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素人だから言えることもある

ネット時代の2極化と無駄の重要さ

クリエイターとサーバー

佐々木俊尚氏のツィートから、
単純労働は海外へ、そしてロボットへ。優秀な頭脳はクラウドソーシングでマッチング。労働の二極化が明白な未来像。/2つのサーバー 生まれる雇用、消える職:日本経済新聞 http://s.nikkei.com/V0KtKJ
(https://twitter.com/sasakitoshinao/status/272842561083809792)
日経新聞2つのサーバー 生まれる雇用、消える職を読んだ。その中に、二人のアメリカの識者の言葉が出てくる。
 「今後の世界は2種類の労働者しかいなくなる。クリエーターとサーバー(奉仕者)だ」。米コラムニストのトーマス・フリードマン(59)は近著でこう言い切る。

(中略)

 ネット上のデータを用い、アナリストなどの仕事をコンピューターがこなそうとしている。クラウド上のサーバーは知識階層とされた職をも奪う。「破壊的イノベーションは職を生み、効率的イノベーションは職を奪う」。米ハーバード大教授のクレイトン・クリステンセン(60)は言う。 (2つのサーバー 生まれる雇用、消える職)

トーマス・フリードマンは「フラット化する世界」、クレイトン・クリステンセンは「イノベーションのジレンマ」の著者である。この「フラット化する世界」については、個人情報が輸出される「フラット化する世界」で引用した。
 私の辞書の無敵の民とは、「自分の仕事がアウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されることがない人」を意味する。・・・フラットな世界には「代替可能な仕事と代替不可能な仕事の二つしかない」。・・・フラットな世界の最も顕著な特徴の一つは、たくさんの仕事が代替可能になったことだ。(トーマス・フリードマン著/伏見威蕃訳「フラット化する世界」日本経済新聞社)
また、クレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」についても「イノベーションのジレンマ」とソニーで引用した。

ここでいう「破壊的イノベーション」とは、<

 大手企業は一般的に、要求度の高い顧客のニーズに応えるため、より高機能な商品の開発に力を入れる。この性能向上を求める絶え間ない努力を、 Christensen は「持続的イノベーション」と呼ぶ。

 「技術進歩のレベルが顧客の実際のニーズと活用能力をはるかに超えると、行き過ぎが裏目に出る。新興企業に、より安く単純で、高機能を必要としない顧客から見れば十分な性能を持つ商品を提供する機会を与えてしまうのだ」と、 Christensen は言う。そして、これを「破壊的イノベーション」と名づける。 ( 「 イノベーションのジレンマに陥る優良企業たち 」 )

インターネットは「破壊的イノベーション」そのものだ。「持続的イノベーション」(日経新聞では「効率的イノベーション」)とは、今まで成り立ってきた企業の経営努力である。無駄を省き、コストを限界まで減らしてきた企業そのものがインターネットの「破壊的イノベーション」によってリセットされる。

スペキュラトゥールとランチェ

トーマス・フリードマンのクリエーターとサーバー(奉仕者)という言葉から思い出したことがある。「アイデアの作り方」を書いたジェームズ・W・ヤングが紹介したイタリアの社会学者のパレートの言葉である。
パレートは、この世界の全人間は二つの主要なタイプに大別できると考えた。彼はこの本をフランス語で書いたのでこの二つのタイプをスペキュラトゥール及びランチェと名づけた。

この分類によるスペキュラトゥールとは英語の<投機的>というほどの意味の言葉である。つまり、ザ・スペキュラトゥールとは投機的タイプの人間ということになる。このタイプの顕著な特徴は、パレートによれば、新しい組み合わせの可能性に常に夢中になっているという点である。

(中略)

パレートはこの投機的タイプの人間の中に企業家、つまり財政や経営の計画に携わる人々ばかりでなく、あらゆる種類の発明や、パレートが<政治・外交的再構成>と名づけている活動に従事する人々をも含めている。

端的にいえば、(たとえばわが国のルーズヴェルト大統領のように)もうこの辺で十分だとうち切ることができないで、どうすればまだこれを変革しうるかと思索するあらゆる分野の人々がすべてこのタイプに含まれているわけである。

パレートがもう一つのタイプを説明するのに使ったザ・ランチェという言葉は英語に訳すと株主(ストックホルダー)ということになる。どうも私にはストックホルダーよりはむしろ<鴨にされる人(バッグホルダー)>のように思えるのだが―――。この種の人々は、彼の説によると、型にはまった、着実にものごとをやる、想像力に乏しい、保守的な人間で、先にいった投機的な人々によって操られる側の人々である。 (ジェームス・W・ヤング著/今井茂雄訳「アイデアのつくり方」阪急コミュニケーションズ)(あらゆる知識・アイデアはクロス・カップリングである

スペキュラトゥールは、新しい組み合わせの可能性に常に夢中になっている人間であり、ランチェは型にはまった、着実にものごとをやる、想像力に乏しい、保守的な人間となる。これはフリードマンのクリエーターとサーバー(奉仕者)の別名である。インターネットによって、このサーバー(奉仕者)の役割が海外に移ったり、コンピュータによって代用される。そのため、サーバーの人々は徹底的に買いたたかれる。

効率的に物事を考える人間は、限界までコストカットをしてきたので、これ以上は無理だと考えている。そうなると、効率的に物事を考える人間自身が無駄となる。週刊フジテレビ批評「メディアトラブルとジャーナリズムのあり方」の中で、江川紹子氏がこんなことを言っているのを思い出した。

江川紹子 背景としてですね。工場など生産現場だけじゃなくて、あらゆる場所で、スピードとか効率だとか、そういったものが求められてることがありますよね。無駄が嫌われると。本当は、テレビとか新聞とか出版とか言うのは、実は無駄をいっぱいしてその中からそれこそ人間力を養っていく、ということがあると思うんですけれど。それが非常に今、経済状態も含めてですね、やりにくくなっていると。これをどうするかというと、個々の人の努力だけでなく、全体的な(抜き書き週刊フジテレビ批評「メディアトラブルとジャーナリズムのあり方」
ここではジャーナリズムについて語られているが、クリエイタ―としても同じことである。クリエイターは常に人と違ったアイデアを出すことを求められているからである。みんながみんな効率的に考えていては、同じアイデアにしかならない。今まで省いてきた無駄の中から、アイデアを拾い上げて育てていかなければならないのだ。ノーベル賞を受賞した山中伸弥氏は、「大発見」の思考法という本の中で、こんなことを言っている。
今は効率が最優先される社会ですが、一見遊びに見えたり、無駄に見えたりすることの中に、実は豊かなものや未知なるものがたくさん隠れているのかもしれないですね。無駄なものを削ぎ落とそうとして、そうした未来の種まで捨て去ってしまわないようにしたいものです。(山中伸弥・益川敏英著「大発見」の思考法/文春新書

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