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素人だから言えることもある

ホームサーバの戦い・中間報告(ホームサーバの戦い・第30章)

マイクロソフトとアップルのホームサーバ戦略

 そのときにおきたニュースを元に、リアルタイムで語るホームサーバの戦いシリーズも本稿で30章。今回は、今までのシリーズを振り返って見たい。 第一章は「家電屋VSコンピュータ屋、ホームサーバーの戦い」。2007年1月の記事である。その1月、マイクロソフトは、「Windows Home Server」を発表し、アップルは社名を「アップルコンピュータ」から「アップル」へ改名した。と同時にiPhoneの発表もしている。 第二章は、「Apple TVの衝撃 (家電屋VSコンピュータ屋、ホームサーバの戦い・第2章) 」これは、第一章の1年後、当時話題になった、江島健太郎氏の「MacWorld Expo 2008の真打ちはApple TVだった」の記事を受けたものであった。実は、この一年間に、このシリーズとは別に「マイクロソフトの変心とコンテンツ配信の時代」や「ワーナー一本化でボツになった? Xbox360 Ultimateの噂」や「コピーワンス問題からほの見える日米のテレビと映画の立場」、「本当に次世代DVD、華開くのか」など、ブルーレイVS HD DVDの次世代DVDのフォーマットの話題について書いており、ホームサーバの戦いに色濃く影響している。

次世代フォーマット戦争を継続させなければならなかった理由

 すでに、ブルーレイとHD DVDの勝敗が明らかになったのに、なぜこれほど長引くことになったのか。その理由について考えたのが、「マイクロソフト・ユニバーサルが「フォーマット戦争を継続させなければならなかった」理由と著作権問題(ホーム・サーバの戦い・第3章) 」である。次に、気になったのがアメリカ国内での現状はどうかという疑問がわきあがった。「アメリカ国内の次世代DVDはもう終わってる?(ホームサーバの戦い・第4章) 」そこでわかったのは、TiVoという機器がほぼ制覇しつつあるという現実であった。マイクロソフトがヤフーの買収に動いている記事があったのが、2008年2月。それについて「マイクロソフトはヤフーの買収で何を狙う?(ホームサーバの戦い・第5章) 」で、なぜヤフーを狙っているのかを考えてみた。すると、ヤフーの子会社が持っているアプリケーション技術が結構重要なのだとわかった。

HD DVDの敗北の2つの見方

 「東芝が勝ち馬に成れなかった理由(ホームサーバの戦い・第6章) 」では、東芝はブルーレイに乗る(勝ち馬に乗る)ことを嫌ってHD DVDを選び(つまり勝ち馬に成る)ことを望んだのではないかと思って書いた。
「勝ち馬に乗る」とは、今回のブルーレイvs HD DVDの場合、ブルーレイを支持する映画会社やシャープや日立など二番手以降の家電メーカーである。「勝ち馬に成る」とは、松下・ソニーのことである。東芝は、ブルーレイを選べば「勝ち馬に乗る」ことはできたが、「勝ち馬に成る」ことはできなかった。東芝は、HD DVDによって「勝ち馬に成る」ことを目指したのではないか。(東芝が勝ち馬に成れなかった理由(ホームサーバの戦い・第6章) )
 勝ち馬に成れば、そのディスクの莫大なロイヤリティが入る。一方、勝ち馬に乗るには、そのロイヤリティを支払わなければならない。わずかな可能性を目指して勝ち馬を目指していたのではないだろうか。
 一方、「HD DVD敗北のもうひとつの説(ホームサーバの戦い・第7章) 」では、日経トレンディの増田和夫氏の意見を紹介した。そこでは、アメリカ映画産業がIT産業に牛耳られることを嫌ったためであるという説だ。

マイクロソフト・ソニーのゲーム史

 現在ばかり見ていると見えないものが過去の歴史を探ってみると見えてくるものがある。「Xbox vs PS2(ホームサーバの戦い・第8章) 」「マイクロソフトが任天堂やスクウェア買収まで画策したほどの、ソニーに対する危機感(ホームサーバの戦い・第9章) 」では、「マイクロソフトの蹉跌—プロジェクトXboxの真実」(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳/ソフトバンク)を使い、Xboxの原点を探っている。

ゲーム機戦争とネット配信(ホームサーバの戦い・第10章) 」では、ソニー、マイクロソフト、アップル、任天堂のネット配信に対する考え方の違いに触れている。
 さて、8章や9章でマイクロソフト側の歴史を語ったが、「久夛良木氏のPS戦略(ホームサーバの戦い・第11章) 」で、ソニー側の歴史を語っている。参考にしたのは、「美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史」西田 宗千佳著/講談社BIZ)で、実はPSBBでこんな計画があったという。

