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素人だから言えることもある

PSP goの隠された使命(ホームサーバの戦い・第29章)

PSP goはショップを殺す?

 2009年6月3日E3での「PSP go」発表以来、巷の噂はとまらない。典型的なのは、当日のゲームショップのブログだった。
本日の「E3」での「新型PSP」の発表。
まさかスッパ抜かれていた記事がそのまま現実になろうとは
ダウンロード専用機「PSPgo」だなんて、
私達流通「お店」はもういらないって事?必要とされていないの?(店長からのメッセージ)
 UMDが廃止され、ダウンロードが日常化されれば、ソフトは直接ショップで買うものではなくなる。まるで、ケータイのアプリケーションのように。そうなのだ。PSP goはケータイ対策なのである。しかも、iPhoneiPod touchを狙っているという記事も多い。
 PSP go発表に合わせてSCEは、PSP用ゲーム開発ツールを大幅に値下げ。開発のすそ野を一気に広げ、タイトル数を拡大する戦略を打ち出した。
 ソフト開発の障壁を下げ、サードパーティーからネット経由で多くのソフトを供給してもらうことで、ハードを含むプラットフォームを拡大する——という戦略は、AppleApp StoreiPhoneiPod touchと同じ構造だ。(It media)
 もっとも形からいえば、ウォークマンXの方が激似だが。さて、iPod touchを狙っているとすれば、タッチパネルを導入してもよいはずだが、これはSCE平井一夫CEOから明確に否定されている。
PSP goは、基本的にPSPとハードウエア構成が同じですよね。あえて「バリエーション」として開発した意図は、どういったところにあるのですか? 例えば、「タッチセンサーが欲しい」とか「グラフィックやCPUのパワーは上げるべきなんじゃないか」とか、いろんな意見があったとは思うのですが。

平井:基本的には「一貫性」、「Continuity(持続性)」のためです。当然のことながら、技術的には、タッチパネルをつけるだとか、アナログスティックをもう一本つけるだとかいったことはできます。
 ただし、それをやってしまった瞬間にどういったことが起こるかというと、「PSPのソフト」ではなくなってしまうわけです。
 たとえばデュアルスティックをPSP goにつけたとしましょう。PSP goユーザーの方はいいですよ。でも、すでにお持ちの5,000万台のユーザーの方に「ごめんなさい、遊べません」と言えますか?
 プラットフォームホルダーの責任として、それはできないです。やはり一貫性がすごく大事。PSP goのためにつくっていただいたゲームも、オリジナルのPSP-1000で、ディスクベース・ダウンロード両方で楽しんでいただける。これが、PlaystationのDNAです。
 いろんなご意見はあるし、特に「デュアルスティック欲しいよ」というお話はわかるんです。しかし、それを搭載することが本当にユーザーのみなさんのためになるのか?
「新型のみです」ということは「違うでしょう」と判断したのです。(西田宗千佳の— RandomTracking — E3 2009特別編 SCE 平井一夫CEO インタビュー 〜「PSP go 誕生」の狙いと「値下げなきPS3」の勝算〜)

 もっとも、PlaystationのDNAという言葉はあまり使って欲しくない人もいる。(PS2とか)

 さて、同様に、UMDを使ったPSP-3000とダウンロード専用のPSP goを並行していくという。全世界規模となれば、インフラが整っていなければむやみにUMD止めますとはいかないという。
 もちろん、やがてはダウンロード販売が主流になるだろう。ケータイのゲームにしてもiPod touchにしても、本格的なゲームというよりは時間つぶし的な小容量なゲームソフトがメインだからだ。なにしろ、ダウンロードでかなりの時間を費やすのであれば、わざわざ外出してまでそのゲームで遊ぼうとも思わない。iPod touchは当然ながら、YouTubeや音楽などだが、当然使い方が似通ってくるだろう。

