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週刊朝日の謝罪〜ジャーナリズムは官僚主義と矛盾する

週刊朝日の謝罪はあったが

10月19日朝日新聞朝刊38面に、こんな記事があった。
朝日新聞出版が「おわび」 週刊朝日の橋下市長連載で

 朝日新聞出版は18日、同社が発行した「週刊朝日」10月26日号に掲載された橋下徹・大阪市長に関する連載記事「ハシシタ 奴の本性」について、河畠大四・週刊朝日編集長によるおわびのコメントを発表した。コメントの全文は以下の通り。

 記事中で、同和地区を特定するような表現など、不適切な記述が複数ありました。橋下徹・大阪市長をはじめ、多くのみなさまにご不快な思いをさせ、ご迷惑をおかけしたことを深くおわびします。私どもは差別を是認したり、助長したりする意図は毛頭ありませんが、不適切な記述をしたことについて、深刻に受け止めています。弊誌の次号で「おわび」を掲載いたします。

会見で橋下市長 改めて連載批判

 橋下徹・大阪市長は18日の定例記者会見で、朝日新聞出版が発行した「週刊朝日」10月26日号に掲載された連載記事について、「僕の人格を否定する根拠として、先祖や縁戚、DNAを挙げて過去を暴き出していくのは公人としても認められない」と改めて批判した。

 橋下氏は記事内容について、家族の出自や被差別部落の地名に触れた点などを「血脈主義につながる危険な思想。日本社会で許されない言論活動」と強く非難した。 (朝日新聞2012年10月19日38面)

この「ハシシタ 奴の本性」という記事は、ノンフィクション作家の佐野眞一氏がメインとなった連載だが、週刊朝日が佐野氏を起用したのは、僕の想像では、やはり佐野氏を起用した週刊ポスト連載の孫正義氏の伝記『あんぽん−孫正義伝』をイメージしていると思われる。

ご承知のように、週刊誌には出版社系の週刊誌と新聞社系の週刊誌に分かれ、週刊ポストの小学館であれば、多少のクレームがあっても突っぱねられたが、朝日新聞という新聞社をバックに控えた週刊朝日では突っぱねることができなかった。僕は、前項日本のメディアがなぜ誤報の問題よりも犯人叩きが大事なのかでも、記者クラブは官僚システムになっていると書いた。今回の事件は、出版社系の週刊誌よりも新聞社系の週刊誌がより官僚システムに近いことを示している。それだけ、権力に近いため、上の言うことを聞かざるを得ないのだ。

記者会見の言葉から読み解くそれぞれの立場

 そこで、MSN産経ニュースから記者会見の記事を探った。理想としては、朝日新聞社の記者が言う、
朝日新聞記者 ご承知の上だと思うが、週刊朝日を発行しているのは朝日新聞出版。弊社の子会社だが、編集権は別であります。記事の内容をわれわれがチェックすることもできない。朝日新聞自体が部落差別とか血脈主義を肯定する立場とは私は思っていない。(会見詳報(2)「子会社にやらせたい放題ではないか」)
のように、それぞれ編集権があるという考え方だ。これはジャーナリストとしては至極まっとうな意見である。一方、橋下氏は
橋下氏 じゃあ子会社にやらせたい放題ではないか。100%子会社ですから、朝日新聞の記者も週刊朝日にいっている。週刊朝日に株主としてどういう態度をとるのか。考え方が違うなら、出資を引き上げたらいいだけの話。うちは関係ないと言い切ったらいい。やらないのは週刊朝日の今回の記事を肯定したととらざるをえない。(会見詳報(2)「子会社にやらせたい放題ではないか」)
と答える。これは、あくまでも新聞社といえど単なる官僚システムの一つだと見切っている。官僚システムなら親分がいて金を出しているからだ。そこにはジャーナリストだという意識はない。

橋下氏は、記者会見で議論をしようといった。しかし、記者会見は議論の場ではない。あくまでも橋下市長の一方的な意見を述べる場なのだ。もちろん、質問は許される。だが、新聞記者に本社の代表責任を持たせる新聞社などない。

橋下氏 親会社も責任がある。100%株主ですから。週刊朝日は連絡をしてきまして、直接会いたいと言っているが、記者会見の場では嫌らしい。朝日新聞社が「週刊朝日の記事はおかしい」と、許されないときちんと表明して、資本関係を見直すとなれば、別の関係になる。(会見詳報(3完)「全人格否定のため宣戦布告された」)
週刊朝日は連絡をしてきまして、直接会いたいと言っているが、記者会見の場では嫌らしい。」というのは、いかにも官僚組織らしい。官僚組織は、個人個人が明らかになることを嫌う。おもしろいのは、その数時間後に一方的にお詫びを通告したことだ。ジャーナリズムとして戦うのではなく、官僚システムとして親会社の朝日新聞の意向を受けてというにおいがプンプンする。直後の橋下氏のツィッターを見ると
週刊朝日が謝罪を出した。僕は謝罪されればそれでノーサイドだけど、ただこの週刊朝日、わずか数時間前まで、「2回目もご期待ください。1回目、まだ読んでない方は是非!」ってツイッターしていた。この謝罪は信じても良いのかな。週刊朝日の集団は、今回の件は全く問題なしと言う認識だったはず。
(https://twitter.com/t_ishin/status/258948514351022081)
さて、これから続編があるかどうかわからないが、あるとしても、ずいぶんおとなしくなるかもしれない。佐野氏としては、週刊朝日の対応にあきれ返って、「週刊朝日の内幕」とでも題して出版社系の週刊誌に書き出したら面白い。
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