夢幻∞大のドリーミングメディア

素人だから言えることもある

ホリエモンのソニー買収計画

 半月も前の記事だが、IT Proで、ホリエモンソニーを買収する話が載っていた。今回は、ついでに今までまとめた買収計画を並べてみたい。

ホリエモンのソニー買収計画

沈黙を破ったホリエモン,ITを語る 
“iPhoneをやるため”にソニーを買収したかった

——当時,ポータル戦略を成功させるにはテレビ局買収しか手立てがなく,行き詰ったのではないですか。

 捕まる直前まで進めていたのは,ソニー買収計画です。「やることがなくなった」と話していた村上(世彰=解散した通称「村上ファンド」のファンドマネージャー)さんに話したら「面白いな」ということで。その時に僕が構想していたのが,今で言うところの「iPhone」を軸にした会社に変革させることです。

 野球もテレビも結果的にはうまくいかなったわけですが,消費者をネットの世界に連れ込むために必要だった知名度の向上は果たせました。そこで次にチャレンジしようと考えていたのが,ソニーのブランドと技術力を活用して,いかにネット時代の流れに則した企業に変革させるかだったわけです。

 ソニーが魅力的だったのは,音楽と映像のコンテンツを保有していること。それにオーディオ機器やモバイル,有機ELなどの技術。金融商品もあり,FeliCaの技術もある。逆にいらないと思っていたのは,大型テレビなどの家電製品で,中国の家電メーカーに売却するつもりでした。ゲーム機事業もいい時はいいが悪い時のリスクが大きいので,マイクロソフトに売却してしまえばいいと考えていました。

 そうして経営資源の選択と集中をして,iPhoneのような事業を展開できれば,コンテンツ力はAppleより強いわけですし,それがソニーの原動力になると信じていました。

——なぜ,iPhoneである必要性があったのですか。既存の携帯電話でもできそうです。

 携帯電話機は,インターネットを閲覧するブラウザ端末としては使えないと思っていたからです。

 これからのコンピューティングとネット閲覧を考えると,必ずそうなります。今やデスクトップPCはコンピュータ・グラフィックスや特殊演算などの専門分野でない限り不要です。通常のオフィスワークではノートPCで十分です。PCは急速に小型化の道をたどっています。こうした大局を見れば,PCは今よりもっと小さくなるし,すでにMixiの利用者の7割が携帯経由でしょう。

——しかし,そんなことは後付けで何とでも言えますね

 そう言われたらしょうがない。ソニーの買収計画を練っていたこと自体が,それの証左だと言えると思いますが。

——ソニー買収は実現性を持って進めていたのですか。

 ソニーの当時の時価総額は4兆円くらいだった。ライブドアが2000数百億円弱の現金を持っていて,増資による自己調達で4000億円くらい,村上さんからも7000億〜8000億円くらい出してもらい,合計で1兆数千億円のファンドを作る。さらに,LBOレバレッジド・バイアウト)でソニーの資産を担保に資金を調達すれば,TOB(株式公開買い付け)により議決権ベースで50%超の株式は取得できるかなと。さらに,ソニーの取締役は半数以上が社外取締役なので合理的な反対理由がなければ,それは友好的TOBになったはずです。

 フジテレビ買収の時は敵対的TOBしかなかったのですが,ソニーの場合はそうではないやり方ができると考えていました。そんなことを2005年11月ごろから考え,逮捕の直前まで具体的な策を練っていました。

 ここで疑問を持ったのは、なぜホリエモンAppleを買収せずに、ソニーだったのか。おそらく、ソニーのコンテンツ力を中心に考えていたに違いない。AppleiPhoneを作れたのは、一面ではコンテンツメーカーでなかったからだ。ぼくは、「イノベーションのジレンマ」とソニーで、こんなことを書いた。
 ウォークマンは、カセットレコーダーから録音機能を除き、ステレオ機能とヘッドホンをつけるというアイデアから始まった。これは、創業者井深氏の特注であった。世界中にブレイクし、ウォークマン以外のほかのメーカーは偽者扱いされたほどだ。

 ところが、アップルのiPodがブレイクするとソニーは後追いすることすら難しかった。それは、ベータ事件でソフトの大切さを学んだために、SMEを抱えており、著作権問題に対応しなければ製品開発ができなかったからだ。巨大企業になれば、どれほどアイデアが優れていても目配りが必要になってくる。

 コンテンツメーカーを抱えているゆえに、Appleの独走を止めることができなかったのだ。

ソニーのApple買収計画

ジョブズとソニー」で、ソニーの前会長出井伸之氏の「迷いと決断」(新潮新書)から引用したことがあった。これは、ステイーブ・ジョブズAppleから追放されていたころの話である。
 92、93年頃のあるリサーチで、ソニーが好きな人とアップルが好きな人はかなり重なっている、という結果が出たことがあります。さっそくアップル社の企業価値を株価評価に基づき算出してみたら、およそ4760億円と出ました。

 アップル買収。その可能性を、VAIO開発前の私はかなり真剣に考えた時期があります。アップルを買収して、コンピュータや携帯電話といったソニーの情報機器すべてを「アップル」というブランドにしよう、と考えたのです。

 おそらく、ホリエモンはそんな事実は知らないのかもしれない。一方、ゲーム機事業もいい時はいいが悪い時のリスクが大きいので,マイクロソフトに売却してしまえばいいと考えていたそうだが、マイクロソフトはソニーをライバルとは考えていたが、買収しようという話は出てこない。Xbox vs PS2(ホームサーバの戦い・第8章) で触れたように、スクウェア・任天堂・セガを買収しようとしただけである。


ブログパーツ