ソニーVSアップルは3年前から予言されていた

 Impressの後藤弘茂のWeekly海外ニュースの最新版「次世代PSP2までの長期戦略が見えるSCEの「PSP go」の冒頭にこんなくだりがあった。
久夛良木氏が予言したAppleとの競合が現実に
 PSPを産み出した久夛良木健氏(現ソニー・コンピュータエンタテインメント名誉会長)は、2006年のインタビューで、SCEとビジョンが近い企業はAppleだと答えた。そして、2007〜2008年より後の時期には、AppleSCEの製品が競合する可能性があると示唆した。現実は、まさに、その方向へと進んでいる。PSPは、モバイルゲーム市場で、AppleiPhone/iPod touchと正面から衝突している。久夛良木氏の“読み”がいかに正しかったかがよくわかる。(後藤弘茂のWeekly海外ニュース 次世代PSP2までの長期戦略が見えるSCEの「PSP go」)
 そこで、3年前のインタビュー記事を探してみる。やはり2006年のE3の時の記事だった。
SCEIのビジョンに近いのは今のApple
【Q】
コンピュータとしてのPS3を、コンピュータであるPCと差別化するには、Cellのコンピューティングパワーを活かした、PS3ならではのアプリケーションが必要だ。以前、うかがった時は、HDビデオのノンリニア編集などを挙げていた。
久夛良木氏】 HDのノンリニア編集は、E3の前に「NAB(the National Association of Broadcasters:米国の放送機器業界のイベント)」に出した。Cellをベースにした、HDビデオの編集システムだ。NABに出る前に出陣式みたいのがあって、4k2kのプロジェクタに、Cellから、色々なフォーマットで、配信やトランスコードをやった。これが、えらく評判で、元Microsoftの古川さんが、「あごがはずれるほど驚いた」ってブログに書いてた。こういうのが、当たり前になるじゃない。
【Q】 ゲームプラットフォーム開発のバックグラウンドで、SCEI自体もこうした非ゲームアプリケーションの開発も続ける?
久夛良木氏】 すごく興味を持っている。
【Q】 SCEIのPS3ビジョンで競合するのは、Appleのように見える。
久夛良木氏】Microsoftよりは直接ビジョンが近いのはAppleだね。でも、競合よりというより、同じところにいて逆に楽しい。
【Q】 でもPS3がコンピュータなら、将来のApple製品と実際に家庭で競合するようになる可能性があるのでは。
久夛良木氏】確かに、今の時点では競合していないけど、将来はわからない。2007、8年になって、AppleIntelとコラボレーションしている成果が花開いて来ると、当然、狙うのは音楽プレーヤーだけではないだろうから。
【Q】
家庭のエンターテイメントコンピュータという領域でぶつかるかもしれない。
久夛良木氏】 うん。ジョブズ氏は、きっとコンピュータが好きなんだと思う。すると、ビジョンが自然に重なる。(後藤弘茂のWeekly海外ニュースビジネスモデルを変革するためのPS3の価格戦略〜SCEI 久夛良木健氏インタビュー(2) )
 読者は、このインタビューだけでは、なぜ、久夛良木氏とアップルのビジョンがつながるのかわからないだろう。このインタビューのはじめにこんなところがある。
【Q】 “ゲーム機の価格”という概念を破るのは極めて難しい。ユーザーは、これまで、299ドルや199ドルといった価格に慣れ親しんできたから。
久夛良木氏】ジョブズ氏(Steve Jobs氏。CEO, Apple Computer)が、(PS3に)Appleのロゴをつければ、(ユーザーは)2,000ドルでもいいと言うと思う。でも、PLAYSTATIONブランドでは、それはできない。それが、PLAYSTATIONブランドとAppleブランドの、コンピュータにおける差でしょう。でも、PS3はPLAYSTATIONブランドであるがゆえに、PLAYSTATIONとして売れると思う。
【Q】ゲーム機のモデルを抜け、Appleに近づくためには、ゲーム機としてではなく、PS3というコンピュータとして見てくださいとメッセージを打ち出す必要がある。
久夛良木氏】 そう。だからPS3を押し出している。PLAYSTATIONが、代名詞になるくらいにしたい。(後藤弘茂のWeekly海外ニュースビジネスモデルを変革するためのPS3の価格戦略〜SCEI 久夛良木健氏インタビュー(2) )
 久夛良木氏は、PS3をゲーム機というのではなく、コンピュータと見て欲しいという。アップルがコンピュータ会社だから、高価格でも売れる。SCEはゲーム機会社だから、こんな高価格では売れない。もちろん、販売層が違うから当たり前だが。ともかく、久夛良木氏の矜持は、ステイーブ・ジョブズ氏と同じくらい高い。そういえばSCEはソニー・ゲーム・エンターテイメントの略ではなく、ソニー・コンピュータ・エンタテイメントだった。久夛良木氏は、会社を作った当初から、ゲーム機を作ったのではなく、コンピュータを作ったのだ。だから、「ジョブズ氏は、きっとコンピュータが好きなんだと思う。すると、ビジョンが自然に重なる」という言葉が生きてくる。この3年前の予言が今回、PSP goとして蘇る。後藤氏は、
 PSP goは、今後のSCEの携帯ゲーム機戦略の方向性を反映していると推定される。つまり、PSP2世代への橋渡しとなる戦略的デバイス&サービスがPSP goだと推測される
