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地デジ完全移行一年前倒しで得するのは誰?

 アメリカでは、地デジ完全移行が4ヶ月延期された。ところが、日本では2011年7月24日まで2年半の現在、更に一年前倒しされる可能性があるそうだ。

追加景気対策、地デジTV購入に2万円支援 自民が検討(日経ネット)
 自民党は追加景気対策の一環として、地上デジタル放送が受信できるテレビやチューナーを購入した全世帯に一律2万円程度の支援金を配布する方向で検討に入った。2011年7月に地上デジタル放送へ全面移行する計画も1年間前倒しして、早期普及を目指す。液晶テレビなど急激な需要落ち込みに悩む電機業界を支援する狙いもある。
 自民党のe—Japan特命委員会(小坂憲次委員長)が18日、「IT(情報技術)による景気・雇用・環境緊急対策パッケージ」の議論に着手、3月までの取りまとめを目指す。国税の申告などの行政手続きを電子化する電子政府計画、電気自動車普及なども前倒しし、合計で7兆円規模の経済効果を見込む。(18日 16:01)
たかだか2万円程度を配ったところで、1年も前倒しできるものだろうか。しかも、
地デジ受信機普及率、1月で49.1% まだ5割届かず(日経ネット)
 総務省が17日発表した地上デジタル放送への移行状況に関する緊急調査によると、受信機の世帯普及率は今年1月時点で49.1%(推計で2455万世帯)だった。昨年9月の調査に比べ2.2ポイント増にとどまっており、まだ半数にも届かない状況。同省は今年度中に普及率を62%まで引き上げる目標を立てているが、実現は厳しそうだ。
 地デジへの完全移行は2011年7月24日。専用チューナーや対応するテレビなどがないと番組を見られない。受信機を保有していない人にその理由を聞いたところ、3割強が「現行のアナログ放送で十分だから」と回答した。移行時期を知っている人は、77.8%と前回調査に比べ2.5ポイント増えた。
というように、現状ではまだ半分だ。「液晶テレビなど急激な需要落ち込みに悩む電機業界を支援する狙い」とあるが、政府関係者は家電量販店の現状を視察したことがあるのだろうか。パイオニアがテレビ部門から撤退したのも、激しい価格競争に持たなくなっているからだ。たとえば、イオンが32インチ液晶テレビDVDプレーヤー付を発売する。価格が4万円台だという。その記事の最後にこんなコメントがある。
調査会社のBCNによると、景気悪化の影響で液晶テレビの価格は昨年12月から急速に下落。現在、32型の最安値は6万円程度だが、4万円台でDVDプレーヤーも付いた機種は「これまで見たことがない」(BCN)ことから、価格低下にも拍車が掛かりそうだ。(イオン、格安家電を販売  32型液晶テレビが4万円台)
 つまり、今まで主流になっていた高級品は売れないのである。作れば作るほど赤字になるのなら、作らないほうがいい。したがって、総務省の「電機業界を支援」というのは、本音を隠しているのではないか。

 僕が思うに、電機業界よりもテレビ局の体制が持たなくなってきたのではないだろうか。2006年に民放連の会長がこんなことを言っている。

民放連会長、アナログ放送の停止前倒しを示唆
 日本民間放送連盟の広瀬道貞会長(テレビ朝日会長)は21日の会見で、現行のアナログ放送の停止の時期について「デジタル放送に100%対応できた放送局に(アナログとデジタルの)両方やれとは言えない」と語り、地域によっては2011年7月の期限より早まる可能性があることを示唆した。消費者はテレビの買い替えを前倒しで迫られることになり、議論を呼びそうだ。
 テレビ放送は5年後に完全にデジタル化することが国策で決まっており、民放各社は地上デジタル放送のエリア拡大を急いでいる。広瀬会長は12月には全世帯の85%にデジタル波が届き、その後も普及が加速度的に進むとの見解を示した上で、「アナログ放送を(期限を待たずに総務省に)返すという放送局があれば、止めることはできない」と語った。
[2006年9月22日/日本経済新聞 朝刊]
 つまり、民放としては、デジタルの電波が理論上100%届くと確認されれば、その地域の消費者がデジタルテレビに買い換えようと買い換えまいと関係なしにアナログ放送をとめてしまう。たとえ、消費者の3割強が「現行のアナログ放送で十分だから」という意見であっても、アナログ放送は流れないから、ただのアナログボックスになってしまっても自己責任である。さらに、総務省は2万円の支援金でお茶を濁すというわけである。2万円でテレビは買えないが、その頃はチューナー代ぐらいになるかもしれない。もっとも、アンテナ代や工事費は自己負担であるが。

 ともかく、今回の金融危機によって、テレビ局は番組制作の広告費が軒並み減収となっている。その上、地デジ普及のためのアナログ・デジタルのサイマルキャスト放送が大きな重石になっている。政府にとって、テレビ局は大きな宣伝機関でもある。今回の、前倒し論議、あながち不可能ではないかもしれない。でも、視聴者50%積み残しで発車するテレビ局って本当にあるの?

追記

視聴者50%積み残しで発車するテレビ局って本当にあるの」って書いたが、はてブのageha0さんの指摘で、フィンランドの実例があることに気がついた。そして、そのフィンランドについては、2011年テレビ滅亡論ですでに書いていた。
なお、地デジの歴史については、
地デジが生まれた本当の理由(読者ブログ版)
誰も語らない地デジの歴史など参照。
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