでいるコメントは面白い。そうすると、実は、元の番組そのものではなくて、番組とそれに対していろんな反応があって、反応そのものが新しいコンテンツとなっていく、そういう世界も出てくると思います。それこそ、多分人とつながることによって、新しい放送の場みたいなもの、コンテンツみたいなものから場みたいなものを設定することに変わっていく可能性秘めているんじゃないかなと感じます。

優木 私も、コンテンツ側、自分が出る側としては、いろんな人とつながれて、感想がダイレクトに伝わってくるから、それはすごくやりがいもあるし、なんかやっぱり、こうやって皆さんとしゃべっていても、その先に視聴者の人がいたり、誰かがいろんな考えを持っているっていうのは、その場で伝わってこないけど、スマートテレビになることでダイレクトにその時間に伝わってきたら、すごく可能性があると思います。

中谷キャスター ネットの社会で気づいたんでしょうね。つながりたいというか、つながるのが好き、それがそのままね、スマートテレビに入ってくると、またテレビの全然違う過ごし方が出てくるということなんですね。

佐々木 あとね、デマの問題でも、結構大きくて、ある程度テレビ・新聞だと、「情報は信頼できますよ」と。ところが震災後、去年の3月4月、すごいデマが広がっていう問題があって、これがなかなか解決ができていない。ただ、一つ言えるのは、今までメディアの世界っていうのは、テレビ局、放送局みたいな組織ですね、団体が信頼感を担保する。信頼感を維持するという仕組み。多分、今後ね、そうではなくて、個人個人、ツィッターやってる人、ミクシーやってる人、フェイスブックやってる人、そういう人たちは一人ひとり信頼感あまりないです。しょせん個人だから。たくさん集まってそこでやり取りして、議論して、お前言ってること嘘じゃないかと、批判し合う。だから、デマだと後から散々怒られる。嘘だったと。批判し否定する人、いっぱい出てくるわけですね。その個人同士の議論によって、ある程度、今まで、団体、放送局みたいなものが担ってきた公共性をカバーできるんじゃないかっていう期待感があります。

中谷キャスター ネット上の自浄作用ですね。

佐々木 そういうことは、ありうるんじゃないかと期待はしています。

中村 日本は、自浄作用、結構高いんじゃないですか。デマとか流れていても、30分もたてば訂正情報で埋まるようになっている。

佐々木 どうしても、最初のデマだけ見てしまうと、デマが広がっているように思われてしまうというのはある。

中谷キャスター はい、放送と通信が融合する時代。放送局はこれまで大切にしてきました公共性とどのように向き合っていけばいいのか。デジタルサービスの導入に積極的に取り組んできたイギリスBBCを取材しました。

<VTR 公共放送とスマートテレビ>

中谷キャスター はい。これまでテレビが担ってきた、公共性というものがどうなるんでしょうか。中村さん、いかがでしょう。

中村 あの、ネット上で情報があふれる中ですね。みんなが信頼を置ける情報を作り続ける、まあ、こういう公共性は、使命といいますかね、これからも続くんだと思います。ただその公共性というと、いろんな意味があるんですけれども、2つあると思うんです。放送法でNHKに課せられている公共性も2つなんですが、一つは全国によい放送を届ける。地デジを整備していい番組を作る。まあ、一生懸命やっているんですが。もう一つありましてね、それは先端の分野を開発する開拓する、ということなんですよ。それは技術開発だったり、海外の市場を展開する、開発するという事だったりする。だから、スマートテレビを開発するというのも、非常に重要な公共性だと思うんです。

