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素人だから言えることもある

メディアはやっぱり屈折する

メディアは屈折する」で、僕は政治の世界で報道するそれぞれの国のメディアの動きを伝えたことがある。実は、ゲームの世界でもそれが起こっていることが明らかにされた。それは、「メタルギアソリッド4」についての小島秀夫監督の海外メディアのインタビュー記事が誤解されて日本に伝えられたことだ。

最初はこんな記事だった。

Kojima Disappointed With Metal Gear Solid 4」(グーグル日本語訳)まぁ、この翻訳ではあんまりなので、それを訳したデジタルマガジンでは、こんな記事になっていた。

小島監督「PS3ではMGS4を作れない

「初めて私たちがTGSゲームエンジンを披露したとき、スタッフは誇りに思い、とても幸せでした。
 PS3は夢のようなマシンでした。私たちはこのマシンでMGS4を行うつもりでした。そして、そのための多くのアイデアがありました。

 しかし、実際にゲーム開発を始めると、そこには多くの制約が存在していました。その制約がどんなものだったのか、それは今日あなたが目にしたものがその答えです。

 オリジナルのMGS4は、10ステップ先へと進むつもりでした。しかし、現実は1ステップ先へしか進むことができなかったのです。(そのステップは、私たちが進歩しなかったというわけではありません。)

 3年前に、私は革命的な何かを作りたかったと言ったのを覚えています。しかし、実際はCPUの性能のために、それをすることはできなかったのです。本当に。私たちはCellエンジンを限界まで使ってしまいました。

 ただ、勘違いはしないで下さい。私はPS3を批判していません。私たちは、フルスペックのPS3が提供できるものを本当に知らなかったのです。私たちは、実現できない何かを作っていました。」(小島監督「PS3ではMGS4を作れない」)

ところが、最新の記事では、
小島監督「MGS4は最高。自信を持って発売します

先日小島監督が「PS3ではMGS4を作れない」との発言をインタビューでしたとお伝えしましたが、申し訳ありません。間違ってお伝えてしまうカタチとなってしまいました。

とある。そしてその原因としてKOJIMA PRODUCTIONSのラジオ「裏ヒデ」の第001回を引用して、
小島:まずですね、インタビュー受ける時に、まあアメリカと欧州、日本は日本語で言うんですけど、むこうの方はインタビューをして、校正は出来ません。日本で言う報道と一緒なんです。どうなるかはもう、ライターさん任せなんですけど、僕は日本語で答えます。それを斉藤君が英語に直します。

 ライターさんはアメリカの人と、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、北欧の人とか、ドイツとか。各国の人が、英語を共通語として、インタビューをするんですよ。まずそこで語弊が生まれるんですよ。解釈が違ったりとか。

 まあそれは仕方がないですよね。で僕が言ったことを斉藤君が通訳して答えます。それを各国の人が英語で解釈して、自分たちんとこ持ち帰って、自分の言葉で書きます。そこで大きく、言ってることとは違うものになってます。まずそこで。

 特に今回多かったのはですね、自分で言うとちょっとあれですけど、僕は日本人なので、謙遜をします。特に謙遜をする人なんですよ。

「俺はメタルギア4をつくってるすごい奴や」とか、「今回の4はもう最高や」とかっていう、こう、アメリカ人っぽいことはよう言わんわけですよ。自分の中で合格ラインに来てても、まだまだやということを言うわけです。

 そういうことを日本語で言います。僕の言葉尻を僕らしく、斉藤君が英語に換えてくれます。海外の人は謙遜とかいう文化がないので、マジにそれを解釈して、もう悲壮感漂ってると秀夫はと、そういうことで原稿を書きます

 これがやっぱ大きく乖離した元になっているのではないかと思いますね。彼らが自国に帰って、自分の言葉で、今回はまあ英語だったんですけど、ここにありますけど、こういう風に記事に載せます。

 これはこれで、僕が言ったことを彼らが咀嚼して書いてるので間違いではないんですけど、本来の意味とは若干ここでもう変わってます。で、ここまでであればいいんですけど、これをですね、今流行りの、インタビューばっかりを集める、何て言うんですかね、このモノ載せるわけにはいかないんで、当然、著作物なんで、なので、この概要を別のホームページが書くんですよ。

斉藤:引用をしながら。

小島:ここでまた大きく変わってます。元々の見出しは?

斉藤:「MGS4 - INSIDE THE BIGGEST PS3 GAME OF ‘08」つまり「MGS4、2008年PS3の最も大きいゲームの中」

小島:これ元のホームページ、記事です。これを元に、全く別人の別の国の人がですね、
こういうのを集めてる人たちが、これを見ながら記事を書きます。これがタイトルが?

斉藤:「Kojima Disappointed With Metal Gear Solid 4」「小島はメタルギアソリッド4に満足していない

小島:ま失望していると。いうような中で、えー中は大きく咀嚼されてですね、だいぶ違うものになってます。

 この先がまたあります。これ英語です。この時点で、ここでもうだいぶおかしいんですけど、今度これを、日本のユーザーがそれぞれで翻訳して、自分のホームページとかに載せていきます。これがまあその中の一個ですけど、で?

斉藤:「CELLの限界に直面?『メタルギアソリッド4』小島氏が苦心の制作背景を明かす

小島:てゆう中で、もうPS3では無理やとか、すごいことを書いてあるんですよ。これを元にどんどんどんどん子供を産んでいって、今では「小島秀夫はPS3ではメタルギアソリッドを作れない」とか、そんなタイトルになっていってます。で中身もどんどん変わっていってます。もう謙遜とかじゃなくてもう言い切ってたりするんですけど、これが困るんですよね。(デジタルマガジン小島監督「MGS4は最高。自信を持って発売します」)

そこで、そのホームページを順番に並べてみよう。

最初に「MGS4 - INSIDE THE BIGGEST PS3 GAME OF ‘08」(グーグル日本語訳

次に「Kojima Disappointed With Metal Gear Solid 4」(グーグル日本語訳)は冒頭で紹介した。また、「CELLの限界に直面?『メタルギアソリッド4』小島氏が苦心の制作背景を明かす」はGAMESPARKの記事で現在は訂正されている。さらに、「小島秀夫はPS3ではメタルギアソリッドを作れない=小島監督「PS3ではMGS4を作れない」は、冒頭のデジタルマガジンの記事のこと。

人間は見たいものしか見えないし、聞きたいものしか聞こえない。そしてメディアはそれを増幅する。決して、真実を伝えようとしていないわけではないのだが、どうしても記者の心に潜むバイアスがその記事をゆがませる。そして読者もまた。
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