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生かさぬように、殺さぬように。ダビング10とTASPO

ダビング10

 ダビング10が、7月5日から始まるようだ。CNET Japanにも

ダビング10が7月5日にも解禁--開始当初は補償金なし

 結局、8月の北京オリンピックに間に合わなければ、レコーダーすら売れなくなり、課金した著作権料が手に入らない。そこにあるものは、利用者に対する便宜の考えはない。このチャンスを殺せば、今までの粘りに粘った議論は無駄になるからである。

 ところで、なぜ7月5日からなのかと問えば、AV Watch「ダビング10」開始日は7月5日ごろ。近日中にDpaが確定−急転直下の決着。「ダビング10に限り補償金と切り離す」に

 椎名委員の提案を受けて、村井主査は「答申案の中で期日を指定していく」と言及。Dpaの代表である関委員に意見を求めた。「正直、急転直下で日時を出せない。開始日を確定するとなるとその確認が必要。準備はできているが、関係者との話の中では2週間ぐらいは期間が必要」とした。

 6月19日から2週間で「7月3日以降」となるため、村井主査は7月生まれの委員に誕生日を尋ねた。「5日」(川村委員)、「14日」(椎名委員)の2つの候補が挙がり、村井主査は「それでは5日でよろしいでしょうか?」と問いかけた。しかし、メーカーからは「5日は土曜日で、顧客対応を考えるとまずい。4日のほうがまだいい」との声も上がり、メーカーも放送事業者もDpa内での調整の必要性を訴え、関委員は「5日をターゲットに前後する」との見込みを示した。

 村井主査は、「4日か5日。誕生日は事情により前に祝うということもありますので、7月5日という気持ちで、調整を」とし、委員会での合意に至った。開始日時について混迷を深めたダビング10だが、開始日時確定のための準備が整った。

 なぜ、誕生日かというと、実は本来始まるべき6月2日も推進委員の誕生日から採られたといういきさつがあったからだ。しかし、あまりにも安易な決定ということもできるが。また、「B-CASカード」の問題もある。それには池田信夫氏のブログ「B-CASは独禁法違反である」に詳しい。
 そもそもなぜ無料放送にCASがついているのかという根本的な問題から問い直し、これまでの経緯をいったんリセットしたほうがいい。

 CAS(conditional access system)は、有料放送のシステムとしてはどこにもあるが、無料放送にCASをつけている国は日本以外にない。FAQにも書いたことだが、事の起こりは、BSデジタルを有料放送にするか無料放送にするかで民放の意見が割れたことにある。当初はみんな強気で、有料放送でやる予定だったので、ITゼネコンに委託して100億円かけてB-CASセンターを作った。それを使ってTVショッピングをやるとか、いろんな夢を描く業者がいて、私に役員になってくれと頼んできた企業もあった。私が「BSデジタルは危ない」と止めても企画会社をつくったが、やはり失敗して企画会社を清算した。

 そういう現実をみて、各局とも弱気になり、当初は無料放送でやって、視聴者が増えてから有料に切り替えようということになった。ところが、困ったのはB-CASセンターの100億円をどうやって回収するかである。WOWOWだけならもともとCASはあるので、B-CASは必要ない。そこで彼らが考えたのが、とりあえずB-CASを全受像機に入れておき、有料放送になったとき、切り替えるという方針だった。

 しかしBSデジタルの出足は悪く、各社は数百億円の赤字で、とても有料化できる情勢ではなかった。おかげで受像機の出荷も少なく、B-CASは赤字を垂れ流していた。そこで彼らが考えたのが、無料放送である地デジにB-CASを導入するという方針だった。これによってBSよりはるかに多くの「審査料」が取れるからだ。しかし、無料放送にCASを入れる大義名分がない。そこで出てきたのが、コピーワンスによって「著作権を守る」という理由だった。

