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素人だから言えることもある

今年のアメリカ年次改革要望書から

 「著作権者たちのいらだち」で再び、「アメリカ年次改革要望書」を紹介したが、すでに今年の10月18日に最新の「年次改革要望書」が出ている。

 まず「在日米国大使館」→「政策関連文書」→「経済・通商関連」→「規制改革」そこには2004年から2007年までの要望書が並んでいる。

 さてそれぞれの前年には、報告書が出ている。それを見てみよう。IT関係から

日米両首脳への第6回報告書 主な進展 情報技術(IT)

�映画館で映画の録音・録画を禁止し、日本の著作権法が規定する罰則をそのような行為を行ったものに適用する法律が2007年5月に制定された。

�米国政府と共に新しいイニシアチブを立ち上げ、アジアや世界で、2国間、地域内、多国間の取り組みを強化することで、模倣品・海賊版の取引に対処する。

�情報技術(IT)システムに係る政府調達の入札プロセスに競争を促し、透明性を向上させる改革を実施する。

�音声録音の著作権保護期間の延長、事前に設定された侵害に対する法定損害賠償制度の導入、および著作権侵害犯罪を捜査・起訴する権限の拡大を実現する措置を取ることの是非に係る検討を2007年度内に終了する。

�政府支援のプログラムを通じて開発したソフトウエアの知的財産権を受託業者が所有することを可能にするよう産業技術力強化法を改正し、当該知的財産権を商業利用する機会を増大させた。(以下略) 

 これらに対応する要望書の文面は(2006年「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」)
�II-A-5. 映画の海賊版 海賊版DVD製造に利用される盗撮版の主要な供給源を断ち切るために、映画館内における撮影機器の使用を取り締まる効果的な盗撮禁止法を制定する。

�III. 知的財産権の保護およびエンフォースメントに向けた日米の協力強化 米国と日本は、世界、特に、アジアにおける知的財産権のより一層の保護とエンフォースメントに向け協力を強化してきた。この協力関係は、利害関係を有する貿易相手国間での知的財産権のエンフォースメントに関して厳しい基準の設定を推進するための取り組みと並行して、かつこれを支持する形で緊密化させるべきである。

�VI-A-1. すべてのIT調達契約に係る法的責任を明確に定義し、その範囲を適切に規定する。府省庁がこれを実施するのを助けるため、契約書のひな型やベストプラクティスを示した指針を作成し、いかにすればIT調達契約における法的責任の問題に最も効果的に対処できるかという点についての理解を深めさせる。


�II-A-2. 著作権保護期間の延長 一般的な著作物については著作者の死後70年、また保護期間が生存期間と関係のない著作物に関しては発表後95年という現在の世界的傾向と整合性を保つよう、音声録音および著作権法で保護されるその他すべての著作物の保護期間を延長する。

�II-A-3. 職権の付与 起訴する際に必要な権利保有者の同意要件を廃止し、警察や検察側が主導して著作権侵害事件を捜査・起訴することが可能となるよう、より広範な権限を警察や検察に付与する。

�VI‐A‐�. 知的財産推進計画2006に盛り込まれた計画を遂行し、政府から支援を受けたITシステム(ソフトウエアを含む)の開発を通じて生じた知的財産に対する所有権を請負業者が保有できるようにすることにより日本のバイドール・システムの適用対象を拡大する法案を、2007年度に国会に提出する。(以下略)

 これはと思ったのを拾い出してみたのだが、文面が硬く、さらに様々なところに、散らばっているので、これがうまく対応しているかは、自信がない。

 さて、今年の要望書のIT部門を見てみよう。その中の、「著作権者たちのいらだち」でとりあげた知的財産権保護の強化から

II. 知的財産権保護の強化 日本の知的財産推進計画に掲げられた目標や、知的財産権体制の結束をより深めるという両国の相互利益に合致するよう、米国は日本に対し、以下の提言を採用するよう求める。

II-A. エンフォースメント制度 米国は、著作物の保護強化に向け日本が多様な方法を検討しており、また、2007年度末までに以下の措置を採用するか否かについての検討を終了することが確認されたことを歓迎する。この点において、米国は日本が以下の措置を講じることを提言する。

II-A-1. 法定損害賠償 侵害行為に対する抑止力となり、侵害により被った損失に対し権利者が公平に補償されることを確保し、また、実際の損害・利益を算出・立証するという困難かつ費用のかかる負担を解消することで、司法の効率を向上させる法定損害賠償制度を導入する。

