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素人だから言えることもある

E3で明確になったゲーム機の未来(ホームサーバの戦い・第122章)

宮本茂氏が語った「テレビからの自立」

現在、ロサンゼルスでE3(Electronic Entertainment Expo)が開かれている。任天堂マイクロソフト、ソニーのそれぞれのカンファレンスが開かれたが、そのうち任天堂宮本茂氏の発言に注目した。
Wii Uの開発が始まったのは、6年前のWiiの発売の翌年のこと。任天堂の社内で次のハードをどうするかが話し合われ、そこで達した結論は、「家庭のリビングの中心になれるエンターテイメントツールになるには、テレビに依存していてはいけない」というものだった。
家庭用のコンソールゲーム機はその登場以来、ずっと変わらずテレビに接続して遊ぶものだった。そのため、「テレビより上の立場にはなれなかった」と宮本氏は言う。誰かがテレビを見ていたらゲームができないし、テレビの電源が入るまでゲーム画面が見られない。それが「テレビに依存する」ということだ。
そこで任天堂は、「次のゲーム機は小さくてもいいから、いつでも見られる自分のモニターを持つようにしよう。そして家族がリビングに来た時、一番に見るモニターになるようにしよう」と考えた、それがWii Uという新ハードの始まりになったという。
その結果として完成した「Wii U GamePad」は、ファミコンの登場から30年に及ぶ長いコンソール機の歴史において、初めて自分専用の画面を持つハードとなった。宮本氏は、「このテレビからの自立によって、テレビに依存してきたゲーム機の歴史が大きく変わると思う。いつでも手元にあって、素早くゲームを立ち上げられる」と述べた。
また任天堂は、これまでにも何度か取り組んできた、携帯ゲーム機と据え置きのコンソールゲーム機とを繋ぐゲームについても、Wii Uでその成果を見せる。宮本氏は、「(Wii U GamePadは)サブモニターとして大型テレビと一緒に使えるので、家庭のテレビの使われ方も大きく変わっていくと思う」と語った。 (「Nintendo All-Access Presentation @ E3 2012」レポート 宮本茂氏が語るWii Uの“テレビからの自立”と「ピクミン3」)
ゲームの据え置き機の宿命としてテレビにつながれているということがある。任天堂のゲームが常にファミリー向けを意識しているのは、親から嫌われたくないという気持ちがあるからだ。去年のE3での「社長が訊く」でも、岩田社長たちはこんな対談をしていた。
岩田 いままでずっと、据置機というのはリビングの中心にテレビという家電製品があって、テレビゲームはずっと、それを利用させてもらうという形でやってきました。
竹田(玄洋)さんはよく、「テレビに寄生している」という言い方をするんですけど(笑)。
ところが、「テレビゲームが自分で独立した画面を持ったら何ができるのか?」 そう考えると、我々が感じていたいろいろな問題が解決できる、ということなんですよね。
宮本 そうです。ここへ来て、家庭にあるテレビがいろんなことに使われるようになったり、テレビのシステムが複雑になったことで電源をたちあげるのに時間がかかったりするようになってきましたよね。
WiiはWiiで、青いランプでおしらせをしてきましたけど、ランプでおしらせできる情報量は限界がありましたし・・・。(社長が訊くE3特別編)( アップルと任天堂が目指すカジュアル化への道(ホームサーバの戦い・第93章))

「子供がテレビゲームで遊んだ後、コントローラーが片付けられていないのを見て、お母さんがきーっとなっているとか、家には既に複数のゲーム機があって、お母さんはもう1台もいらないと思っているとか、とにかくゲーム機は邪険に思われていたんです。だから、家族の誰からも嫌われないようにしないと、ゲーム人口の拡大なんかできっこないというのが、まずありました」
お母さんは高性能に喜ばない。だから、技術を基点とする設計は意味がない。では、お母さんは何を嫌い、何に喜ぶのか。お母さんのご機嫌を基点とする発想が、Wiiを特徴付けていく。(井上理著「任天堂“驚き”を生む方程式」日本経済新聞出版社)(任天堂がWiiで映像配信を始める理由(ホームサーバの戦い・第32章))

