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素人だから言えることもある

ソニーなければアップルなし

ソニーをけなして、アップルをほめる人々

 最近のCNET Japanの読者ブロガー欄、最近、一つの傾向が見える。もちろん、アップルの順調(iPhoneは日本ではそれでもない?)さに比べて最近のソニーのふがいなさが怒りのもとなのだろう。僕は、ここで改めて、過去のエントリーからソニーがなければ現在のアップルは存在しないことを書き留めておきたい。

ソニーのディスクドライブなければ、マッキントッシュなし

 僕は、「ジョブズとソニー」で、「スティーブ・ジョブズ偶像復活」(ジェフリー・S・ヤング+ウィリアム・L・サイモン著/井口耕二訳/東洋経済新聞社)を引用した。
 ソニーのディスクドライブがなければ、1984年にマッキントッシュが市場に登場することはなかったでしょう。硬質プラスチックのスリープに3.5インチの磁気ディスクをおさめるという形式は、当時、とても画期的なもので、まだ、どのコンピューターメーカーも採用していませんでした。

 そのときスティーブは、自社開発にこだわり、さまざまな問題を何とか解決しようとしていました。その背後でマッキントッシュチームはソニーの新型ドライブの検討をすすめ、一度などは、スティーブが突然現れたために、ソニーのチーフエンジニアたちをクローゼットに隠すということまでしました。結局、リサ(Lisa=マッキントッシュと同時に開発していた業務用コンピューター、ジョブズの娘の名)用フロッピーが抱えていた問題は解決のめどがたたず、発売の4ヵ月前というぎりぎりになって、ソニー製ドライブの採用が決定。ソニー製ドライブが、カリフォルニアのマッキントッシュ組立工場まで空輸され、1984年1月、この小型ドライブを搭載したコンピュータが発売されました。そして、後に、このソニー方式が業界標準とされるのです。(「スティーブ・ジョブズ偶像復活」)

ウォークマンなければiPodなし

 アップルのスティーブ・ジョブズ氏は、ウォークマンのデザインに感銘を受けた。
1985年)3月の終わりごろ、スティーブは、ドイツのデザイン事務所、フロッグデザイン社を訪ねた。大ヒットしたソニーのウォークマンをデザインした会社だ。ウォークマンのデザインに感銘をうけ、その後のアップル製品のすべてについて外観デザインをフロッグデザインに任せるという大きな契約をむすんでいたのだ。(「スティーブ・ジョブズ偶像復活」)
 僕は、そのフロッグデザイン社を調べてみた。「ジョブズとソニー(2) MacBook Airデザインのこだわりとソニーとの接点」で、
最初のデザインは1969年のWegaで、ドイツのテレビ製造業者のものだったが、それは後にソニーに買収される。フロッグデザインはソニーの仕事を続け1975年にはトリニトロンテレビのデザインを手がけた

彼らの最初のコンピュータ製造者向けのデザインは1970年のCTM (Computertechnik Müller) による商業的なシステムと1979年のDiehl Data Systemsだった。有名になったのはアップルコンピュータ向けのデザインでポータブルのApple IIcの筐体が最初で、それには1984年から1990年の間アップルによって使用されるSnow White design languageが導入されていた。それからいくつかのマッキントッシュのデザインを継続。1986年、SunのSPARCstations、1987年、NeXTcubeがフロッグデザインによりデザインされた。(フロッグデザインWikipedia)

 また、ウォークマンとiPodが人々にライフスタイルを変えさせた点でも共通点があろう。iPodの開発者がこんなことを言っている。
iPodは, 21世紀の『ウォークマン』だと思ってる。ソニーが1979年に発明したウォークマンは,革命的なハードウエアで,人々の音楽の聴き方を変えた。でも現在では,ハードウエアだけじゃ足りない。ハードとソフト,そしてサービスが相互に作用して出来上がるのが,デジタル時代の体験なんだ。(Joz)。(Tech-On iPodの開発)
 さらに、「ジョブズとソニー(3) iPodとウォークマン」で、ソニーの盛田氏の発言
(録音機能のないものは売れないという常識に対して)「この製品は、一日中音楽を楽しんでいたい若者の願いを満たすものだ。外へ音楽を持って出るんだよ。録音機能はいらない。ヘッドホンつき再生専用機として商品化すれば売れるはずだよ」(「ソニー自叙伝」ソニー広報センター/WAC)
今から思えば、やがてこの発言は、日本のケータイ文化まで繋がっていることに気がつく。また、同じエントリーでアップルでiPodを売っていた前刀禎明氏の
(Appleの人間が「iPodは液晶ディスプレイのリモコンが付いていないから売れないんですよ」という言葉に対して)「違う。これは片手で操作できるクリックホイールという極めて優れたインターフェースがある。これを手に持って、カラフルだし、人前でその使用感を自慢して見せて聞くものなんだ」(“iPod旋風”の極意は心に深く突き刺さる前刀流マーケティングにあり:後編)
というように、今までのライフスタイルの常識を打ち壊すことに意味がある。しかし、それに馴れてしまえば、それが常識になり、今度はその常識を破壊するものが現れるのは当然だ。したがって、ソニーらしさ、アップルらしさを求めるのは矛盾している。しょせん、一時の懐かしさを求めているに過ぎない。過去の歴史を見ればわかるが、その「らしさ」という殻を打ち破り、絶えず変化することこそが企業の進化なのだ。
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