佐々木 公平とか公正というものも、定義自体揺らいでいるというのが、先ほどの問題であって、僕は新聞記者出身なんですけれども、新聞社でも客観的中立報道というのをやらなきゃいけないって昔からいつも言われている。客観・中立ってどこに視点があるか、実は明確ではないんですよ。僕にとっては中立だけど、あなたにとって中立ではない。十分起きてくるわけですね。すると、今までは、新聞社・テレビ局のような企業組織団体が、私たちが提供するものは客観ですよ、中立ですよ、ある程度みんながそこに信頼感おいてたというのがあるんだけど、今起きていることに異論もいっぱいあったよね、今までのパッケージされたその中にすべて包み込むんじゃなくて、ニュースをバンと提供します、それについて皆さん議論してくださいね。VTRの中でクローズアップ現代の番組について放送技術研究所のシステムをみんなで議論するってありましたよね、ああいう形でいろんなところで議論が起きている、そういう場を設計して放送局が作っていく、それによって初めて新しい時代の公共性は確保される、っていう風にたぶん変わっていくんじゃないかと思いますね。

中谷キャスター 通信との融合でそういう機能が必要になってくるということですね。

佐々木 そういうことですね。

中谷キャスター そうですよね。
優木さん、どうですかね。

優木 話をいろいろと聞いていて、公共性、テレビが担わなければいけないという事じゃないかもしれないですけども、情報の公共性という事もすごく大事なことじゃないかと思っていて、エンターテイメントの世界だったら、自分の好きなものだけを見て、生きて行って構わないと思うんですけれども、たとえばここで、もうすぐ津波が来ますよっていう情報は、欲しいという人だけが欲しいでいいのか、という事とか。たとえば、その時にツィッターですごく情報が回った、でもその中に間違いだったり、ここでもう一回起きるといううわさが流れているとか、そういういろんな噂にみんながおびえたりしたというのも事実あって、なんかこうみんなで知っておいたほうがいい情報みたいなものもやっぱりあるんじゃないかなというのがすごくあるんです。

猪子 事実上、そこはすでに通信が担い始めていて、たとえば地震の情報はケータイに届くとか。やっぱり、一番便利ですよね。

優木 たとえば、通信を使っていないおじいちゃんおばあちゃんは、じゃ、どうするのかとか。

猪子 まあ、事実上、テレビの普及台数よりもケータイの普及台数のほうが多いので。

優木 現状はそうですけど、スマートテレビが今後普及していったときに、ここがものすごく助かることになるかもしれないっていうふうな。

佐々木 そうなんですよね。そこの議論っていうのは、テクノロジーの進化のバランスというのがあって、要するに、今、優木さんがおっしゃったように、現状のスマートテレビだと、日本のテレビ局とかが持っているマスメディアの機能がうまくカバーしきれてないのが事実なんです。自分の好みの情報を知るのには、すごく向いているんだけど、みんなが知らない情報、どうするんですか。そこは、現状、テレビ局、新聞社ではできません。ただ、これはウェブの技術の世界で、もう少し先に進まない話すごくされていて、今のテレビ局の仕組みではない、新しいマスメディア、新しいメディア局みたいのができて、そこがそういうのを担うのになるんじゃないかという可能性も実は検討はされてるわけなんです。実際、アメリカなんかだと、新しいネットメディア局ができていて、従来、新聞社やテレビ局が持っていた公共性を担うことも起きてきている。

中村 テレビ対ネットみたいな対立構造でとらえる時代はもう終わって、テレビもネットも、紙も情報も、すべて合わせて使いこなすってことじゃないですか。

佐々木 あの、放送局、たとえばNHKが作っているNHKスペシャルとか、クローズアップ現代のような、非常に質が高いドキュメンタリーがあって、こういうのはいわゆるアマチュアでは作れないです。そういうようなプロが作って取材した番組もあり、本当に当事者ですね、被災者が自分でYouTubeにアップした番組もあり、そういうのを複合的にたくさん積み重ねて私たちの新しいメディア空間ができる。放送局の役割はちゃんと残るし、新しいメディアが新しい役割が出てくる。すみわけというか、補完関係ですね。そういう補完性というのが僕はすごく大事だと思うわけです。

中谷キャスター そういう風に進むべきだというわけですね。
はい、これからですね。スマートテレビが私たちの未来をどのように変えるのか。というテーマで、皆さんのスマートテレビの未来の姿を想定して、キーワードで表していただきたい。