 PSP goに見えるSCEの携帯ゲーム機戦略は明瞭だ。それは、ゲームプラットフォームとして台頭してきたiPhoneなどに対抗することだ。そのため、PSP goでは、16GBと大容量のNANDフラッシュメモリを内蔵し、その一方で光学ディスクUMDドライブを外し、ダウンロード型のコンテンツ配信モデルを取った。
 筐体サイズと重量をiPhone並に削減して、コントローラ部分はスライドに収納できるコンパクトなものにした。フォームファクタとビジネスモデルを携帯電話に近づけたのがPSP goだ。SCEは、この改革を「デジタルコンシューマ」、つまり、デジタルコンテンツをダウンロードすることに慣れたユーザー層のライフスタイルに対応したものだと説明した。(後藤弘茂のWeekly海外ニュース 次世代PSP2までの長期戦略が見えるSCEの「PSP go」)
 しかも、今月より、アップルのApp Storeに対抗して、Media goをはじめた。このMedia goについて、こんなブログ記事があった。
このMedia Go、元を正せば、3年半前に当時の米Sony Media Software(現:Sony Creative Software)が、販売を始めた「PSP Media Manager」というソフトで、その後SonyEricsson携帯電話(日本は除く)やWalkmanの動画・写真転送ソフト「Media Manager」として無料配布されるようになり、最近まで for PSP,for SonyEricsson,for Walkmanの三バージョンが別々のソフトとして存在するという混乱状態にあったので、僕が批判エントリーを書かざるをえない時期もあったいわくつきのソフトです。
しかしさすがにSonyも「for ○○」多種並立の不条理に気づいたのか、まずfor SonyEricssonが一部機種からMedia Goに置き換えられはじめ、今回for PSPMedia Goに置き換わったので、「Sonyの全てのモバイルデバイスとつながるメディアソフト」としての地位を確立しつつあります。(It’s a …Media Go! [Sony・PlayStation] )
 もともとソニーという会社、天才的な技術者がいる一方で、はなはだ連携が悪い。だから、ソニー製品の多くは使い勝手が悪いのだ。そんなこと気づけよ、といいたくなるくらい。ジョブズ氏のようなワンマンがいたほうが統一性が取れるのかもしれない。最もバッテリー問題は、ワンマンすぎて誰も指摘できなかったのかもしれないが。さて、このブログ管理者のakoustam 氏は、PSP goには好評で、PSP-3000のときは、
画面が綺麗になるのも、マイクが内蔵されるのも歓迎ですが、やっぱりまだデカいんですよね。去年と同じ事を書きますが、やっぱり個人的には「UMDはいらない」です。
僕としてはUMDを搭載した“PSP-2000”と、UMDを廃して内蔵フラッシュメモリに切り替え、無線LAN経由でオンラインでゲームソフトを購入したり、PS3やPCからゲーム・音楽・映像データが流し込める“PSP mini(この際nanoでもmicroでも可(笑))”の2ライン構成にしてくれるのが理想なのですが、UMD代わりにソフト供給の一翼を担えるはずのメモリースティックROMがほとんど頓挫してしまっている現状では、実現はかなり難しいのかもしれません。(It’s a …そっちに行くかぁ [Sony・PlayStation] )
と嘆いていたが、
PSP Goの基本は、PSPから光学ドライブUMDを廃し、16GBのSSD+メモリースティックマイクロ(M2)にストレージデバイスをチェンジ、Bluetoothを標準搭載し一回り小型軽量化したもので、僕がずっと言っていた「PSPとPSPminiの2ライン構成にしたほうが良い」という理想が、ようやく実現されたことになります
大きさは69×128×16.5mm 158gということで、53×110×16.7mm 145gというXPERIA X1や、最大のライバルになるであろうiPhone 3Gの62.1×115.5×12.3mm 133gと比べると一目瞭然、「PSPを携帯電話・スマートフォンのようにもっと気軽に持ち歩けるデバイスにしよう」という意図が見て取れます。(It’s a …PSP Go! [Sony・PlayStation] )
と高評価。iPhoneだって、ウォークマンだって、PSPだって、はたまたiPodだって、最初は評判がよくなかった。まあ、使ってみればそのよさは自然にわかるはず。平井CEOはインタビューでこう答えている。
Bluetoothの用途は、ヘッドセットなどを想定しているわけですか?
平井:はい。それに、携帯電話の接続も。
−それは、携帯電話を通じてネットにつなぐ、ということですか。
平井:ええ。そういうことも想定しています。(西田宗千佳の— RandomTracking — E3 2009特別編 SCE 平井一夫CEO インタビュー 〜「PSP go 誕生」の狙いと「値下げなきPS3」の勝算〜)
 ケータイの画面はかなり目と画面との距離が短いが、ゲーム画面は手が伸ばせる距離でないと疲れてしまう。特に、PSP goの画面は小さすぎる。PS3はコントローラをBluetoothでつなぎ、ワイヤレスコントローラとして使えた。PSPは自宅のテレビに映像出力できる。PSP goもPS3のコントローラが可能になればいいと思う。これから、高齢者時代である。別に、外出先で持ち歩かないといけないというものではないはずだ。自宅はPS3で、外出先はPSP goでと分ける必要もあるまい。そして、僕自身は、後藤氏の言うPSP2の方を早く見たい。