II-A-2. 著作権保護期間の延長 一般的な著作物については著作者の死後70年、また保護期間が生存期間と関係のない著作物に関しては発表後95年という現在の世界的傾向と整合性を保つよう、音声録音および著作権法で保護されるその他すべての著作物の保護期間を延長する。

II-A-3. 職権の付与 起訴する際に必要な権利者の同意要件を廃止し、警察や検察側が主導して著作権侵害事件を捜査・起訴することが可能となるよう、より広範な権限を警察や検察に付与する。

II-B. オンライン上の権利侵害 侵害目的でネットワークを利用する加入者の連絡先を権利者に開示させる、より迅速かつ信頼のおける方法を採用して「通知と削除」制度を簡素化することにより、ピア・ツー・ピア・サービスを介した侵害を含むオンライン上での権利侵害を防止するための必要な措置を講じる。

II-C. デジタル・コンテンツの保護 私的複製の例外範囲を合法な源からの複製に限定し、その範囲を(ピア・ツー・ピア・サービスを介した複製物のダウンロードなど)家庭内利用の範囲を超えることを示唆する行為にまで広げない、などの措置を取ることによって、権利者が不利益を被らず、また競争法や営業秘密の保護に配慮がなされるように、デジタル・コンテンツ関連規則や規制の透明性を確保する。

II-D. IPマルチキャストに係る強制実施権 IPマルチキャストやインターネット上でのテレビ番組再放送に係る日本の施策の変更が、市場を基盤とした解決策を目指すことに一義的な重要性を置き、国際的義務に従うものとなるよう確保する。

II-E. 出版社に影響を与える著作権保護の例外 日本の著作権法第35条の教育例外規定が、著作物の通常利用の解釈と矛盾せず、権利者の正当な利益を不当に害さない特定の場合にのみ適用されることを確保する。また、科学、技術、医療、教育関連の出版社に影響を及ぼすような著作権保護の例外を追加する場合には、その案を同じ観点から、透明な方法で慎重に精査することを確保する。

II-F. 技術的保護手段 アクセス制御の無断解除および技術的保護手段の回避を目的とした、サービスおよび装置に関するあらゆる形態の不正な取引に対し、民事上・刑事上の有効な救済措置を提供する。

II-G. 特許手続き 以下の措置を講じることにより、ワークシェアリング効率を高め特許審査手続きを簡素化する。

II-F-1. 12カ月間の猶予期間 出願者、あるいは出願者から直接または間接的に情報を入手した(特許事務所を含む)第三者がその情報を公にした場合、その情報が、発明の特許性に影響を与えない期間として、12カ月間の猶予期間を規定する。

II-F-2. 特許出願審査 「断片的な」審査を防ぐための手続きを実施し、審査プロセスの最も早い段階ですべての妥当な拒絶理由を特定する。 II-H. 商標権 地理的表示保護に関する日本の慣行について情報を交換する。

 「映画盗撮防止法」が成立したので、その項目は消えたが、ここに述べられているのは、すべて著作権保護と私的複写の権利の制限と、罰則の強化である。実は、今までII-A. エンフォースメント制度II-A-1. 法定損害賠償については、省いてきた。エンフォースメントとは、「法の執行」のことであり、法定損害賠償については各国で成立しているという。(アメリカの法律)ところが日本では、対応されていない。たとえば、コンピュータソフトウェア会長の村上氏の意見書によれば、
「法定賠償制度の早期導入や、損害賠償の額を目に見える一部の侵害額の 2 倍の侵害があったと推定する規定(侵害の数量に関する推定規定)の早期導入をして頂きたい。」
とし、その理由を
「当協会は、従前より、デジタル著作物の侵害が容易であるにもかかわらず、権利者が侵害行為を立証することが困難であり、適法行為へのインセンティブに欠ける」
としている。

  確かに続発する著作権被害に対し、いちいち立証することが困難なのはうなずける。さらに II-A-3. 職権の付与 は、著作権問題を親告罪することなので見逃せない問題である。著作権者にとって、この法定賠償制度と非親告罪制度は、より告発しやすくなったことを意味する。今まで、摘発しても親告罪だったために裁判まで持ち込めず、著作権者に立証責任があったために、膨大な手間に二の足を踏んだ。

 しかし、そのことは両刃の剣である。 ユーザーにとってみれば、わざわざコピーして聞きたいとも思わなくなる効果がある一方、そこまでのめりこむほどの興味も失ってしまう。そのことで商品が売れなくなってしまったり、新たなクリエイターが生まれないとするならば、著作権者にとっても困った事態になってしまう。今年の「要望書」もまた、来年の法案に反映されるだろうが、本当にユーザーのことを考えているかどうかが、試されているのである。
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