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素人だから言えることもある

家電・コンピュータ業界がコンテンツの囲い込みを急ぐわけ

メーカーのコンテンツ争い

CES で、映画などのコンテンツをめぐって提携が続いている。

松下電器=Google

インターネット対応プラズマテレビに、動画共有サイトYouTube」とウェブアルバムPicasa」にアクセスできる機能を搭載することを発表した。
アップル=20 世紀フォックス、ワーナー、パラマウント
Apple がTwentieth Century Foxとの契約を取り付けたと報じた。そしてBusinessWeekはこのたびの記事で、同社がWarner Bros.、Paramount Pictures、Lionsgateともまもなく契約できそうだと述べている。
ソニー=CBS
ソニーは米三大ネット局のCBSと提携し、名作ドラマなどをいつでもテレビで視聴できるサービスを始める。
マイクロソフト=NBC ユニバーサル、ディズニー、MGM スタジオ
マイクロソフトは、ゼネラル・エレクトリックNYSE:GE)傘下のNBCユニバーサル、ウォルト・ディズニー(NYSE:DIS)、映画制作・配給大手メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)傘下のMGMスタジオ、CBS(NYSE:CBS)傘下のショウタイム・ネットワークスから、マイクロソフトのオンラインサービス「Xboxライブ」とポータルサイト「MSN」向けに作品の供給を受ける契約を結んだと明らかにした。
韓国LG 電子= ネットフリックス
DVD宅配レンタル大手の米ネットフリックスは3日、韓国LG電子と提携し、テレビ向けの動画配信サービスを始めると発表した。LGが今年後半をメドに発売するデジタル家電にインターネット経由で映画などを配信する。
 一方、国内の家電メーカーの合従連衡も起こっている。たとえば、シャープと東芝、松下と日立、キャノンの三社の2つのグループが固まり、ソニー・サムスン連合と三つ巴の戦いが始まっている。
「薄型テレビの販売量が少ないメーカーは巨額投資に耐えられず、体力のある陣営との連携を深めるしか生き残りの道はない」(証券アナリスト)
という。

 CESの舞台は、華麗な薄型テレビアピールの場であり、コンテンツをめぐる商談の場でもある。消費者には大きさ・薄さを競ったところで限界がある。それよりも、自分たちのテレビにはこんなコンテンツが配信されるということを競ったほうがいいというわけだろう。しかし、なんだか人買い市場で美女を札束で買っていく風景にしか見えないのが悲しい。

 マイクロソフトは、自社のMSN、Xboxライブに流すコンテンツであり、アップルは当然、iTunes Storeのコンテンツのためである。日本の家電メーカーはどこからと思ったら、It plusにこんな記事があった。

ソニーの「ネットワークTVボックス」が具体化した通信放送融合の姿

通信放送融合に関してはテレビ局側も混乱しているが、テレビメーカー側も消費者から見て結構混乱しているように感じられる。ケーブル一本で機器の連携が図れる「HDMI」、メーカーや場所を問わずデジタル機器がつながる「DLNA」と言った統一規格がある一方、「ビエラリンク」「アクオスファミリンク」といった各社仕様のシステムをマーケティング戦略上の囲い込みツールとして打ち出している。どれもHDMIに準拠はしているが、ビエラとアクオスといった異なるメーカーの製品同士はどこまで連携できるのかが分からない。

 そんななかにあってソニーもDLNA準拠の「ソニー ルームリンク」に加えて、自社製品同士で連携する「ブラビアリンク」を搭載した液晶テレビ「ブラビア」の新製品を8月末に発表した。ここまでは「ソニーよ、おまえもか」という印象だったが、よく見ると思いがけない提案型商品が含まれていた。

 今回発表された製品群の中に「ネットワークTVボックス」と名付けられた「BRX-NT1」がある。このBRX-NT1は家電メーカー5社によるハイビジョンVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービス「アクトビラ ビデオ・フル」のセットトップボックスだ。さらにアクトビラに加え、ソニーの動画共有サービス「アイビオ」、NTTのIP放送「オンデマンドTV」、USENの「Gyao」、クアビットの「クラビット・アリーナ」などに対応しているのである。ソニー純正の周辺機器が通信系放送サービスに正規対応したということだ。まさにネットワークTVボックスなのである。

 なるほど、個別に囲い込みをしている家電メーカーの上前をはねようとするいかにもソニーらしい発想である。しかし、アクトビラ自体にインターネットとつなげるつもりはない閉じたシステムである。なぜ、テレビがインターネットにつなぎたくないか。簡単である。日本のテレビ局がインターネット嫌いだからである。テレビ局は、テレビ画面にブラウザが出ることを嫌っている。

なぜ、テレビはインターネットが嫌いなのか

 日経ニューメディアの吉野次郎氏が「テレビはインターネットが嫌いなのか」というタイトルでこんなことを言っている。
 吉野氏はまず、テレビ局と芸能プロダクションの強固な繋がりや、番組制作会社を下請け化することで、テレビ局がコンテンツ産業の頂点に立つ仕組みなどを紹介。さらに、テレビ局自身が電波塔を各地に建て、テレビ以外の映像インフラの普及を抑え込んできた歴史などを紹介。

 「こうした放送を取り巻くビジネスモデルが今日のテレビの強さの基にある。そこへ、映像配信も可能な通信大手が登場。テレビ番組のブロードバンド配信を行なおうとしたため、テレビ局は強烈に抵抗した」という。

 吉野氏によれば、抵抗の裏には「米国のテレビ局の失敗」があるという。米国ではテレビ局1社が建てる電波塔は日本と比べて大幅に少なく、その結果、受信できない地域が大量に生まれていた。その穴を埋めるべく、80年代にケーブルテレビが爆発的に普及。テレビ放送の視聴シェアは70年代の90%から、90年代には40%台まで低下し、逆にケーブルテレビの有料放送加入率が9割になったという経緯がある。

 「日本のテレビ局は米国のテレビ局を反面教師として、自前の電波塔で番組を配信するという原則にこだわっている。ケーブルテレビに二次配信は認めているが、通信会社は規模が大きいため、認めなかった」(吉野氏)と分析する。

 CNET Japanαブロガーの森祐治氏の「新テレビポータル「アクトビラ」で消費者を満足させられるのか」には、
 結果、アクトビラという、日本固有のブロードバンド環境へプラグイン可能なテレビとそのサービスは、ケータイで生じている「ガラパゴス症候群(外部と隔絶された土地で固有の種が固有の進化を遂げている状態。しかし、外部からの種の侵入によって、絶滅的な状態に陥る可能性が高いこと)」に陥る—しかもケータイでは一度は生じたパラダイス状態を経ることなく—可能性が高い。

 テレビであって、テレビでないもの。ウェブブラウジングという新たな価値であっても、これまでのテレビ放送と同様、放送局の代わりにTVPSが編成したサイトしか見られない状況・構造そのものに物足りなさを感じ始めた消費者が多くなっている現在、ケータイの時のような大ブレーク=ケータイパラダイスすらあまり期待できまい。

と悲観的なものである。普通だったら、インターネットにつないで、コンテンツをダウンロードしてもらえばいいものを、わざわざ大金をはたいて、コンテンツメーカーと提携するのはそこに理由がある。テレビからは、インターネットにつなげないのである。

 もっともパソコンにもハイビジョンのディスプレイがあるし、テレビチューナーをつければテレビが見られる。PS3、Xbox360、Wii をつなげば、テレビだってブラウザを見られるので、それほど気にしなくてもいいかもしれない。少なくとも、インターネットを見られると思って、薄型テレビを買った消費者はがっかりしてしまうだろうけど。
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