テレビは家族で見るものだから、家族から嫌われたら、ゲーム機が売れるわけがないという発想があるからだ。だが、Wii Uがタブレット式コントローラを採用したのは、別にタブレットが流行っているから採用したわけではない。
岩田 ただ、社外のみなさんは開発の過程をご存じないわけですから、2011年に、これが発表されたのをご覧になったみなさんには、「あ、任天堂はコンソールにタブレットをつけるのか」って見えてしまうのかもしれないなと思うんです。
宮本 ああ、はい、はい。
岩田 でも、僕らがその議論をしていたときって、世の中に「タブレット」というデバイスはまだ一般化していない時代でこれは、ニンテンドー3DSのときとすごく似ているんですけど、社内で議論して開発していたら、ちょうど世の中に投じる頃にそういうものがホットになっている、というのが何か続いているな、という気がしているんです。
宮本 どんどん時代がそうなってきましたね。こう(縦向きに)すればタブレットに見えてしまうわけで。こう(横向きに)すれば、テレビの画面とあわせて2画面のDSとして使えるよね、という(笑)。
だから、DSとのコネクティビティーをやりたいとか、タブレットに近づこうとか、そんなことを思っていたわけじゃないんですよね。(社長が訊くE3特別編)( アップルと任天堂が目指すカジュアル化への道(ホームサーバの戦い・第93章) )
任天堂としては、テレビにつながれている限り、テレビを独占できない。そうなると相対的に、ゲームをやる時間が減ってしまう。それだったら、自分専用の画面を作ったらどうかというのがWii Uの発想の元だった。おそらくソニーやマイクロソフトはそんな発想はしない。比較的年齢層が高く自分の部屋に専用のテレビを持つ層が多いからだ。幼年層の多い任天堂ならではの悩みだったのである。

