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元旦の夜、竹中氏が語ったこと

 元旦の夜、NHKスペシャル「激論2009 世界はどこへ そして日本は」という番組があった。日刊スポーツにその番組の解説があった。

▽日本もチェンジ?▽対米追随やめるか?▽日本再生の戦略は?…竹中平蔵×金子勝×岡本行夫×山口二郎×八代尚宏×斎藤貴男×勝間和代◇アメリカとの関係を中心に、日本が世界とどう向き合っていけばよいのかを探る。 (NHKスペシャル・新春ガチンコトーク!世界はどこへ、そして日本は〜暮らしは経済は政治は!?論客大予言)
 その中で、竹中平蔵氏の発言が気になった。小泉改革は、日本をオランダ型にする道半ばであったこと、中断した理由は、経営側と組合側が反対したためであるという。(オランダモデルについては「2009年に日本の奇跡が起こる?」を参照)実は、サンデープロジェクトでも同じような発言があったらしい。
11月30日放送の『サンデープロジェクト』で、小泉首相とともに構造改革を進めた竹中平蔵氏が語った労働市場改革についてのコメントは、かなり苦しいものだった。本来、セットで同時にやらねばならなかった改革を、連合の既得権を守りつつ経営側に都合のよい政策のみ先行させて実施してしまい、それが今日のアンフェアな労働市場と歪んだ格差社会につながっている政策のミスを認めたようなものだったからだ。

−−年収200万円以下の人が増えた。非正規社員も増えている。小泉内閣のとき(注:2004年)に製造業への派遣をOKし、また規制緩和でタクシーの台数が増えたことなどが原因ではないか?(田原総一朗氏の質問要旨)

 これに対し、竹中氏は「低所得者は増えたが、所得ゼロの失業者の数は減った、経済全体がよくなった」「労働市場の改革は必要だと思う」としたうえで、以下のように答えた。

 なぜこんなことが起こるのかというと、労働組合に守られて本来の働きよりも高い給料を貰い続けている正規雇用の人たちが厳然といるわけです。その人たちのクビを切れない。その人たちに給料を払い続けなければいけない。(注=労働条件不利益変更、解雇法制の規制緩和が進まなかったことを指す。貰いすぎの人たちがいるために、一方で貰えなさすぎの人が発生した)

 もう1つ、経営者の側にも大きな問題がある。非正規社員の最大の問題は、年金と保険に入れないわけです。年金と保険に入れてあげればいいんです。それはオランダでやったわけで、それをやるのが労働市場の構造改革で、それをやりたかった(注=同一価値労働同一賃金による正規・非正規の身分制廃止のこと)。それが途中で止まってしまっているんです。

 経営者は、そういうことをすると社会保障費の負担(注=法定福利費は企業と従業員で折半のため)が増えるから嫌だ、と。組合は組合で、既得権益(注=正社員だけは給与引き下げも解雇も難しすぎること)を失うから嫌だ、と。経営者と組合が手を組んで、この労働市場の改革を阻んでいるのが現状だと私は思いますよ。

 (中略)労働監督労基署は強化すべきだし、最低賃金も見直すべきだし、そういうのと併せて規制緩和の効果がちゃんと享受できるように改革を続けることが必要なのに、途中でやめちゃってるんですよ。これがすべてですよ。(My News Japan説得力ない「労働市場の構造改革やりたかった」(竹中平蔵氏))

 この発言に対して、このブログの著者、渡邉正裕氏は、
だが、為政者だった竹中元大臣のこの弁明は、ちょっと苦しい。絶対的にセットで同時にやらねばならなかった改革を、連合の既得権を守りつつ経営側に都合のよい政策のみ先行させ、残りの政策については道筋すらつけられないまま議員辞職しているからだ。

 最大の問題は、セットの政策パッケージとしてスケジュール化しなかったことなのに、それを、いまさら「やりたかった」と言うのなら、その痕跡や、やろうとした当時の記録を見せてもらいたい。

 小泉政権でそのような法案が提出された形跡はない。経済財政諮問会議の民間メンバーに八代尚宏教授(労働格差是正論者)が参画したのは、竹中氏が議員辞職し、安倍内閣になってからのことである。

 セットでやらなかったことで犠牲になったのは、連合でも経営側でもない、何の既得権も持っていない若年層だった。日本の未来の労働力を奪う形で中高年が既得権を維持しているこの国の姿は、まったく醜悪である。(My News Japan説得力ない「労働市場の構造改革やりたかった」(竹中平蔵氏))

 元旦の夜の発言では、このままでは企業が逃げるから、法人税を下げることを主張していた。思えば、ソニーの社長がこんなことを言っていた。
「通常の部品調達や人件費などの削減で収益改善できる範囲を超えており、このままでは国内で製造できる企業はなくなる」(米ゼロ金利で産業界悲鳴 日銀の協調利下げに期待の中の中鉢良治社長)
 企業に逃げられては元も子もない。このバランスで連合と経営を納得させることができるか。民主党の小沢代表は、選挙の争点を「派遣問題」にするという。しかし、経営側の自民、連合側の民主にとってこの「派遣問題」はのどに刺さった骨である。この改革をなすことができれば、おそらく若者たちの投票率は上がるだろう。このままでは、失業者が百万単位に増えるかもしれない。「日本の奇跡」を起こすには、最後のチャンスが迫っている。
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