夢幻∞大のドリーミングメディア

素人だから言えることもある

2009年に日本の奇跡が起こる?

オランダの奇跡

 政府の政策が、どうしても、企業に対して、失業者を出さないようにお願いするという感じであれば、来年の失業者は、もっと増えるだろう。8万5千という数どころではないはずだ。何しろ、非正規雇用者は、全労働者の三分の一、1700万人以上(うち派遣社員は300万以上)だというのだから、その一割でも失業すれば、170万人ということになる。日本の稼ぎ頭である自動車や家電に集中して起こっていることは、日本全体にたちまち拡大する。企業は倒産するか、派遣社員を切るかを考えたとき、一番痛みのないほうを選ぶ。したがって、非正規雇用に集中するのは当然のことだ。したがって、お願いするということではなくて、経済構造まで変える政策を採る必要がある。

 よく、話題になるのが「オランダの奇跡」である。僕は、「ケータイホームレス・さまよえる日本人論(5)」で、「オランダの奇跡」をとりあげた。

オランダでは残業をすることが法律で禁じられている。残業をしたかったら、ほかの人間を雇わなければならない。つまり、ワークシェアリングが徹底されているのである。労働者には年間5週間の休暇が約束されている。さらに、結婚式は休日に行うことはほとんどない。他人の休む権利はそれほど大切なものだ。また、自分の誕生日は自分でプレゼントを買う。さらにオランダ人同士でおごることはない。たまたま日本の上司がおごれば図に乗って高級店を要求する。社員の一割は常に休む。医者の証明書はいらないし、その間に副業をしてもおとがめはない。それでいて入社したら一年間は首を切れない。また学校でも生徒の間違いを教師は正すことができない。「君の意見はユニークだけれど、僕はこう思うよ」と遠慮がちに話しかけるだけである。

 実は、オランダには「オランダ病」と言われる苦い経験があった。 (ケータイホームレス・さまよえる日本人論(5)

オランダ病
 1970年代、北海におけるオランダの天然ガスの発見とその輸出ブームは、オランダに膨大な為替収入をもたらし、一方で、政府支出の膨張によって社会福祉制度が次々に拡充されたものの、他方で、為替レートの過剰な上昇により、他の貿易部門、特に製造業部門などの国際競争力を阻害し、ブームが去って一次産品の価格が下落したとき、財政支出が膨張したまま、企業の国際競争力は失われ、失業者は増大し、オランダ経済は大不況に陥った。1983〜84年の急激な失業率の上昇は、こうした状況をドラマチックに示している。豊富な資源開発の帰結としての経済低迷をあらわす「オランダ病」という言葉が経済用語として国際的に定着している。 (図録・失業率の推移
オランダの奇跡
 オランダのドラマはそこで終わらなかった。その後、全世界が「オランダの奇跡」と呼ぶほど経済の復活を遂げたのである。失業率は、図で見るように、1980年代後半から1990年代にかけて着実に低下し、1999年からは日本のレベルを下回っている。こうした経済再生の要因としては、賃金抑制の政労使合意とパートタイム労働の正規化の2つがあげられる。

 どん底経済から再起をかけて、オランダの政府、経営者団体、労働組合全国組織の三者は、1982年から1983年にかけて、いわゆるワッセナー合意に達した。 ワッセナー合意の要点は、

 (1) 労働組合は賃金抑制に協力する。

 (2) 経営者は雇用の維持と就労時間の短縮に努める。

 (3) 政府は減税と財政支出の抑制を図り、国際競争力を高めるための企業投資を活発化し、雇用の増加を達成する。

というものだった。(図録・失業率の推移

オランダ・モデル

 オランダでもパートタイム勤務の社員が冷遇されていたが、パートタイム勤務の社員が待遇面で受けていたいろいろな差別を禁止し、これがオランダ・モデルと呼ばれるようになった。すなわち、

 (1) 同一労働価値であれば、パートタイム労働社員とフルタイム労働社員との時間あたりの賃金は同じにする。

 (2) 社会保険、育児・介護休暇等も同じ条件で付与される。

 (3) フルタイム労働とパートタイム労働の転換は労働者の請求によって自由に変えられる。

という制度になった。この結果、夫婦の自由な勤務形態の組み合わせが可能となり、雇用が促進されたという。(図録・失業率の推移

この「オランダの奇跡」の要点は二つ。厳密なワークシェアリングと、同一労働・同一賃金の徹底である。当然、このような改革は、政府の強い指導力が必要である。しかも、法律を作るのは比較的たやすいが、今までの法律をやめるのは大変難しい。必ず、既得権者がいるからである。

日本の奇跡は起こるか

僕は、「日本、スラム化の予感」でこう書いている。
日本は物価高の高コスト社会である。コストカットはやりつくし、これ以上のコストカット化できない現在、本社を海外に移すか、グループ企業派遣によってより安い労働力を使うかしか方法はないのだ。そのため、正社員はできるだけ削減し、残りの労働力を非正規雇用でまかなうことになる。したがって、企業としては、「正規雇用、パートの区別なく同一労働=同一賃金の原則」はありえない選択肢である。それでは、何のメリットもないからだ。
 しかし、人件費でコストを補おうと言う発想は限界に来ているのではないか。
さらに、コスト・カットをしなければならないとすれば、本社を海外に移す。税金の安い国はどこでもある。ところが、こうしてコスト・カットをすればするほど、消費者の収入は確実に減っていく。なぜなら、生産現場がなくなり、働く場所が減っているからである。かといって、生産国に消費者を求めても、物価の関係で割が合わない。消費者のためにコスト・カットをしているのに消費者を減らしている。 (コストカットをすればするほど貧乏になる
日本の経営者は、労働者は消費者であることをすっかり忘れているといわざるを得ない。労働者をよい消費者に育て上げることによって、企業も労働者にも未来があるのだ。

 さて、日本の奇跡を起こすには痛みが生じるだろう。まず、同一労働・同一賃金になれば、派遣会社の収入が絶たれるからだ。また、派遣社員でギリギリの経営を迫られているところは、倒産するかもしれない。正社員の賃金カットも増えていく。また、業種によっては、海外とのコストカット競争に敗れるかもしれない。果たして、それでも政府はこの政策をやろうとするだろうか。ともかく、企業側の価値観が180度変えることを強いられるのは事実である。
ブログパーツ