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素人だから言えることもある

コンテンツはコントロールできるか、そしてコンテンツは消耗するか

日経新聞に「有害サイト削除、民主が独自法案・プロバイダーに義務化」という記事があった

 民主党は18歳未満の若年者が犯罪に巻き込まれるのを防ぐため、インターネット上の違法・有害サイトの削除をプロバイダーなどに義務付ける法案の国会提出に向け、党内調整を始めた。自殺勧誘や、児童買春の温床とされる出会い系や児童ポルノなどに簡単にアクセスできないようにする狙い。与党との共同提出も視野に入れており、今月召集の通常国会での成立を目指す。

 検討中の法案では、 サイト開設者やプロバイダーは違法情報を発見し次第、削除しなくてはならないと規定。 違法かどうか明確でなくとも、有害な恐れがある場合は児童が閲覧できなくなるような措置を講じるよう義務付ける。 罰則を設けることも視野に入れる。

 おそらく、CNET Japanの記事「有害サイトへのフィルタリングサービス、利用は1.2%以下--内閣府調べ」を受け、民主党は対案を出したのだろう。フィルタリングサービスでは、おぼつかないと思い、プロバイダーに責任を負わせようとするむちゃくちゃな法案である。

コンテナーからコンテンツを取り戻せ」で語ったように、プロバイダーはコンテナーにあたり、有害サイトはコンテンツにあたる。そのコンテンツを見るも見ないも視聴者の自由であるべきだ。もちろん、未成年だから必要だという意見もあるだろう。だが、その取捨選択をプロバイダー、いや政府に任せていいのか。(プロバイダーは摘発を恐れてよりガチガチのサイトのみになり、収益を落とすか、海外に逃げるだけだ)

 そもそもこういう発想はどこから来るか。それは、パソコンやゲーム機の始まった頃を見ればわかる。その頃は、コンテンツ(つまりソフト)はコンテナー(つまりハード)のおまけだった。機械が変われば、ソフトも変わった。共通のソフトが使えるなんてことは、最近のことである。政治家は、いまだにその発想から抜け出していない。有害サイトは、プロバイダーが管理できると思い込んでいる。

 「Wiiの成功と限界」を書いていて、日本のメーカーの発想もまた、コンテナーがコンテンツをコントロールできるという考えに落ち込んでいることを知った。そして、コンテンツ側も、それに甘んじているのである。これからの時代、もっとコンテンツの権利を強くしていかなくては、日本は世界で生き残っていくことはできないだろう。今まで、日本のメーカーはオーディオ・ビジュアル(AV)機器などのコンテナーが主流だった。しかし、それは入れ物である。中身のコンテンツを主流にしていかなくてはならないのだ。「コンテナーからコンテンツを取り戻せ」では、この発想の基になったエピソードを紹介した。

米国の新聞業界にもインターネットのポータルサイトがニュース配信するという新たな敵が出現した。

 そこで、米国の新聞経営者は「紙」へのこだわりをかなぐり捨てて、新たな“敵”と対決すべく「電子部門を強化せよ」の戦略に転換したのだ。彼らの合言葉は「コンテナーではなく、コンテンツに注目せよ」だ。このセリフを流行らせたのがAP通信社のトム・カーリー社長で、メディア研究シンポジウムの席上、「問題はコンテナー(container)にあるのでなく、コンテンツ(contents)をいかに活用するかだ」と述べた。

(中略)

 新聞協会発行の雑誌『PRESSTIME』は、こんな社説を掲げている。 新聞社の電子版の広告は爆発的に伸びる。だから電子新聞に掲載する情報は出し惜しみするな。サイトに壁を作るな。そんなことをすると、検索エンジン経由でせっかくアクセスしてきた読者に悪い印象を与え、広告集めにマイナスの材料を自ら作ることになる。タダで閲読しているからといって「電子版」の読者を馬鹿にしてはいけない。「紙」「電子」にかかわらず読者は本来利口で熱心で協力的なのだ。コミュニティーのニュースや写真を提供してもらい、電子新聞の内容をもっとコミュニティー密着型にして新規の閲読者を獲得せよ。 (「サイバージャーナリズム論」第一章 新聞ビジネス崩壊の予兆/歌川令三著)

 しかし、日本の新聞ニュースサイトは短期間でリンク切れとなる。それ以降は有料のデータベースサイトでどうぞというわけだ。その意味で注目したいのは、廃刊したインターネットマガジンのバックナンバーがWebで読めるようになったことだ。 「インターネットマガジンバックナンバーアーカイブ」にはこうある。
インターネットマガジン』の創刊は、日本でインターネットが本格商用化された1994年で、月刊誌の形態として1994年10月号から2006年5月号まで136号を発刊してまいりました。これらに収録された記事は、日本のインターネットの1つの歴史として、資料性の高いコンテンツであると考えています

バックナンバーをウェブ上に公開することで、より多くのインターネットユーザーに利用していただけると考えています。本サービスは、多くの方々のご協力によって実現することができました。本企画にご賛同、ご協力いただきました著者の皆様、フォトグラファー、イラストレーター、デザイナー、制作関係の皆様、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

なお、今回はPDFファイルでの公開となりますが、今後はさらにウェブ上での利便性を向上すべく、記事のHTML形式での公開も予定しております。これによって、ブログでの引用、ブックマーク/クリッピングなどが行いやすくなります。また、過去の記事を現在の視点から読み直すような企画なども予定しております。

 廃刊されてももう一度読みたい有用な記事は多い。これからも、このような廃刊誌のネット復活を望みたい。紙媒体は、どうしても読んだら終わりとなり、あとから探しても見つからないことが多い。また出版による復刊は莫大な金がかかる。ネットならば、ブックマークをつければいつでも読める。これこそがコンテンツが消耗しない方法だと思うからである。
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