 著作権を守る大義名分が結局、ダビング10の騒動につながっている。

TASPO

 TASPOの自販機対応が関東地区では7月1日から始まる。これで全国の自販機対応が完了する。未成年者の喫煙防止という目的でこのカードが始まるわけだが、これもまた喫煙者がそれを求めたわけではない。一部では、運転免許証対応の自販機も始まるという。ところが、「タスポがないと買えない」という宣伝のウソによれば、
 当社が開発したこの装置は運転免許証を差し込むだけで、生年月日を識別することができる。酒類の自販機などで、既に約1万台に利用されている。
 従来の免許証だけでなく、もちろんICチップ入りの新型免許証にも対応する。赤外線、可視光線、紫外線によって偽造免許証も鑑別し、生年月日部分を偽造しても検知できる。
 タスポを作るのに、わざわざ運転免許証などの身分証明書のコピーを添えるぐらいなら、販売機に運転免許証を提示した方が話が早い。
 タスポの読み取り装置付き自販機はかなりの高額だが、当社のこの装置は15万円程度とコストも安い。
 わたしも未成年の喫煙防止という目的には大賛成なので、関係各所に対して、成人識別装置として、タスポだけでなく、当社の運転免許証年齢識別機も認可してほしいと申し入れてきた。
 そして、ようやくこの4月10日付で正式に認可が下りた(財務省 「成人識別装置」を装備したたばこ自動販売機と認められる機種一覧:pdfファイル)。新聞などで報道されたので、ご覧になった読者もいるだろう。
 しかし、あまりに遅かった。7月までにタスポの装置が付いていない販売機に取り付けろと言われても、当社の生産能力では無理だ。問い合わせは殺到しているが、6月末までに650台の出荷が精一杯である(もちろん、順次生産を増やしていくが)。一方、タスポは3年前から準備している。これでは、あまりにアンフェアではないか。
 つまり、650台の自販機のみで一台あたり、15万円かかるという。それならタスポ対応の自販機はどうか。たばこカード「タスポ」、その導入経緯に怒れ!によれば、
 全国のたばこ自販機は56万台。「タスポ」対応型はこれまでのものより2〜3割高くなり、旧型を改造すると7万円ほどかかるという。このため、たばこメーカー貸与自販機43万台は切り替えが可能だが、販売店所有自販機13万台については、強制力がない、周囲の状況を見て判断、費用がかかる —— などの理由で拒否するところが多かった。
 こうした状況から、日本たばこ協会などは2006年9月、財務省理財局たばこ塩事業室長あてに、すべての販売店で「タスポ」稼動が達成できるよう、「法的規制のあり方を含めた行政によるご指導等のご検討依頼」を文書で陳情した。これを受けて、財務省理財局長がたばこ小売販売業者に「タスポ」導入に協力するよう行政指導を通達、さらに、今年7月1日以降、「タスポ」識別装置のない自販機の設置を認めず、違反者には営業停止や販売許可取り消しの行政処分を科すとして締め付けを強めた。(たばこカード「タスポ」、その導入経緯に怒れ!)
 これもまた、喫煙者の意向は関係ない。もちろん、未成年者の喫煙は問題だが、このタスポ導入はただの成人認証だけであろうか。わざわざ写真を導入した点で、
 顔写真付きにしたのは、成人認識の厳格性を高め、貸与・譲渡を禁じるためと説明されているが、自販機がカードの写真と本人の顔を見比べて「販売許可」を出すわけではない。カードを自販機の読み取り装置にかざすと使用できるだけの仕組みに顔写真は必要か。
 たばこを買う未成年の8割が自販機を利用しているとされ、「タスポ」導入は未成年の喫煙防止策の重要な一環なのだという。厚生労働省の最近の調査では、喫煙経験のある未成年者は高校3年男子で42%に達している。たばこを吸いたい未成年者は、その気になればコンビニなどでいくらも購入可能と見られるが、そうした対面販売では年齢確認を厳格にするという。深夜のコンビニでのトラブル多発が気になるところだ。(たばこカード「タスポ」、その導入経緯に怒れ!)
 おそらく写真の導入もコンビニ対応を念頭においていると思われる。コンビニ従業員に対しても、これから成人であるかどうかにも締め付けが来るであろう。しかも、タスポのチャージ機能によっておそらくクレジット会社からの収益をもくろんでいるのではないだろうか。さらに、タバコ1000円論議もある。それに対して、目立った反論がない。これは、喫煙者の立場が社会的弱者になりつつあることを示しているのではないか。現代社会では、健康に反する発言がしにくいのである。同じ花岡氏のコラム、タスポと車内アナウンスに共通する危うさに、ジョージ・オーウェルの「1984」に触れ、こんなことを語っている。
 「タスポ」「携帯」「たばこ増税」‥‥これはいったい何を意味するのかと考えて、一つの仮説に行き着いた。つまりは、管理、強制、指導されることへの忌避感とでもいうべき共通した心情の反映ではないか、と思えたのである。
 意識するにしろ、無意識にしろ、多くの人は「1984年」型の「管理社会」到来の危うさを感じているのではないか。それが、そうした具体的テーマの中で透けて見えてくる。となれば、これは強靭(きょうじん)な民主主義社会を形成していくうえで健全な反応といえ、一方で「管理する側」に痛烈な反省を迫るものとなる。
 「タスポ」については、関心のある向きは過去のコラムをお読みいただければと思うが、要は、未成年の喫煙防止目的で導入された「タスポ」の危険な側面を指摘したものだ。業界の要請によって財務省の行政指導で導入されたという経緯、たばこを買うという個人的行為がコンピューターによって完全にかつ瞬時に把握されるというシステム。そこに「お上による管理」の危うさを感じてならなかったのである

生かさぬように、殺さぬように。

 録画機器の利用者、喫煙者、さらに後期高齢者医療制度の高齢者や派遣社員を含めて社会的弱者ということができる。本来、主人公として考えられなければならない社会的弱者がいずれも蚊帳の外に置かれ、メーカーや政府によって都合よく個人情報を使って、情報管理されている。まさにかつての農民のように「生かさぬように、殺さぬように」。これは単なる勘違いであればいいのだが。
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