はいそれでは、一斉にパターンを挙げていただきましょう。せーの。佐々木さんから。

佐々木 「チャンネル」から「場」へ。
そうですね。従来のテレビを端的に説明するには、「チャンネル」という言葉だと思います。お茶の間のチャンネル争いとか、チャンネルを変える。その概念が今終わりつつあって、多分、これからはいろんな議論をしたりとか、いろんなものを家族で楽しむ、あるいは、友達と楽しむ。そういう場を設定していく場所として放送局というのは生まれ変わっていく、テレビがそういう世界になっていくと今すごく強く思っています。だから、「チャンネル」から「場」へ変わるんだよと。

中谷キャスター ある意味、ステージが広がっている気がしますね。

佐々木 もちろん。マインドセットを変えれば、ものすごく新しく面白い時代が来ると思います。こういう方向に進んで行っていただきたいなと思っています。

中谷キャスター 中村さん。

中村 みんな
テレビの世界もどんどん広がると思うんですね。部屋でサッカー見るだけじゃなくて、外に出ましょうと。そんなかに非常に大きな画面の街頭テレビがあって、それでみんなで楽しむ。それで、手のひらでは、スマートフォンを持って、別のアングルのものを見たり、それを振って自分の応援メッセージを届けたりする、あるいは、教室の中で、みんなで電子黒板を見て、それもテレビ。手元の端末では、放送で教科書の教材が送られてきて、クラスのみんながネットでつながって学ぶ。そういったことも実現するでしょうし。みんなのつながるテレビになって。

中谷キャスター 温故知新じゃないですけど、昔の良き時代をまたデジタルによって再現できる。
では猪子さん。

猪子 都市の中のリビング
家の中っていうよりは、その、家の外で、使われる利用が増えていくんじゃないかなと思っていて、それは自宅ではないんだけど、自分の好きな友達とか、人と集まって、少人数集まって、こういうものを使っていく利用が増えていくんじゃないかなと思っている。

中谷キャスター 優木さん。

優木 ホームルーム
皆さん方と方向、考え方一緒なんですけど。なんかこう、学校でみんなが話し合いをする場で、でも先生がいなけりゃだめで、先生が見守っている中で、みんながいろんなことを言いあうから、まとまるという。だから、あのスマートテレビで送り出す情報は、先生であったらいいな。みんなで会話できる場になればいいなと、思ったりして。テレビって家にあって、部屋にあるから、ホームルーム。

中谷キャスター ずいぶん、まとめた感じがしますね。いいキーワードだと思いますね。

佐々木 あの、結局ね、なかなか今みたいな変革期、メディアの大変革期なので、作ってる側ですね、放送局の人、新聞社の人、出版社、なかなかマインドセット、自分の考え方の基盤そのものを変えられないです。また、不安もすごく多いと思いますよ。変化することに対する、でもね、考えようによっては、これほど面白い時代はないわけであって。僕は、数百年に一度の、大変換期で、これを楽しまなきゃ何を楽しむんだ。

中谷キャスター 数百年に一度ですか。

佐々木 そうですよ。産業革命のときに、産業革命を牽引した人はきっと楽しかったと思います。あのときに機械を打ち壊しやった人は楽しくなかったと思います。

中村 なるほど。

佐々木 できれば、この時代に僕ら機械打ちこわしやって、マイナスに乗り切るんじゃなくて、もう、しょうがないじゃない、産業革命来ちゃったんだから。楽しもうよという風に、気持ちを切り替えられる。それをメディアの人にぜひ、頑張ってほしいなと思います。

中谷キャスター 一時間半にわたってお伝えしてきました放送記念日特集、広がるスマートテレビ、スマートテレビは生活を変え、放送を変える大きな可能性を持っています。テレビとどう向き合い、どう使っていくかは、あなた自身にゆだねられるようになります。そして、我々放送を作る側も、この大きな変革に向き合っていかなければなりません。
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