追記

PSP goBluetoothについて、予測どおりのことが書いてあった。

新しいデジタルライフスタイルを提案するPSP®「プレイステーション・ポータブル」goPSP®の新ラインアップとして、日米欧アジアにて2009年秋発売

Bluetooth®無線機能
本機能を新たに搭載したことにより、Bluetooth®規格に対応したヘッドホン、ヘッドセット※5が利用できるほか、PSP®go専用のビデオ出力ケーブル※6を用いてテレビ画面に映像を出力する際、PS3®のワイヤレスコントローラ※7を使ってPSP®goを遠隔操作することができます

専用周辺機器「クレードル
PSP®goの各地域での導入に合わせて、専用の「クレードル」(PSP-N340)※6を順次発売いたします。PSP®goを本製品にセットすることで簡単に充電ができ、PSP®goをクレードルに立てた状態で映画やアニメなどをお楽しみいただけます。専用のビデオ出力ケーブルを接続することで、高品位映像を手軽にテレビ画面に映し出し、快適にお楽しみいただくことが可能です

※5 市販のA2DPHSPAVRCPのプロファイルに対応したヘッドホン、ヘッドセットをご利用いただけますが、機器によっては正しく動作しない場合があります。

※6 PSP®go専用のビデオ出力ケーブルおよびクレードルは別売りです。各地域での発売価格など詳細につきましては、改めてご案内いたします。なお、PSP-2000/3000対応のビデオ出力専用ケーブル、クレードルについては、ご利用いただけません。

※7 PS3®専用ワイヤレスコントローラ(DUALSHOCK®3 / SIXAXIS®)をPSP®goに機器登録するためには、PS3®本体が必要です。ただし、一部のボタン操作および振動機能には対応しておりません。

これにより、新たにコントローラを買うことなく、自宅のテレビで楽しむことができる。少なくとも、iPhoneにはできない機能だ。
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