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素人だから言えることもある

テレビの犯人探しと現実の犯人探し

 あるあるの検証番組で苦情のメールが殺到しているらしい。

関テレの検証番組に苦情電話345件」(読売新聞)

「なぜ、出演した制作スタッフの顔を隠すのか」などと検証番組の制作手法を批判する意見が多く、「社長が取締役にとどまるのはおかしい」という声もあった。関西テレビには約400件のメールも届いた。
 一方、こんな記事もあった。やはり読売新聞だ。

外科医志望いなくなる」門田阪大教授、窮状訴え(読売新聞)

門田教授によると近年、外科志望の医学部卒業生が急減。その理由について、複数回答で聞いたところ、「労働時間が長い」「時間外勤務が多い」が72%を占めた。「医療事故、訴訟のリスクが高いから」との回答も多かった。当直明けに手術する場合が「ある」と答えたのは72%で、89%が「精神的負担のある職場」と考えていた。一方で、「社会的評価の高い仕事」と受け止める医師は52%だった。
 これも医療事故の犯人として外科医が訴えられるリスクが高いことを示している。いわば、これは現実の犯人探しだ。犯人になる可能性が高い職業には誰もつきたくないと考えるのも当たり前である。

 さらに、埼玉県の上田知事の不適切発言

自衛官は、人殺しの練習をしている」 上田・埼玉知事(朝日新聞)

 発言は県庁職員としてのやりがいなど、使命感について触れた場面であった。「自衛官の人は、平和を守るために人殺しの練習をしている。警察官も、県民の生命や財産を守るために、人を痛めつける練習をする。だから我々は『偉い』と言って褒めたたえなければならない」と話した。

 式の後で、上田知事は「マイナスの仕事がある自衛官や警察官と比べて、県庁の仕事は多くの人に喜びを与え、自らも喜びを感じられることを説明したかった。分かりやすくするため『人殺し』という言葉を使ったが、適切ではなかった。“殺傷”とかそういう言葉を使えば良かった」と話した。

 これを「ほめ殺し」という。ともかく、外科医も自衛官も警察官も危険があるし、自分が犯人になる可能性もある。一番、安全なところはどこか。茶の間でテレビを見ることである。ところが、テレビで流されることにはウソがいっぱい。だったら、何を信じていいの。せめて犯人の顔を見せて。というわけである。視聴者は制作スタッフの顔をさらせば、一件落着と思っている。テレビドラマも、真犯人が捕まれば終わるように。

 しかし、テレビが作った「考えない人」で書いたように、テレビは人の心を映す鏡なのだ。その人が見たくないものは見えないし、見なければ、なかったことになる。ある意味、スタッフの顔が映らなかったことは象徴的である。そこに視聴者の顔が映らなかったわけだから。

 視聴者は不安の世の中だから、テレビに答えを求めている。ほっと安心したいと思っている。でも、世の中、そんなに甘くない。
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