本当は、もうネットワークの時代にしてしまいたいと思ったんです。ゲームも、できればディスク配布からネット配信にしたかった。プロバイダー経由での販売という形で、PS2のビジネスモデルを変えてしまおうという意図があったのですが…」(岡本伸一氏)( 美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史」西田 宗千佳著/講談社BIZ)
PSP goで目指したことは本来、PSBBで計画されていたことだった。 「Wiiのネット配信「Wiiウェア」(ホームサーバの戦い・第12章) 」で語ったことは、Wiiが世界的に普及しているが、ネット接続率がほかの二社に比べて落ちているという現実だ。そのため、日常的に稼動してもらうために「Wiiチャンネル」や最近の「Wiiの間」など現在にも続いている。

 しばらく、アップル・グーグル・マイクロソフト・ソニーの未来について語っている。「アップル、マイクロソフト、次の一手(ホームサーバの戦い・第13章) 」「iPhoneはやがてネットサーバーの端末になる(ホームサーバの戦い・第14章)」「いよいよPS3がアップル、Googleに反撃。 (ホームサーバの戦い・第15章) 」「グーグルの「Lively」、PlayStation Homeを狙い撃ち(ホームサーバの戦い・第16章)

アップルのiPhone日本発売

 iPhoneは2008年7月11日に発売された。「iPhoneは日本に何をもたらす?(ホームサーバの戦い・第17章) 」「アップルはなぜ、パソコンをケータイにしたか(ホームサーバの戦い・第18章)

 アメリカのプレイステーションで映画配信が始まったのが7月17日。「アメリカでPS3の逆襲が始まった(ホームサーバの戦い・第19章) 」「ホームサーバが普及した時に起こるこれからの出来事(ホームサーバの戦い・第20章) 」では、映像配信の長所と短所を考えた。

モバイルインターネットはPCを救う?(ホームサーバの戦い・第21章) 」では、グーグルのアンドロイド携帯を取り上げた。

 業界の情報源によると、Androidが携帯OSとして開始されたのは事実だが、Googleはこれをテレビのセットトップボックス、mp3プレイヤー、その他コミュニケーションとメディア関連のデバイス全般に拡張し、一種のユニバーサルOSとしていく計画だという。(Androidと万物のインターネット化)

ストリンガー会長のソニー戦略

 2009年1月22日にソニーのストリンガー会長の2600億円の営業損失と再建策が発表された。「ソニーの復活にはPS3の値下げしかない(ホームサーバの戦い・第22章) 」「ソニー・ストリンガー会長の会見を読み解く(ホームサーバの戦い・第23章)
 2月27日に新経営体制が発表された。「ストリンガー会長は久夛良木氏の後継者?(ホームサーバの戦い・第24章)
 「iPhoneのゲーム機化とPSPのケータイ化(ホームサーバの戦い・第25章) 」このエントリーでは、iPhonePSPはやがて似てくるという点を説いた。
 「麻倉氏の「ソニーらしさ」理論に異議あり!(ホームサーバの戦い・第26章) 」AV評論家の麻倉怜士氏の「ストリンガー氏のソニー再建計画に異議あり!」に反論したものである。

ゲーム機の発展とホームサーバ機能

 「FF7がメディアを動かす(ホームサーバの戦い・第27章)」このエントリーでは、1997年FF7というゲームコンテンツがメディアの行く末を決め、2009年4月10日のFF7ダウンロードコンテンツ発売は、いよいよPS3とPSPのセカンドセッションの時代が始まったことを意味する。
 「モーション・コントローラ(カメラ)戦争(ホームサーバの戦い・第28章)」では、2009年6月3日に開かれたE3(Electronic Entertainment Expo)のマイクロソフト、ソニー、任天堂の三社がそれぞれモーション・コントローラに関する発表がなされた。
 「PSP goの隠された使命(ホームサーバの戦い・第29章) 」同じE3で注目されたのが、このPSP go。ゲーム機として考えれば単なるバリエーションのひとつだが、ホームサーバの本質を考えれば避けて通れない道である。
ネットワークで配信(再配信)可能なコンテンツには、ゲームの他にも、映画・音楽、許諾を受けた放送番組、あるいは個人が撮影した膨大な数の写真や動画などがあるだろう。今後、家庭において「プレイステーション 3」自体がホーム・サーバーとなり、他の携帯機器やネットワーク接続されたデジタル家電機器、さらにはパソコンにも、ゲームや映像や音楽を配信することも可能になる。(家電屋VSコンピュータ屋、ホームサーバーの戦いで引用した久多良木健氏からの手紙、「PS3が創るリアルタイム・コンピューティングの未来」)
 とりあえず30章に分けて、「ホームサーバの戦い」をまとめてみたが、現実にネット配信やコンテンツ配信はすでに始まっている。ケーブルテレビやアクトビラGYAOや各プロバイダによるものなど様々である。しかし、それはローカルであって、世界規模で考えると、同じセットトップボックスを使ってのホームサーバというものは成り立ってはいない。したがって、これからそれを勝ち取るのは、Xboxマイクロソフトであるか、PS3のソニーであるか、iPhoneApple TVのアップルであるか、グーグルのアンドロイド携帯であるか、Wiiの任天堂であるか、これからも注目していこうと思う。


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