据え置き機と携帯ゲーム機との連携

任天堂は、もともと携帯ゲーム機と据え置き機と連携させようという発想がない。それは、これからはトランスファリングが主流になる?(ホームサーバの戦い・第92章) で、触れたようにアカウントがハード別に割り振られている。一方、ソニーはユーザー登録で、PSPやPS VitaとPS3をひもづけている。すると何が起こるか。特に今回のE3でPS VitaとPS3の連携が「クロスプラットフォーム機能」として発表された。
●Cross-Play(クロスプレイ)
PS3® およびPS Vitaユーザーがゲームの協力プレイ、対戦などを楽しめる機能です。
●Cross-Controller(クロスコントローラー)
PS Vita をコントローラーとして、PS Vitaのタッチスクリーン、タッチパッド、高精度6軸センサーやカメラなどの豊富な機能を活用し、PS3®の専用ソフトウェアを操作することができます。大画面のTVと、PS Vita のディスプレイの2つの異なるスクリーンを連携させることで、これまでとは違った操作感で楽しむことができます。
●Cross-Save(クロスセーブ)
PS3®およびPS Vitaのセーブデータを両プラットフォーム間で共有することで、ご家庭のPS3®で楽しまれていたゲームの続きを、外出先でもPS Vitaで継続的にプレイすることが可能になります。
●Cross-Goods(クロスグッズ)
購入済みダウンロードコンテンツやユーザー個人が作成した独自のコンテンツ等を、PS3®およびPS Vitaで楽しめる機能です。
ユーザーの皆様は、同コンテンツを両プラットフォーム間で共有するだけでなく、一方のプラットフォームから他方のプラットフォームへ受け渡すこと等も可能です。
●Remote Play(リモートプレイ)
PS Vitaを使って、離れたところにあるPS3®を遠隔操作し、PS3®内のゲームやビデオなどをPS Vita上で楽しめる機能です。(PlayStation®3/PlayStation®Vita 「cross platform feature」(クロスプラットフォーム機能)の展開を加速 今夏以降、新作タイトルを順次発売)
リモートプレイは、PSPとPS3の間ですでにできている。また、クロスセーブもコナミが発表した「トランスファリング」で実現している。
「トランスファリング」は、セーブデータを共有することで、一つのゲームを据え置き型ゲーム機携帯型ゲーム機の両方で、継続してプレーすることができる機能です。これにより、電車などの移動中には携帯型ゲーム機でストーリーを進め、ご家庭では据え置き型ゲーム機を接続したテレビの大画面でクライマックスを堪能するといった、好きなときに好きな場所で、最適な環境を選択してゲームを楽しむことが可能となります。(プラットフォームの垣根を越えた遊びを提案「トランスファリング」で広がるゲームの新しいプレースタイル第1弾は「METAL GEAR」シリーズで実現)
クロスプラットフォーム機能」の発表で注目したいのが、クロスコントローラーだ。違った二画面を連携させるという仕組みがWii Uを想像させるからだ。また、マイクロソフトも「Xbox SmartGlass」なるものを発表した。「西川善司の3DゲームファンのためのXbox SmartGlass講座 MicrosoftもSCEも“Wii U的なこと”をやりだした」でこんな記事があった。
Xbox SmartGlassは、一言で言うならばXbox 360と外部機器を接続するソリューションと言うことになる。
今回のMEDIA BRIEFINGでは、「Xbox 360側で見ている映画、テレビ番組の関連情報、たとえば出演俳優や、世界観解説といったものが、スマートフォンやタブレットの画面に出せる」といった事例や、「Internet Explorer for Xbox 360が提供され、その操作をスマートフォンやタブレットで行なえる」といった事例が紹介された。
もっとも興味深かったのは、Xbox 360にマルチ画面ソリューションを追加する機能で、この技術はゲームにも応用できることが紹介された。
本誌はゲームメディアなので、ゲーム向けに活用できそうな、このマルチ画面ソリューションにスポットをあてた話題を取り扱うが、その場合、メインとなる画面はホスト機となるXbox 360本体がレンダリングして出力した映像になる。これは普通にこれまで通り大画面テレビやPCディスプレイに出力するが、さらなる追加画面をXbox SmartGlassクライアント・アプリをインストールしたスマートフォンやタブレット(あるいはWindowsベースのPCでもOK)に出力するというのがXbox SmartGlassが提供するマルチ画面ソリューションになる。(西川善司の3DゲームファンのためのXbox SmartGlass講座 MicrosoftもSCEも“Wii U的なこと”をやりだした)
Xboxにはモバイルゲーム機器がないので、普通のスマートフォンやタブレットで使えるというのが興味深い。また、任天堂・ソニーを含めた三社の機能の違いにも触れている。
Wii Uは、6.2インチサイズの液晶画面を搭載した「Wii U Game Pad」がキーデバイスとなっており、テレビ側のメインゲーム画面と、このWii U Game Pad側の子画面を連携させたマルチ画面構成の新しいゲーム体験を提案したが、Xbox SmartGlassは、このコンセプトの一部を現行機のXbox 360で実現して見せたことになる。
Xbox SmartGlassは、技術的にはイーサネット(有線LAN、無線LAN)経由での接続で実現されると見られ、Xbox 360側がサーバーホストとなって、対応スマートフォン、タブレット上で走るクライアントアプリケーションが、Xbox 360側と通信し、映像そのものは対応スマートフォン、タブレット上で描画される仕組みとなると思われる。
一方、Wii Uの場合は、Wii Uの本体側で2画面分をレンダリングし、この映像フレームをエンコード無し、遅延無しでそのままWHDIやWirelessHDのようなワイヤレス映像伝送方式で送る仕組みだ。
Xbox SmartGlassの方でも、Xbox 360側でレンダリングしたリッチなゲーム映像を無線LAN経由で送れなくはないだろうが、原理的に避けられない遅延の問題などを考えると、Xbox SmartGlassではリアルタイム性の低いコンテンツを取り扱うのが主体となるはずだ。つまり、Xbox SmartGlassは、前述したコンセプトデモで示されたような、メインゲーム画面を補助、補完するような映像表示がメインとなる。
その意味では手元の子画面(Wii U Game Padの画面)でゲーム本編をプレイすることまでが可能なWii Uには、Wii Uなりのアドバンテージはあり、完全にXbox SmartGlassにお株を奪われたわけではない。
また、Xbox SmartGlassは、ゲームコントローラーとスマートフォン/タブレットが別々のデバイスとなっているため、今回のコンセプトデモでも、1度ゲーム側をPAUSEして、スマートフォン/タブレットに持ち替える様子が見て取れた。Wii U Game Padの場合は、液晶画面とコントローラーが一体化されているので、ゲームプレイの進行を止めることなく子画面にアクセスでき、シームレスな体験が楽しめる。
ただ、「ゲームメイン画面に、タッチインターフェイス対応な補助的な画面表示要素を組み合わせたゲーム体験を提供する」という括りでは両者は競合する。
そして、今回のE3で、SCEも、PlayStation Vitaをプレイステーション 3に接続し、そのコントローラー的に活用できるようにする「Cross-Controller」(クロスコントローラ)を発表した。これは、PS Vitaのタッチスクリーン、タッチパッド、高精度6軸センサー、内蔵カメラなどの各種センサー類を活用し、PS3用ゲームタイトルを、PS Vitaの画面に映像を表示させながら操作、プレイできるようにするもので、Xbox SmartGlass以上にWii U Game Padライクなことを実現する。 (西川善司の3DゲームファンのためのXbox SmartGlass講座 MicrosoftもSCEも“Wii U的なこと”をやりだした)
Wiiが発売された時、ソニーやマイクロソフトPS MOVEKINECTで後を追ったが、かなり遅れた。今回はほぼ同時に同じような機能でWii Uと並ぶことになる。来年の三社のゲーム機の戦いもかなり面白くなってきた。
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