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素人だから言えることもある

ワーク・シェアリングとフレキシキュリティ

 NHK「日本の、これから」を見た。テーマは「雇用危機」、そこでワーク・シェアリングとフレキシキュリティについて議論された。僕は、この言葉について、すでに「簡単に、ワーク・シェアリングと言うけれど」で解説している。テレビでは、「ワーク・シェアリング」については、日本のある企業のモデルを紹介し、「フレキシキュリティ」ではデンマーク・モデルを紹介した。

 そのとき言われたのはフレキシキュリティ」とは「何度でも再チャレンジ」できる社会だという。そもそも派遣制度ができたのも「何度でも再チャレンジ」できるはずだったのではないか。ところが、日本では、スキルアップできず、単純労働で生活できるだけ。不況になれば、簡単に放り出される。デンマーク・モデルとどう違うのか。

 EUがお手本にするデンマークの政策は、「黄金の三角形(ゴールデン・トライアングル)」と呼ばれ、(1) 解雇しやすい柔軟な労働市場、(2) 手厚い失業給付、(3) 充実した職業訓練プログラムを軸とする積極的労働市場政策、の三つが有機的に連携している点が最大のポイントだ。

 重要なのは、労働力の移動を容易にし産業構造転換を図りやすくするための解雇規制の緩和と同時に、手厚い失業対策を講じて労働者の不安を取り除くこと。デンマークの失業給付期間は、最長で4年。失業給付のレベルも、前職の手取り所得の63〜78%に及ぶ。低所得者層に対しては、89〜96%という手厚さだ。(デンマークとオランダが先鞭、EUが目指す柔軟な労働市場と雇用保障(1) )( 「簡単に、ワーク・シェアリングと言うけれど」)

 つまり、(1)は達成されたが、(2)と(3)は達成されず。そして、これが成り立つためには、正規社員と非正規社員の格差がある限り、不可能である。たとえば、�の職業訓練プログラムは企業が正規社員のみに施しスキルアップが可能であるからだ。派遣会社でもやっているところはあるが、いずれも有料である。とても、少ない賃金でそれをやっていられない。そこで、当然、格差が開く。さらに、企業によってそのプログラムも様々であり、同じ業種であってもそのスキルが活用されにくい。
 また、デンマーク企業の労働市場は、我が国のような内部昇進型ではなく、転職によりスキルアップや職位レベルのステップアップを図っていく(逆に同一企業内ではスキルアップ・ステップアップは一般的ではない)という米国に類似した労働市場である。(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 デンマークのフレキシキュリティと我が国の雇用保護緩和の議論) ( 「簡単に、ワーク・シェアリングと言うけれど」)
 さらに、自立生活サポートセンター「もやい」事務局長の湯浅誠氏の、日本の現状でワーク・シェアリングをすると誰も生活できないという意見が気になった。確かに、年収400万の人が急に200万になってしまえば、子供の教育費や親の医療費を払っていくことは難しくなる。つまり、医療費や教育費が無料になるほどの高福祉の社会でなければ、簡単にワーク・シェアリングができなくなってしまうのだ。
デンマークモデル(フレキシュキリティ)は、100年近くの長い年月をかけて(政労使3者合意により)構築された福祉国家を基盤にしたものであり、直ちに他国に輸出できるものではない。」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 デンマークのフレキシキュリティと我が国の雇用保護緩和の議論) ( 「簡単に、ワーク・シェアリングと言うけれど」)

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