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同一労働同一賃金の道(福祉と政治・2)

 「福祉と政治、何が問題なのか、改めて考える。」の第二弾。今回は、ダイヤモンドオンラインの記事を参考にした。

失業率14%時代が来る

 日本の失業率は5.4%である。欧米の失業率が10%近いのに比べると、日本はこの程度で済んでいるのか、頑張っているなと思うかもしれない。だが、失業率の定義を詳しく見ると疑問が生まれる。
失業を測る尺度である失業率は、労働力人口に対する失業者数の割合で定義される。失業者とは「働く意思と能力があるのに仕事に就けない状態にある人」を指すので、仕事探しをあきらめた人は失業者には含まれない。
なお、仕事探しをあきらめた人は就業意欲喪失者 (discouraged worker) と呼ぶ。ちなみに、労働力調査では、働く意志があるとは、ハローワークに通って職探しをするなど仕事を探す努力や事業開始の準備をしていること、とされている。(失業−Wikipedia
 ところが、この失業率には、企業内失業者は含まれない。会社には来ているが、実質仕事はなく、給料だけ払われている人たちのことである。早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の野口悠紀雄氏によれば、実質失業率は14%であるという。企業内に余剰人員が600万人もいるという。
企業内の潜在的な失業者は経済全体で528〜607万人に達する。製造業では328〜369万人である。白書はこれを「雇用保蔵」と呼んでいるが、実態的には、企業の過剰雇用者、すなわち企業内の失業者だと考えることができる。
 白書は、「雇用保蔵」を、「最適な雇用者数と実際の常用雇用者数との差」と定義している。「最適な雇用者数」とは、「適正な労働生産性を平均的な労働時間で達成できる労働者数」である。2005年から2007年頃まで、雇用保蔵はほぼゼロであったが、リーマンショック以降の急速な生産活動の縮小に伴って急増した。

 現在、雇用調整助成金の需給申請者数は、240万人程度となっている。これは、企業が実際に過剰と認定し、休職扱いにしている労働者数だ。白書の推計は、その2.5倍程度の労働者が企業内で過剰になっていることを示しているのである。

 全産業の雇用保蔵607万人は、労働力人口(6689万人)の9%程度に相当する。したがって、これらの労働者が実際に失業すれば、日本の失業率は14%程度という未曾有の水準になるわけだ。(ダイヤモンドオンライン日本の潜在的失業率は14%!その解決にまったく役立たない各党の雇用政策

 野口氏は、その次の「9〜10月に予測される失業者の激増 その対策こそ次期政権の最重要課題だ」でこう書いている。
 ところで、今年の秋には、こうした潜在失業が顕在化し始める可能性が高い。その理由は、つぎのとおりだ。
 雇用調整助成金の給付期間は、最大300日となっている。ところが、雇用調整助成金の支給が急増したのは、今年の初め頃であるため、今年の9月から10月頃には、支給期限が到来すると考えられるのである

 したがって、総選挙において民主党が政権をとるにしても、自民党が引き続き担当するにしても、新政権発足直後にこの問題に直面することになる。雇用問題は、新政権が真っ先に取り組まなければならない緊急の最重要問題だ。(9〜10月に予測される失業者の激増 その対策こそ次期政権の最重要課題だ
 このままでは、「雇用調整助成金」なる財政政策は、「日本の失業率がいかに低いか」を海外に誇示するための失業率のごまかしに過ぎなかったことになる。例えば、300日あれば、人の足らない部門に再教育させるとか、同業種の他社で活用できないかとか、いくらでも能力を有効活用する方法はあるはずである。ところが、哀しいかな、日本では同業他社に知識の流出を恐れるのか、あまり努力されてこなかった。

日本は世界で一番冷たい社会

 同じダイヤモンドオンラインで「雇用環境も福祉も欧米以下! 日本は「世界で一番冷たい」格差社会」という記事があった。著者は、ハーバード大学政治学部マルガリータ・エステベス・アベ准教授。
 正規・非正規社員の賃金格差の問題にしても、同じ仕事をしながら賃金に大きな差がでるということはアメリカではあり得ない。もしあれば明らかに組織的な差別であり、企業は訴訟を起こされて何十億円もの莫大な賠償金を強いられるだろう
 日本企業ではインサイダー(内輪の人間、つまり正規社員)の雇用保護が強いので、アウトサイダーの非正規社員が不利益を被ることになる。皮肉なことだが、日本が本当に市場原理を導入していればこのようなことは起こらないはずだ
 本来は労働組合が何とかすべき問題だが、企業内組合なのでアウトサイダーのために本気で闘おうとはしない。
 インサイダーの雇用保護はヨーロッパでも起こっており、日本特有の問題ではない。ドイツやフランスなどで若者の失業率が高くなっているのはそのためだ。しかし、ヨーロッパでは労働組合(産業組合)が強いので、非正規社員に同じ仕事をさせて賃金を低くするという雇用形態は許さないだろう。
 日本は非正規社員を守るシステムが事実上ほとんどないが、これは政治的に解決できる問題だ。政府がそれをしないのは、企業の反対が強いからだろう。(雇用環境も福祉も欧米以下! 日本は「世界で一番冷たい」格差社会
 この問題は、前項「福祉と政治、何が問題なのか、改めて考える。」で書いたことだ。欧米が「同一労働同一賃金」を重視するのは、「産業組合」のような横のつながりが強いからだ。一方、日本はその企業だけの「仕切られた生活保障」が優先され、他の企業との違いは考慮されなかった。連合とて、個別の企業に口出しすることはタブーである。だが、秋にも起こるといわれる14%の失業は、いわゆる派遣切りとは意味合いが違う。なぜなら、彼らは、その企業とは何の関連もない派遣社員ではなく、正社員であるからだ。マルガリータ・エステベス・アベ准教授はこう締めている。
しかし、日本企業もいつまでインサイダー保護を続けられるかというと、限界がある。製造業にしても正規社員が増えるわけではないし、これまでのやり方では社会保障などのコストが高くなりすぎる。正規社員が減れば厚生年金加入者も減り、受給者とのつじつまが合わなくなる。高度成長の時代ではないので、何が持続可能なのかをよく考える必要がある。最終的には日本人がどういう社会で生きたいのかということだ。(雇用環境も福祉も欧米以下! 日本は「世界で一番冷たい」格差社会)
 正社員というパイが果てしなく小さくなれば、結果として、二重賃金の意味がなくなるだろう。
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